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第57話「赤い魔女と野外授業」

第57話「赤い魔女と野外授業」






【マジ区・サハエル大草原、街道近く……の不思議なテント内】



「じゃぁ、とんでもなく悪い知らせだけど……」


「「「「「ゴクリ」」」」」


「既に我々は、スタンピードのど真ん中(・・・・)で囲まれている様だ……」


「「「「「「ええええええええ!!!!」」」」」」


………


……



■ミーシャ視点


「……スタンピードってなんだ?」

「知らないんですか? 魔物が踊り狂う現象ですよ」

「私、おじいちゃんが話してたの聞いたことある……天変地異の前触れだって」


 三人の生徒がとんちんかんな事をのたまっているが、ヒトミちゃんは冷静だ……あと一人も。


「スタンピードも知らないのに、よく学院にいられるわね……」


「「「知っているのか? ドリス!」」」


 私に魔法をぶっ放してきた女生徒が、やれやれと言った感じで答える。 彼女も制服に着替え終えているが妙な感じの内股である。 ( ̄m ̄〃)ぷぷっ!


「スタンピードってのは、昔……軍事拠点を攻撃するために使われていた戦略よ! 使役した魔物を複数突っ込ませるって言うヤツ……だったはず」


 おおむね合ってるが、昔過ぎて情報が(かす)れている感じだねぇ……。


「私の見た文献では、魔物だけじゃない……魔獣を含み、城塞都市をも飲み込んだとも書かれていた。 何分(なにぶん)昔のことだから、にわかには信じられんが……」


 流石はヒトミちゃん、正解に近い。

 それに反して、他の生徒は ”流石にそれは盛り過ぎでは?”って顔してるな……。


「まぁ、規模がとてつもなく小さい(・・・・・・・・・)ので安心してよいよ」


「そうなんですか」

「よかったぁ~」

「びっくりしましたぁぁ……」

「当たり前よ、ここら辺に、魔物がそんなにいるはずないじゃない」


 あ、だめだ……仕方ないとはいえ、甘く見てるな。


「小規模……一体、それはどれくらいなのでしょうか?」


「ん? そうだねぇ……こんくらいかな?」


 思案していたヒトミちゃんの質問に、私は指を2本、追加で1本加えて答える。


「はっ! たかだか2、30匹程度の魔物、このメンツなら物の数ではないわ!(ヒトミパイセン頼みだけど!)」

「それくらいなら、俺達でも行けるよな? よな?」

「そうですよ、魔物討伐訓練ではフォレストドッグの群れを殲滅しましたからね!」

「大半は隊長がひねってたと思うけど?」


 フォレストドッグ? 繁殖力の高い(数だけは多い)わんこだったっけ……。


「えっと、ヒトミちゃん……ちょっと聞きたいんだが?」


「はい、何でしょう?」


「マジレース学院での魔物討伐ってどんなの? 魔獣討伐訓練も聞いておきたいんだが」


ちょいと気になる事を尋ねて見た……シルの事だ、若い子たちに手を抜いたことは教えてないと思うけど、何か気になるよねぇ?


「はい、学年や武器・魔法適性によっても違いますか、基本はフォレストドッグやビッグボアの群れを山に追い込み、チームで駆逐、訓練用ダンジョン踏破等です。 魔獣は……ありません」


「は?」


 なに、そのふれあいパーク? 訓練用? 魔獣はない? そんな温い環境に誰がした?

 

「魔獣はめったに出現せず、捕獲も容易ではない為に訓練用などはとても」


「ええと、『魔女の森』とまではいかないが、そこそこの森の奥に行けば低級魔獣の1匹や20匹いるだろう? そこを突っついたりはしないのかい?」


「ばっかじゃないの! 魔獣が出る領域なんて冒険者ギルドによって立ち入りが制限されてるに決まってるじゃない!」

「俺、魔獣なんか見たことないぞ? とっくに絶滅したんじゃね?」

「僕たちはまだ学生ですし、冒険者ライセンスもないですから」

「第一、囲まれてるって言ってますけど……どこにもいませんよ?」

 

 ヒトミちゃんの返答よりも、3バカトリオ……いや、4バカカルテットか……。

自慢にもならないことをのたまったり、温い事を言っていたり、簡易テントの外を覗いていたりする。


「ミー殿……その……」

 

 ヒトミちゃんは拳を握り、悔しそうな表情だ、4バカとは違って現実を重く受け取った様だね。まぁ、虫の居所が悪かったとはいえ、ぼてくり回して彼女のプライドをへし折ったのは私なんだけどねぇ。


「しかたない、シルの顔を立てて穏便に済まそうと思ったんだが……」


「え?」


炎霆(えんてい)、結界内側からの視界をクリアにしてもらいないかな?」


『畏まりました』


「「「「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」」」」


 あらかじめ、炎霆に張らせていた結界を内側から良く見える様に変更(・・・・・・・・)した瞬間、4バカの悲鳴が響き渡った。


………


……



「な、なんだありゃぁぁぁ!」

「表にあったポイズンバジリスクよりでかい個体……それだけじゃない、なんで……なんで、ほとんどのバジリスク系が群れを成してるんだ?」

「これ、夢よ……悪い夢を見てるんだわ……早く覚めなきゃ」


 3人の生徒達は外の景色に狼狽(うろた)えまくっている。 それとは別に……。


「ちょ、ちょっと! 赤オンナー! 話が違うじゃない! 何が20、30匹程度よ! 辺り一面魔物だらけじゃないのさ!」


「赤オンナー? まぁ、それはともかく、私は2、30匹何て言った覚えはないんだが?」


「う、嘘つくんじゃないわよ! あんた確かに……あ!」


 私はさっきと同じ様に、指を2本、追加で1本加えて、けなし(・・・)ちゃんに見せつける。


「2、300匹だよ? 小さい小さい♪」


「「「「う、嘘つけぇぇぇぇぇ!!!」」」」


 私のフレンドリーなコメントに、4バカの声がきれいにハモった。 

 だが、ヒトミちゃんは何故か片手で顔を押えて震えている……なして?


「どうかしたのかい? 随分顔が……いや、顔色が悪いようだが?」


「い、いえ、少し驚いただけです……問題ありません」


 今にも倒れそうなほどな感じで答えている。 どう見ても問題ありまくりだ。

 過去にかじられて、トラウマとかにでもなっているのかな? まぁいいか。


「”このメンツなら物の数ではない”だっけ? せっかくだから見せてもらおうかな?」


「「「「はいぃ?」」」」


………


……



「さて、ジーナちゃんとヒトミちゃんを頼んだよ、我がでし」


「はい」


 昏睡状態のジーナちゃんに服を着せ、我がでしに背負わせた後に簡易テントを解体し家までのゲートを開く。

 流石にこんな状態じゃぁ、ただの餌だし、完全治療もできなくはないが、また(・・)暴れられると正直めんどい……。 ヒトミちゃんもオマケにつけて我が家に避難させておくとする。


「ミー殿、私もここに……」


「それは絶対に、ノウだね。 ジーナちゃんが目覚めたら我がでしに襲い掛かるかもだし、君がいた方がおとなしく話を聞いてくれそうだ」


「むぐ……分かりました。 彼らを頼みます」


「ああ、教え子の大事な生徒だ、死なない程度には気をつけるよ」


「……お、お前たち! ミー殿のいう事をよく聞くんだぞ! いいな!」


「「「「ひゃ、ひゃい!」」」」


ジーナちゃんの凶暴さを知っているからだろう、ヒトミちゃんは銀の篭手を胸に大人しく従い、取り残された4バカに一括する。


「我がでし、ヒトミちゃんの持ってる銀の篭手は、私の工房に頼むよ、ちょっと調べたい」


「わかりました……師匠、無茶だけ(・・)はしないで下さいよ?」


「わかっているよ、出来る限り無茶はしない様に努力をしたいと思っている!」


「……すみません。 皆さん気をつけてください、でないとひどい目に遭います」


「「「「え?」」」」


 我がでしが4バカに声をかけるが、彼らは理解していない様だ。

 まぁいい、死ななければ何とかなるなる。


 ヒトミちゃんも困惑した顔でこちらを見るが……。

 まぁ、ここで良いトコ見せて恩を売りまくっておこう。 だってさぁ、ヒトミちゃんもジーナちゃんも3女ちゃんを大切にしてそうだし、それを傷物にされたと知ったら……うん、とりあえず落ち着いてからにしよう、そうしよう。


………


……



 ゲートが閉じるのを確認し、4バカに向き直る。

 4人で固まって魔物の群れにビビっている様だ……なさけない。


「やぁ、待たせたね。 そろそろおっぱじめるかい?」


「ひいいい!! か、母ちゃん!」

「僕たちどうなるんですかぁぁぁ!」

「これは夢これは夢……私は今温かいオフトゥンに包まれているの……」

「ちょっと! 何で私たちだけ? ヒトミパイセンとジーナ隊長をどこへやったの!」


「楽勝なんだろう? お得意の”ラヴ☆ファイヤーショット”をぶちかませばいいじゃないか?」


「ぐぎぎぎぎぎ!」


 けなしちゃんが殺意の籠った目で私を睨む。 うんうん、いいね! そうでなくっちゃ。

 他の三人は戦意喪失どころか、現実逃避しているのもいるし。 一体どんな教育しているんだシルのやつは……あとで締め上げてみようかね。


「今から君たちには、野外授業として魔物討伐の実践(・・)をしてもらう」


「「「「な、なんだってー!?」」」」


 霧の立ち込める草原、すぐ目の前には無数の魔物(リザード系てんこ盛り)がうろついている。 結界を解けば一斉に襲い掛かって来るだろう。


「安心したまえ、流石に一度にけしかける程、私は鬼じぁあない」


「「「「ほっ……」」」」


「まずは、タイマンからいってみようか♪」


クルルルルルルル……


「「「「で、でたぁぁぁぁ!!」」」」


 結界の内側から、手ごろな魔物を一匹引きずり込む。

 2メートル級のレッサーバジリスクか……毒も特技もないし余裕だろう。


「じゃぁ、けなしちゃん、いってみよー!」


「誰がけなしだ、私はドリスって名前があるわよ! ……って、なんで私が!?」


キシャァァァァ!


「ひぃぃ! わ、我が声に……いやぁぁぁ!! 応えよ……のわぁぁぁ!」


 うん、無事、タゲられたね……逃げ回りながら詠唱を唱えるドリス。 


「さーて、何秒持つかな? ……もとい、どう動くかな?」


 抱き合いながら泣き叫ぶ生徒たち、無様に駆け回るドリスに注意を払いながら、私の意識は結界の外へ向いている……これが本物(・・)のスタンピードなら、どこかにいる筈。


「炎霆……魔力圧を寒暖(かんだん)つけて放出し続けてくれるかい? 出来るだけ美味しそう(目立つよう)に」


『畏まりました』


 仕込みはこんなもんか……後はかかるのを待つだけだね。 しかし……。


「ちっきしょぉぉぉ! 必殺……にょわぁぁ! ラヴ……うぉっとぉぉぉ!!」


「それにしても大丈夫か? こいつら……」


レッサーバジリスクに喰われそうになりながらも、逃げながら必死に詠唱を唱えるドリスを見ながらため息をつく。


………


……



在宅ワークになれば時間が取れて執筆も捗る。

そう思っていた時が僕にもありました……現実はそうでもなかったです( ;∀;)

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