女の子から脱却を決意する俺
「ほう、それは自慢か、裏切り者よ。そして何故そうなったか詳しく聞かせてもらおうか」
「いや、本気で困ってる。あと詳しくは言えない」
「あーもう! くっついちまえよ、うざいな」
「ひどいな、真剣に悩んでいるのに」
今日も裏切り者よばわりの俺は学校でも、うんうんとうなり続ける。今日は彼女の家に行かなくていい。行かなくてすむのに、頭の中はいっぱいいっぱいだ。
「付き合ってみて、駄目だったら別れるでいいだろ」
「そんな事出来るわけないだろ! 真剣に考えないと、その子に悪い――」
「あー、50人もフラれ続けたから、そりゃ考えるわなぁ。フラれ慣れてるせいで、フッた時の相手の気持ち考えてしまうんだろう? で、どうでもいいけど、ブルータスはどうしたいのよ?」
「それは……」
正直、自分よりゲームが上手い女子なんて、自分が凹みそうな気がしてならない。隣ですごいプレイしてるのを永遠見せられる事になる訳だろ……。教えられる? 手取り足取り? いや、逆がいい。俺が教えたり、手取り足取りしてあげたいんだ。
だけど、今のままじゃ、どう頑張っても、俺の負ける未来しか見えない。昨日も一昨日もやられっぱなしだし。
「よし、俺は決めたぞ」
「ほう、で、どうするつもりだ?」
「男になる!」
「…………、通報しておく」
「おい!」
彼女の前で、俺は今までフラれた原因、女の子みたいな俺を全力で演じていたんだ。それじゃあ、駄目な気がする。男を取り戻す! そして、俺から――。
「まあ、冗談だが、頑張れよ。骨は拾ってやる」
「何故、俺がフラれてる!?」
「あ、すまん。間違ったわ」
カラカラと笑いながらユウキは、背中を思いっきりバンッと叩いてきた。かなり、痛い。けど、頑張ろうと思えた。
まさか、この時はこれから一週間も音沙汰がなくなるなんて、俺は思っていなかった――。
◇
あれから、一週間がたった。ぱたりと机に倒れている俺にユウキがパックジュースを飲みながら話しかけてくる。
「どうした、友よ」
「いや、決めたのに妹からも本人からもスルーされててな……」
どうやら、俺は裏切り者からユウキの友に戻ったようだ。まだ、何も出来てないし言えてないのに、すでにユウキの中ではフラれたことになっているのか。
あの日から、一週間。妹はあの話題に触れない。マキちゃんも会えていない。いや、今までそれが普通だったんだから、気にする方がおかしいのだが――。
一週間、Vの世界は、通常のソロ配信をちょこちょこしていた。あとはナミとマキちゃん、ユイさん、三人のゲーム部配信を見たり……。俺の話題には触れてもらえてないけれど……。
「それはもう、諦めろってことだろ」
ぐさりと言葉のナイフでとどめを刺しにくる、我が友。
そうかもしれないが、そんな急に興味なくされるものなのか。俺の行動力が駄目だったのか? いや、ナミに話を聞いてからマキちゃんには会っていない。
いったい、何をした、俺!? むしろ、何もしてないことか?
そんな堂々巡りをしながら、勉強に集中出来るわけなく。現在あまりいい成績ではないけれど、悪い成績でもない俺の成績が、ヤバい感じに下がってしまう。
「俺、会いに行く!」
そうだ、俺から行くしかない。待ってるだけじゃ駄目だ。
「おう、当たってくだけてこい、粉末まで」
ユウキに応援のようなものをもらって、今日マキちゃんの家に行くことを決めた。




