63 舟屋からの夕日と魔物
普段別行動のウッディさん達がやってきた。
「ルイスさん船出来上がりました。」
やってきたウッディさんから現場報告を受ける。
「後で見に行きます。船完成と発電機完成のお祝いしましょう。」
そう言葉を返した。
「うぃすルイス!」
「「 おいっす! 」」
探検家3人組もやってきた。
「どうもアルベルトさん調子はいかがですか?」
「いえいえおかげさまでのんびり過ごさせていただいております」
軽く社交辞令のような挨拶を交わした。
「でルイスよ。ここ周辺で最近どうやら魔物が増えているみたいだぞ。ゴブリンやオークの小さい集落は確認したが建物どれを見ても明らか新しいものだった。」
「この村に危害が及ぶことも念頭に置いて準備しておいた方がいいかもしれませんね。」
話を聞いて危機感を高める。
「ひょっとしたら魔獣襲来もあるかもしれんな。」
アルベルトさんが何やら不吉なことを言われた。
「えぇそれの対策は...」
僕は言葉を詰まらせる。
「あぁいやもしかしたらの話だ。聞き流せ。」
かなり不穏で気が気じゃないのだがアルベルトさんにとって魔物が増えすぎる方が被害が増える恐れがあるみたいだった。
「ひとまず後で魔物のいた場所等聞きたいので一段落付き次第お伺いさせていただきますね。」
「おけ。待ってるわ。」
約束つけておいて別れた。
別れたその足で皆の前に出て挨拶を始めた。
「皆さんのご協力もあり船と火力発電所ができました。
これより火力発電機の試運転も兼ねて焼肉パーティーを開こうと思います。
準備の方は女性陣と僕の方でいたしますので皆さましばらくお待ち下さい。」
簡単に済ませて急いで準備の方を手伝う。
肉は猪と鹿が用意されてある。
魚もありタイの仲間やスズキ目と思わしき魚が釣られていた。
「ウォンさん魚ありがとうございます。」
調理場についた際、隣で捌いていたウォンさんにお礼を伝える。
「いえいえ。ステーキでよろしいですよね?」
「えぇ味付けも焼き加減もお任せいたします。」
この国で魚料理というと焼くか揚げるかの2択である。
まぁ焼肉パーティなので焼いてもらうことにした。
手慣れた包丁捌きで魚をおろしていくウォンさんを一目見て安心して任せることにした。
僕は野菜担当で玉ねぎの輪切りやキャベツの千切りを任された。
包丁に関しては相棒の前世の経験がどうやら反映されているらしく生まれて開拓地に来るまでこの方握ったことすらなかったのだが一流とまではいかなくても三流程度の包丁捌きの自信がある。
相棒は大学とやらに進学して以来常に1人暮らしだったらしく包丁は毎日握っていたため上手かったのだろう...
こうして僕はザクザク音を楽しみながら支度をしていった。
焼肉パーティは日が暮れるまで続いていた。
(皆さんお祭り事お好きなんですね...まぁ娯楽関係が乏しいとはいえ何かしら計画しておくのもいいかもしれませんね...)
「ルイスの旦那。完全に日が暮れる前に見に来ていただけませんか?」
ウッディさんに呼ばれたので完成した船を見ることにした。
......
木材庫の裏、造船していた作業場である。
新しく建てられた舟屋は海側には壁が一切なく代わりに海へと続くレールが敷かれていた。
ガチャ。
ドアを開けて中へと入る。
海へと沈む夕日が中型帆船を照らし出す。
長さは10メートルで横幅は5メートル
高さは船底から甲板までで3メートルといったところだろう...
「キャラベル船をそのまま中型のサイズで作らせていただきました。
帆はメインが左右に張る2枚の帆でサブとして船尾に縦帆のミズンセイルを取り付けており向かい風でも運用できるように工夫しております。
そして甲板の階層は2階と甲板下1階の3階層となっており、
主な寝室は甲板下1階となっております。
また錨や帆の上げ下げには動滑車も取り入れておりそれぞれ1人で楽にできるようにしてあります。」
ウッディさんご本人より長々と説明を頂いた。
正直な話頼んだ船は橋建設に使える帆船なのだが思っていたのより高性能かつ巨大な立派な船となったいた。
「申し忘れておりました。実はこの船足場を船より出すことが可能で水面ギリギリでの作業も可能となっております。」
衝撃的であった。現時点でもかなり使い勝手の良い船なのに船の上からも直接作業可能なように水面ギリギリに浮かぶ足場を船に着けることが可能なのだという。
「船上よりこのクレーンで二階の屋根上に乗せてある足場を下ろしフックで船と固定することで足場を作れるわけですら。」
川までは海を渡ることになるだろう。
川は反対岸に河口がある。陸側は近隣の村を船側はこの開拓村を拠点としてモルタル橋を建設予定となる。
「ウッディさん!素晴らしい仕事です!ありがとうございます。帝都への直通道が開通したら紙幣流すのでそれまで給料もう少しお待ち下さい!
それ相応の報酬を提示させていただきますので。」
感謝の意と共に追加報酬に関して触れてしまう。
「ルイスよ...追加で報酬与えようとしているならそれは要らぬ気苦労だ。
俺は自分が作りたいそう思えるやつを好きに作らせてもらっている。
いくら文官の指示だったとはいえ作りたいものを作らせてもらっているんだ。
妥当な給料と同額でしか受け取るつもりはない。」
(黙って用意して無理矢理受け取ってもらうべきでしたね...)
そんな反省をしつつ今後の発展を願って舟屋から海を眺めるのであった。
......
コンコンコン
パーティも終わり女性陣主導によるマッチョ組での片付け作業も終わりが見えた頃僕は戸を叩いた。
「アルベルトさんお話伺いにまいりました。」
そうアルベルト宅である。
「カァァァ」
なぜか我が家に住みついているエンペラークロウも一緒である。
家を出る際何かを察したかのようについてきた。
まぁ邪険になってまで追い払う理由もないので同行を許してやったのだ。
「いらっしゃい。そこに座っておいて今茶を用意すっから。」
「いえいえお構いなく...」
とは言ったもののありがたくいただいた。
その間に机には調査等で作成してある周辺地図を開いておく。
「お待たせ。おぉエンペラーも来たのねw
じゃあまぁ本題なんだけど確認できたのはゴブリンとオークで村からどれも5キロは離れているからすぐに危険は無いと思う。
魔物の発生理由も未だよくわかってないから楽観視はできないんだけど...」
話を聞いて質問した。
「魔物って繁殖では増えないんでしたっけ?」
「それがよくわかっていない。以前何日かかけて魔法使って観察していたものの繁殖の兆しもそれに準ずる出産云々全てが確認できないのに増えていることだけ確認できてしまったんだよね。」
「???え!?」
僕は驚きの声を上げた。
増えたのは確認できたがお腹に子供を抱えたり卵を産んで温めるために籠るものが増えたりなどは一切なかったとのこと。
まぁ魚の中には卵を産んでから生まれるまで放置される種類も多いため一概には言えないのだが相棒が持っている生物学からしても異常といえた。
「でこことここ、後は...」
その後アルベルトさんより詳しい魔物の場所を教えていただき最後に魔獣に関して聞いてみた。
「あ、そういえば魔獣って魔物と何か関係があるのですか?」
「魔獣?うーん魔物との関係性は未だはっきりしてないけど...してはいないんだけど...」
アルベルトさんが濁しだした
「どうかされました?」
「いやね魔獣あったことあるんだけどね...なんというかそこら辺にいる獣に結晶が生えたそんな感じでさ...これまた発生方法?とかもはや謎なんだなw」
笑い飛ばされた。
「いや謎で済ませないでくださいよ...」
「ただ言えることは魔物の被害が多いところは魔獣の目撃証言も多々上がっているってことくらい。」
「なるほどありがとうございます。」
そう言って僕は退室することにした。




