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異世界革命  作者: パラダイス タイム
第3章 発展する村と困惑する国
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50 保存食と忘れられた磁石

スライム確保からかれこれ2ヶ月が経過した。


スライム捕獲の1週間後、ミカの炎症(かぶれ)も治った頃、突如クロード先輩が村にいらしたのだ。


用件は海道と帝都までの道が跨がるであろう全ての文官より許可が取れたとのことでその承諾書の受け渡しと報告にわざわざ来てくれたのだ。


どうやら馬に乗り各地地方の町や帝都の文官詰所へと赴き関係する全ての文官に自前の承諾書を持ち説明、サインして許可をもらってきたのだ。


彼が乗馬できることにも驚いていたのだが赤の他人が治める開拓村のためになぜそこまでしてくれたのか不思議でしょうがなかった。


ついでばかりと何でそこまでしてくれるのかと聞いたところ、今までは蛇行の末自分の村や町まで赴いてもらっていたのが新しい開拓村への直通ができることで帝都からの最短距離の道となり治める村や町への利点が多いとのことだった。


それから開拓のメインは海道と道路整備でありその障害となりうる木伐採のためチェーンソーを2つ新しく作って進めたのである。


今まで伐採という大きな壁があり隣の村同士や町同士をつなげるだけに留まっていた道路整備


それがチェーンソー3本で解消し瞬く間に帝都まで後少しというところまで来たのである。


切った木はまだ道の左右へと捌けられているのだが、将来的に道路の柵や看板、川を跨いで道路も繋げるのでそれの建材等々各地での使用である程度減らせられる。


そして今は帝都までの最後の道のりに向かう上での障害である川を超え作業するために船を作っている。


「船は作ったことないとはいえ中々慣れないな...難しい」


ウッディがそう独り言を溢し唸っている。


そんなウッディを横目に俺はアルベルトに質問を投げかけた。


「そういえば依頼報告を皇帝にしてもらう際はどうされたんですか?」


船のための麻縄を作る手伝いをしてもらっていたアルベルトが作業しながら返答してくれた。


「なに、簡単な丸太船よ手頃な丸太を切り倒し掘り抜くだけよ」


どうやら川くらいなら丸太船でも難なく渡れるようである。


だが今回はちゃんとした船を作る。


というのも橋をかける作業の際にも船は重宝するからである。


活動しやすい船の設計図をエッフェルに頼みウッディ主体で作っている。


当然俺も手伝いはしてるのだが帆用の布が不足するかもという懸念点を聞いており縄編みしながら考えていた。


(さっさと石油見つけてピストンエンジン作って産業革命は起こすつもりだったが日本式の産業革命をまず起こすべきなのかなぁ...


仕組みは知ってても作るには設計図がいるし俺は書けないから頼むしかないけど正確に伝えられる自信もないしなぁ...


何より今船作りで忙しいウッディの手間を増やしたくないというのが正直なところなんだよなぁどうすっかなぁ(ーー;))


といった具合である。


麻紐からロープをひたすら編み上げながら思考はずっと膠着状態であった。


そんな最中、外より風が入ってきた。


「寒っ」


思考停止状態だったこともあり思わず口に出してしまった。



「もう冬だしなぁ。そういやこの村の冬支度は大丈夫か?飯減らされるのは辛いぞ」


口調の件で突っ込まれずホッとすると共に給食にケチつけてこられた。


そもそも飯の保証は開拓メンバーにしかなされていないのだ。


彼ら冒険家3人組は開拓メンバーではないそのため飯の保証もないのだが紙幣も流れず食料時給には時間がかかることもあり結果無償提供という形になった。


まぁ科学の発展がほぼないこの世界では冬支度はしておかないと生死に関わる。


だが開拓計画はそれを見越して立てられてあるのだ。


「大量の穀物と根菜類がありますので大丈夫ですよ。一応保存食作っておきますか。」


というわけで麦を倉庫から取り出し鍋の前に立つ。



穀物というのは加熱して澱粉を分解しないと吸収率が激減するのだ。


澱粉を分解するアルファ化という工程が必要なのだ。


なので鍋で炊くことにした。


水を麦と同じ量用意しあらかじめ鍋の中で浸水しておく。


その間に火打ち石で火をつけ焚き火を円錐状の鍋置きの中に作り用意しておく。


強火になったら鍋を置き火が消えるまで完全に放置である。


アルファ化とかの科学は聞いてるだけで飽き飽きする人も多いがこう聞くとやってることはただの熱加えるだけで作業もほぼ手が空くものばかりだ


その間に乾燥させるために干す用の台を用意する。


今回は会議室の机に竹で編まれたマットを洗いその上で干すことにした。


「へぇ干すのか。硬くならない?」


アルベルトの指摘は最もである。


カチカチの炊いた穀物は乾燥させると元の状態のようにいや炊く前よりも硬くなる。


ご飯茶碗のふちについた米のかけらがとても硬くなってるのは皆経験あると思う。


実はこれこそが保存食なのである。


なぜ物は腐るのか、それは水分があるからに他ならない。腐る原因は細菌などの微生物。当然生き物は水がなければ繁殖できず長期的に保存が可能なのである。



穀物は保存性が高いというのは皆が知ってる事実だろうそれは中に含まれる水分量が少ないからだ。


必ず収穫の際に干されるのも保存性を高めるためである。


そしてカチカチの硬い麦など誰も食べたくないかもしれないがお湯や水で水分を吸わせることで元の柔らかい状態へと戻る


そうこれは戦国時代で多用された人類初のインスタント食品なのだ。


こうして炊いた麦を干すために敷いたらやることはもうないので元の作業へと戻った。


また編み上げながらこの2ヶ月を振り返る


スライム捕獲から戻ってすぐ穴を掘り共同トイレを作りそこにスライムとそれぞれの家の貯まりに貯まった排泄物を打ち込んだ。


1週間でスライムの数が倍に増え匂いも完璧に消えた時は恐ろしく感じたものである。



彼らはその後も着々と数を増やし今ではそれぞれの家庭にスライムが配置してある。


それでも溢れたらその時考えるとして今はこれでいいと割り切る。


日が暮れるまでひたすらロープ編みに勤しむのだった。



次の日、開拓からちょうど8ヶ月目突入である。それと同時に冬の到来でもある。


これより3ヶ月が冬の期間で基本的に帝国全土で人の活動が減る時期でもある。


というより開拓地なんて人が住んでない土地の気象なんて情報不足なのでなにが起こるかわからないというのが正直なところである。



珍しく家に朝から1人来客があった。


「入るぜ。」


アルベルトさんである。


「おはようございます。アルベルトさん。どうかされましたか?」


朝から用事とは珍しいので聞いてみた。


「すまんこれあんたらのだろ?」


そういい彼はリュックから二本の磁石を取り出した。


「あぁそれは...」


雷を落として作ったそれなりに強力な磁石である。


無くしたと思っていたのがまさか彼らからでてくるとは思わなかったしそもそも存在自体を忘れていたのだ。


「猫ババしてすまなかったな。でこれって何に使うものなんだ?」


しれっと盗んでいたことを謝られ使い道を聞かれた。


正直今はなくても困らないのだがせっかく手に入れた以上使わないという選択肢はない。


「それでは冬にありがたいもの作りますか...」


これより革命が再び巻き起こる。




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