32 何もない異変
俺は前夜、俺の持てる知識全てを引き出してでも調査は念入りに行う覚悟を決めていた
とはいいつつもこの冒険家3人組を見てると気が緩む一方なのだ
「やばい忘れ物したっす!取ってくるっす!」
「カンタ何してるでやすか。そもそもおいら達は持ち運べる荷物でここまで来たじゃないでやすか!何を忘れる物があるでやすか」
「食料だって!ミリンさんが余ってる干し肉持っていっていいって言われてたのを忘れてたっすよ」
(それ相方が言われてたやつやん。てか既に俺が持ってるし...)
行く直前からこの漫才状態なのだ
引き締めたはずの気が風船の口を開けた時のように瞬く間に緩み切るのだった
今から重大任務という雰囲気ではないなか出発となった
まずは森の井戸へ向かいそこを拠点としてマップ作成をしていく
調査は連峰の手前までとのこと
かなりの広範囲である
俺たちは5日をかけてマッピングをしていった。
これは5日目の昼前
場所は標高300メートル地点の渓流である
なぜこの話なのかそれは明らかなる異変が起きていたのだ
渓流に生き物が見当たらないのだ
「決してしゃがまないで下さい。」
俺はそう忠告した
嫌な感じがする
この時期は遡上終わった魚の卵で彩られてるはずなのだ
ここは産卵の終着点である
なのに何もない
何もないことこそ異変でしかない
「ひょっとしてクマが山から降りてきてるのって」
テイがそう溢した
「魚がいなくなったのが十中八九原因ですね。しかしなぜ魚がいなくなったのか」
「川に花びらみたいなの流れてる」
目の良いルナさんがボソッと申告してきた
俺も目を凝らした
たしかに流れてる
湯の華だな
湯の華とは温泉成分そのものが水に溶けれなくなったものである
温泉か...
渓流を中心に調査を進めることで話が一致した
ひとまず井戸へ帰る
日が暮れ巨大タンクの上で会議を行う
危険な猛獣も梯子も無しに登れるわけもなく森の中でも屈指の安全地帯である
寝泊りも問題なかった
「明日は渓流に流れ込む支流調査を行います。日の出前にでましょう。」
「後3日ほどで食料きついぞ。明後日ごろに一度村まで戻ることを進める。」
アルベルトが今の残りの食料を顧みて申告してきた
「わかりました。明日の調査の後戻りましょう。」
その後マッピングの情報を整理しつつどのルートから調査行うかや原因と思われる可能性が高い場所の選定等をおこなった
会議も終わった頃賑やかな声が戻ってきた
「兄貴〜ヘビ4匹捕まえてきたっす!焼いて食べましょう!」
「わかってるでやすか?1人半身でやすよ。カンタはいつも食い過ぎでやすから気をつけるでやすよ!」
タンパク質や野菜等を探しに行ったカンタとハスタである
俺らは食事を済ませて休むこととなった




