39 ギア革命1 回転は木をも削り倒す
次の日、残りは組み立てるだけとなったパーツをツミキさんに任せている間に僕とリオンさんは電池を作成することになった
というわけでここに幅広ガラス瓶と電線付きガラス蓋と硫酸と鉛板が並んでいる
電線は銅線を3本捻って作られてある
なので銅線を解き3枚の鉛板をそれぞれ括り付ける
そしたらそれをガラス瓶に+−両極分の鉛板、計6枚を突っ込んで硫酸を電線にかからないように慎重に注ぎ入れる
蓋をして完成である
後はこれを量産し3つを1つに繋げたやつをさらに量産するのだ
今回15個作り5セットの電池が完成した
これをロビン兄弟に充電を頼んだ後ツミキの元へ向かった
「ツミキさんどうですか?」
「できたわ。疲れた...」
そこには刃がついたチェーンが巻かれた鉄板があった。これをギアで回す。
そうこれはチェーンソーである
沢山電池作ったのは今回作ったこれはそもそも消費電力がふざけているのだ
そもそもチェーンソー自体電気で動かすものではない。
本来通り作るならエンジンがいるのだがそもそも石油がないため燃料なしでは使うことはできないのだ
なので無理やり実用レベルまで性能を上げるためにはどうしても電圧を高めモーターで動かす必要がある
また変圧器は電気の一部を熱に変換されてしまうため冷やす必要がありその送風機にも電気が取られるのだ
送風機のプロペラは小さいのでひとまずナラの木で作ってある
そしてひたすら巻いてもらったコイル達。
モーターは変圧器と同じくらいのコイルが巻かれてある
というのもここでの磁力の高さが回転速度の差となり性能の差が生まれてしまうからだ
仕組みは簡単でU字の電磁石を作りその間に電磁石があるだけなのだ
役半分だけ同時に電気が通電する様に円周の4分の1したような扇型の通電分品を
二つ作り両極につけただけで通電のたびに同じ極同士が向き合うため慣性も相まって回り続けるのだ
その回転が歯車を高速に回転しそれがチェーンを回している
さてボディ部品も組み立て終わりついに完成した!
充電はまだ1個しか終わってなかったのでそれを受け取ってきた
早速動かしてみる
ウィーーーーーーン
凄い騒音だったがその分回転はしっかりしてそうなので問題なさそうである
「さて試し斬りといきますか。」
「できたんですか。見せてください。」
そうこうしてるとマイクがやってきた
「ひとまず現地で操作教えますからそこで見せますね。」
と言うとそうじゃないみたいな顔をされた
いや本体もその時に見せる予定だったのだがどうやら伝わらなかったようである
その後ウッディも加え3人で向かったのは渓流付近である
切っても下まで落ちて行かなさそうな場所で手頃の木を探す。
3本くらいに目をつけまずは自分が使い方を教えながら切ってみる
「最初にスイッチ押します。そうするとチェーンが勢いよく回りますので回転が安定するまで待ちます。」
スイッチはカチカチしてオンオフするレバー式で実は細長い石に穴を開けて木を差し込み作ったレバーを取り付けただけである
スイッチの回路だけ銅線から鉄板になっており普段は離れているけどレバーが立った時だけ押されてくっつき電気が流れる最も単純なスイッチなのである
スイッチはオンとオフの2箇所横が空いており横にスライドすることによりロックをかけられるようになっている
急に止まったり動いたりされては危険極まりないからだ
「そしたらしっかり脇を閉めて弾き飛ばされないように木に出来るだけ垂直になるように刃を当てていきます。」
ががががが...
凄い勢いで刃が進んでいった
切れ味の方は完璧である
「おぉ早い...」
マイクが驚きの声を溢した
半分くらい切ったら反対側から切っていく
1本をたったの1分とちょっとで切り倒して見せた。
「そして使用後はスイッチをオフにしてからこのオイルを挿してください。摩擦防止用です。」
そういいガラス製の小瓶を取り出した。
中には植物の種を絞った油が入っている
簡易的なプレス機はこの世界に元からありそれで絞って料理用の油も調達してるのだ
潤滑油として使うにはお粗末すぎるがないよりマシである
次はマイクに試し斬りをさせた
「おぉ。軽い...スルスルと木にめり込んでいきますね。」
いやそれ15キロくらいあるんだけど...
まだプラスチックがないため軽量化できておらず鉄屑のボディではどうにもこうにも重たくなってしまったのだ
ばさん!
切り倒し終わったマイクはブンブン振り回して感動のご様子である
「使い勝手が良さそうなのは分かった。加工に使わせて貰うぞ。」
そう言ってウッディさんが立ち上がり木をマイクと近くの岩場まで運び出す
「風と水の精霊よ。我と繋がりその力をお貸し下さい。
我が望むのは木の乾燥、我が体力を糧としてそのお力をお貸し下さい」
ウッディが魔法発動のための言葉を紡いだ
すると産毛や髪が逆立ち始めた
精霊との交信が完了した証であり魔法が発動可能の証でもある
「ドライウィンド」
魔法が発動し木を風が包む
10分間風が吹き風が去った時には体の毛も戻っていた
「さてやるか。」
チェーンソーを握りそう呟くとバッサバッサとぶつ切りにしだした
一本全部ぶつ切りにした後、鑿を取り出し一つ一つガリガリ凄い早技で削っていく
たった5分でぶつ切りされた原木が1枚のプロペラへと変貌した
(うわやっぱこの人凄いですなぁ...)
僕は圧倒的な凄技を茫然と眺めていた
たったの1時間半で12枚のプロペラが完成した時には思わず笑ってしまった
作業が終わりマイクに木屑を麻袋へと詰めてもらい、僕は12枚のプロペラを一枚一枚紙で包んでから麻袋へと詰めていく
「これもう一個作れないか?角材の切り出しに使いたいのだが」
ウッディがそう打診してきた
「いいですがこれとは違うやつじゃダメですか?性能は保証しますので」
「待ってるぞ」
(これはまたコイルが必要だな...うぅ銅が...)
どのみち必要でしょと軽はずみに応じたものの必要なものをいざ頭でリストアップしていたら銅不足で悩まされることとなったのは火を見るより明らかだった。
夜、僕は職人達と共に食事をとっていた
「いやチェーンソーでしたかな?あれは凄かったですぞ。」
「そうかえ!?やっぱ凄いかえ!?」
「凄くないと報われんぞ...」
ウッディが感想を言いソソギが自慢げになりガンツが徒労を溢した
「ねぇルイス、次は何を作る予定だい?」
リオンさんが訪ねてきた
「そうですね。まずは電球作りましょうかね。本当は色々作りたいのですがどうしても材料、特に銅が不足してますので一度大規模採掘や採取に赴こうかなと思っております。」
「何かよくわからんがそれができると何が変わるのだ?」
ガンツさんが訪ねてきた
「夜が消えます。」
「「「 え、、、 」」」
どうやらリオンさんは電球までは職人に伝えてなかったようである




