29 嵐と冒険家
ピカッ!ごろごろ
雨雲がやってきた
大雨が降り注ぎ
突風が吹き抜け
木々がしなる
嵐の日である
「いやぁまいったまいった急に天気が崩れて海まで間に合わなんだ
忙ねぇとテント建てるのがよりしんどくなっちまう」
「兄貴、この辺じゃダメっすか?やばいっすよ」
「ダメだクマの足跡みたろ。死にてぇのか。わかったら走れ走れ」
「何当たり前のこと聞いて兄貴困らせてんだ。俺ら冒険家が休もうとだの思うな!」
森を急いで走っていたのは3人の冒険家集団である
この世界での冒険家は世界を歩き回り珍しい品を見つけたりはたまた地図を作成したりとこの世界ではかなり需要のある仕事である
彼らはそれらには準じない流離の冒険家といったところだろう
この3人組は目的を持たず誰にも就かずで
行きたい 知りたい 見つけてみたい
の三拍子を胸に世界を歩き回っていたのだ
「兄貴!やっぱり冒険の拠点構えた方が良くないですか?こんな嵐たまったもんじゃないっすよ。」
「そうだな。その話はゆっくり腰を下せてからにしようか雷おっこちたら大変だからさっさと山降りるぞ!」
「「あいさー」」
とその瞬間
ゴロゴロ、ドカーン
言ってるそばから落ちたのだ
慌てて落ちた方に視線をやる
(あれ?落ちたのあの禿山だよな?木々がないはずなのになぜ燃えている?)
「どうしたでやすか兄貴雷落ちた所そんなに気になりますか?」
「いやいい。ひとまず降りよう」
「あい!」
彼らの闘いはそこから15分もかかった
5分でテントを建て雨風を凌げるようになり疲弊したこともあり倒れるように腰を下ろす
「兄貴拠点の件どうしますか?この辺そもそも村なんてないですがまだ周りきってもないじゃないっすか。雨の度にこれじゃあきついっすよ」
「というか兄貴禿山見つめてたのって何か見つけたんでやすか?」
「禿山か?いや雷落ちたのに燃えてたからな」
「雷落ちたら燃えるじゃないですか。何言ってるんです!?」
「はぁ!?なぜわからんのやすか!禿山でやすよ!?木もないのにどうやって燃えるか考えるやすよ!」
「え、あぁほんとっすね」
「ひとまず休むかお前ら」
「「賛成っ!」」
即答であった
(燃えてたのってありゃ角材だよな?誰かいるのか?50年前の大噴火あってからは誰も住み着いてないはずなんだがなぁ...)
今悩み中のこの男
名はアルベルト・ホールディング
生粋の旅好きである
彼らはこの地で温泉を巡り書き残す旅をしていた
温泉なら火山地帯
火山地帯といえばアフリター北部
そういうわけで山登りつつ探してうろうろしたところ嵐に襲われたのである
やすやす言ってるのはハスタ
アルベルトからチビ坊主と呼ばれる
まぁ外見が背も小さくスキンヘッドなのだ
どんまいハスタ
そして生粋のバカことカンタ
チャラっぽさすら感じさせる口から紡がれる言葉の軽いこと軽いこと
アルベルトからバカンタと呼ばれる
どんまいカンタ
彼らはちょうど開拓チームが港を出た翌日に港をでてアフリター中部の村へ行きそこから必死に歩いてきたのだ
2ヶ月かけやっとの思いで到着できて温泉さっさと見つけて入ろうぜとアルベルトが提案してしまったせいで山奥で嵐に巻き込まれたのだ
海辺だと最悪泳げば猛獣から命を狙われることはない
そのためびしょ濡れでも走っていたのだ
「パンが。俺っちの楽しみであるパンが...湿ってるっすー!」
悔しがるカンタ
「何で濡れるところにパンなんて入れてるでやすか。」
「潰したくなかったんすよ。」
堅焼きの保存食パンなのに
と呆れるハスタ
「どのみちこの辺で食料調達は必須だな。明日探しにいくぞ」
「「あいさ!」」
夜
嵐が過ぎ森に静けさが戻った
なのに静かにならないテント
2人がいびきを掻くなかアルベルトはテントからでていった
(禿山はこっちか)
彼が起き上がったのは昼間見たものを確認するためである
というかあそこに何のために何があったのかが気が気じゃなく眠れなかったのだ
決して騒音に挟まれて眠れないというわけではない決して
移動の最中にも彼は思考を巡らせていた
(何のためのやぐらだったのだろうか。あれはやぐらだよな?例の開拓組か?にしてもなんのために??)
1時間ほどでたどり着いた
「雨で消火されて証拠の山だなぁ」
彼は1人ごちりながら物色を始めた
そして崩れたやぐら跡に4本の金属棒が刺さっているのを見つけた
(なんだこれ?金属?グルグルがついてる...)
バチン!
「うぉっ!びっくりしたぁ」
磁石同士がくっついた音に驚き飛び跳ねるアルベルト
(どのみち後で寄らないといけないからちょっと拝借するか)
磁石というみたこともない金属棒に好奇心を押さえられず彼は繋がってしまった二本をそのままお持ち帰りとなった




