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異世界革命  作者: パラダイス タイム
第4章 降り掛かる災厄
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83 館崩壊と帝国の依頼

 僕は慌てて支度を整える。


 ここに預けてた(のみ)等の道具を鞄に詰め込む。


「おい、ゼノついでだ。お使い頼む、大銀貨5枚渡すから酒4本上等なの買ってこい。」


 えぇと文句を口にしながらもゼノは足早に工房を後にしたためそれを追っかけるように工房をでる。


「ではガラズさんまた来ます。伝言ありがとうございます。」


 付け加えるようにそう挨拶を済ませて急ぎ足で城へと向かった。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 謁見の間の前にはシトリが1人で佇み俺の到着を待っていたようである。


「お待ちしておりました。ルイス様。こちらへ。」


 相変わらず感情の見えない声色である。


 案内された先は前回ルイスが体感した水のドームを利用した、千里眼の部屋だった。


 部屋に入るなりありとあらゆる全ての毛が逆立つ。


 どうやら皇帝は趣味もとい千里眼タイムを楽しんでいたようである。


「シトリさん、用件というのは……。」


 酔いを気合いで抑え込み話を切り出す。


「これをみるのじゃ。」


 返答は皇帝陛下から帰ってきた。


「ここは……。え、なんで!? 一体何があったんですか?」


 映し出された映像は以前ミカが連れ去られた館である。


 だがそこには館の面影はなく瓦礫となっていた。


「前日にどうやら崩れたみたいでな。地下から崩れるように崩壊したんじゃ。ほれ。これみてみて。」


 口調の変化は一旦無視するとして映像を注視すると確かに陥没するかの如く真ん中が先に崩壊、それにつられて連鎖的に崩れ去っていく館の顛末が見てとれた。


「報告では地下で女性達を救出したと聞いております。


そしてあそこの地下は賢者に(ゆかり)ある場所です。


結界がある以上崩れる恐れは無いはずなので現場検証も兼ねてお呼びいたしました。」


 ひとまず状況は把握できた。


 これで直接見せたほうが早いと判断、そしてこれを必要以上に知られないためシルヴァ家が呼ばれて無いことも察することができた。


(へー、やっぱ千里眼の秘密は皇帝というかこの国にとってかなりでかいんだろうな。


まぁ3日という制約あるからそれが広まれば取り返しの付かない事件が増える恐れもあるしな。)


 俺は結界維持と思しき鉄棒を負傷者の運搬に使用し数本何度も外に出たこと、そしてそれらは元あった位置に直されたこと、3キロほど離れたところに部屋があったこと、その部屋には沢山の動物の死骸と1人の男性の死体があったことなどなど順を追って事細かく説明した。


「あー、男が精霊魔法使いなら溶けてもおかしくない。


しかしあんましおらんしなぁ。」


 皇帝はぶつぶつと何か呟きだした。


「血はどれくらい流れていましたか。」


 シトリが1人の世界に没入している皇帝に代わって質問してきた。


「相当量流れてましたね。というかおそらく死因は無数の刺し傷による出血多量です。」


 シトリはそれを聞いて納得したのか1つの依頼を出してきた。


「あなたに秘密裏に賢者の遺物回収の依頼を出します。


是非お受け下さい。」


 俺自身あそこに置かれていた物には興味があるため応じる。


「それはあそこに置かれていた金属や瓶の中身貰えるって事でいいんですよね?」


 シトリは少し間をおきこう返す。


「本は原本を必ず帝国へ提出を願います。物は有限ですのでご自由にお使いください。それを報酬といたしましょう。」


 その後、1人の世界へと没入中の皇帝を横目に、シトリと依頼内容を詰めていくのであった。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 その頃、村では異変が起きていた。


 ゴゴゴゴゴ……。


 地震である。


「ひぃぃ。また地震ですか。」


 ツミキが地震に怯え震える。


「大丈夫だ。モルタルのおかげでこの村には頑丈な建物がいくつもある。


モルタル製の塀もあるしな。」


 ウッディはツミキの恐怖を和らげようとそう返した。


「そ、そうですよね。大丈夫、大丈夫……。」


 言葉とは裏腹に彼女の震えは止まらない。


 スッ、ウッディはそっと背を撫でた。


 すると彼女の震えもスッと消える。


 パリーン


 ツミキの震えの次はリオンの嘆きが待っているのだった。


 村に起きる異変は今後も続く。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 俺は再度ガラズ工房へと戻っていた。


「……へぇ、あの誘拐事件現場の調査依頼かい。」


 賢者の遺物云々や千里眼などなど機密情報は諸々伏せて話せる範囲で説明はしておいた。


「そういうわけで僕はしばらくここには顔を出せません。


でこれ。


顕微鏡、僕の分ともう一つ作ってもらっていいですか?」


 金貨数枚を入れた革袋を渡しながら依頼した。


「前払いか? それに金貨とはなんとも気前がいいのぉ。」


 金貨はこの帝国での1人当たりの平均年収でありこの世界の通貨で10万カズ

 

日本円にして1枚だけで100万くらいになる。


 まぁ物価や税がかなり低いことを諸々考えれば10万カズは普通に暮らせるレベルの金額であり1年で15万カズ稼げればそれなりに裕福な暮らしができるはずである。


 惜しみなく指で掴み上げた分だけ革袋に詰めておいた。


 おそらく4、5枚程入っているはずである。


「気前も何も2つですしガラズさん立場上お忙しいでしょうからね。


何より1個目含めて3つ込み込みでその金額でお願いしたいです。


開拓費ではなく私費から出してますのでそれが限界です。


後納期期限も加えさせていただきます。


1週間以内に作り終えて下さい。」


 そのための金貨数枚である。


「まぁええ、今年はこれで稼ぎがほぼ倍じゃからな。多すぎるといってもええくらいだぞ。


はぁ、だがまぁうちの職人どもを誑かしよってその慰謝料としても受け取ることにしよう。」


 突如出てきた話には何のことかさっぱりである。


「誑かす??」


 思わず聞き返してしまった。


「あぁそうじゃよ。ガラスの製法、性質等々教えてやってたのに4人中3人も行きたいと名乗りあげてな。


俺は関わってはおらんから知らぬと突き返してやったわ。」


 こちらとしてはなんともありがたい話であるが逆にガラズにとっては傍迷惑な話なのだろう。


 同業者、ましてやガラスの製造に片足突っ込もうとした職人連中を朝現れることにより開拓での噂も相まって目移りしたのだという。


 1年で数百キロ分の木々を切り倒す未知の道具を作り、職人に取って夢のような書き捨て放題な紙を大量生産する製法を生み出したりという具合で噂が広まったのだろう。


 職人魂を揺さぶらした本人がしれっと顔を出してその揺らぎを大きくされちゃ黙ってはいられなかった人が3人もいてくれたことに他ならない。


「後で紹介して下さい。これは開拓費から出させていただきますので。」


 ニッコリと笑顔を貼り付け別の革袋から金貨を1枚手渡した。


「お主、やり方がずるいの」


 ガラズの嘆き混じりの愚痴が工房に虚しく響くのであった。



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