36 コイルの大量生産と職人奮起
編集内容 変圧云々の話削除 変圧云々は別の所で出します。
麦の大量収穫から1週間が経過した
麦の乾燥は後1週間くらいで終わる頃合いだろう。今は長屋にさらに屋根だけを増築し雨風が降り注いでも濡れないようになっている
というのも今は夏真っ盛り。夏と冬に雨が多く秋がとても乾燥するこの帝国では乾燥には厄介な季節である
なので2つの長屋の屋根を連結させる形で屋根だけを増築しその間に麦を乾燥させてるのだ。尚、作付け用の麦は既に畑に撒かれてある。
今年中に後1回は収穫が見込めるであろう。
日課の木こりも再開し毎晩20本を目安に1時間と少し切って運ぶまで行っている
橋の建築でなくなった村の木材置き場が日に日に増えて山になっている
というか今まで外に置きっぱなしだったので現在木材オンリーで建てた村で1番でかい建物が建てられてある。
木工所として主に伐採後の乾燥待ちの原木を保管したり木材へと加工したり木材用の倉庫としての役割もある
ちなみにこの木工所ができたのはつい先日である
それだけではない。ガンツさんの鍛冶小屋も建てられた
小屋裏には巨大な炉があり常に火がつけっぱなしである
維持管理は全てガンツさんが行っている
大変である
そんなガンツさんを助けることにつながるものを今絶賛製作中である
名をモーター。
歯車の機構を電気のみで稼働させることができる優れものである
まぁ今使ってるのはモーターの部品なのだが...
「へぇこれがコイルですかい。でこれは何に使えるんで?」
「これはですね磁石です。電気を流すと磁石になります。中に金属入れればそれを磁石にすることもできるのです。
今回はこれをこのU字の鉄とこの円柱の鉄にそれぞれ巻きます」
それぞれ5、6センチほどしかないパーツである
そして大体コイル500〜1000周して回転速度を確保するのだ
まぁコイル500周...地獄の作業である
「ルイス。今少しいいか?」
ウッディさんがやってきた
おそらく頼んでたやつができたのだろう
「とりあえずコイル用の銅線の作成お願いします。銅足りますか?ないなら取りに行ってもらいますが」
「最低が500周じゃろ...絶対に足りんわい!頼みにいってきてくれんかのぉ」
「えぇ、そのつもりです。後他にもコイルは使いますのでその倍は覚悟してください」
「なんじゃとぉぉぉ」
嘆きが後ろで聞こえたが素知らぬ顔で逃げるように鍛治小屋から抜け出した。
ウッディさんと向かう場所はリオンさんの工房である
ガラスと笹や竹等を駆使して作られたものが4つ並んでいた
その隣には中身の入ったツボが2種類ある
今から作るものの材料である
作るのは簡易的なガスマスクである
というのも
取るのは調査で見つけた泉の液体なのだが危険なのは液体よりもその周辺に充満してる恐れのある一種の気体である
それは低い濃度だとただ臭いだけなのだが窪地や発生源付近など特定の条件や立地次第では即死級の高濃度になっている恐れがあるのだ
即死級、今回のガスは1呼吸で肺のメカニズムを崩壊させ酸素不足により昏睡に陥り死亡したりするのだ
しかし薄い場所でも注意が必要である
この気体、臭いが独特なのだ
所謂腐卵臭というやつである。
しかもこの腐卵臭にはたちの悪いことに嗅覚の麻痺作用のおまけ付き。
臭いの有無で慢心してると知らず知らずのうちに致死量吸ってしまう恐れもあるのだ
危険性は理解していただけたことだろうしガスマスクに戻ろう
今回は気体の性質を利用して無害化させる
その性質とは水に溶けやすく溶けたら弱酸の液体になるのである
無害化するには水に溶かして弱アルカリ性で中和させるだけでいい
今回は最も簡単な灰汁を用意した
灰汁と漢字で分かる通り草木の真っ白な灰を水に浸した液体である
灰なんてのはリオンさんがガラス作る時やガンツさんの炉から山程取れる
あまりすぎて畑にも撒いているがそれでも余っている
これで危険な硫化水素が水と二酸化炭素と硫酸カリウムという塩の3種類に変化する
水と二酸化炭素は問題ないなので残りの塩をキャッチするために無数の穴が空いてる炭をフィルターとして使う
以上である
まとめると必要なのは中和する灰汁と完成品を捕まえる炭の2つである
化学的には問題ないので次は物理的に調べていく
まず空気漏れがないか空気の入り口を塞ぎ吸って確かめる
吐き出し口の機構もついでに正常か否かだけ試して確認しておく
4つのうち1つが空気漏れの恐れがありそうなので安全のため残りの3つで作業を続けることとなった。
炭はある程度砕き灰汁が最大限染み込むようにしてから灰汁につけ置きする
「1時間から2時間ほど待ちますか。少しソソギさんやカザリさんのところ見てきますね。」
そう今ガスマスク本体を作成したツミキさんはここにおらずソソギさんやカザリさんと一緒に別のものを作ってもらっていた。
「後は何か作るものは?」
リオンさんがそう尋ねてきたので
「ガラスの保存容器複数個とガラスの柄杓の作成お願い致します。」
「え、柄杓!?」
リオンさんが想定外の嘆きが聞こえたが素知らぬ顔で立ち去るようにガラス工房から抜け出した
そしてソソギさんの家の前
慌ただしい3人の姿がそこにはあった




