第2話「魔女と雨」
話によって語り部を変える手法を試してみたり、戻すかもしれませんが今はいろいろと模索中。
『第2話』魔女と雨
【魔女の森の中とある家・魔女の部屋】
ざぁざぁと雨が降る……。
私は雨が嫌いだ、何故かって?
それはとても辛い事を思い出すから……。
沢山の仲間を失ったあの日も雨だった、
得るものより、失うものが遥かに多かった。
仲間だけじゃない、関係ない人も沢山犠牲になった。
『災厄の渦』は封印したものの、脅威はまだ残っていた
『災厄の渦』の残滓である”魔獣”の存在だ。
生き残った魔女達はおよそ100年近く
魔獣をただ狩った、狩り続けた。
魔獣の断末魔にさえ、何も感じなくなっていた。
心が死んでいく、魔獣を狩り尽くしたらどうなるだろう?
魔女は私を含め4人になっていた……。
死ぬことも許されない、心はすでに折れていた。
何も考えず、ただ大地に根を張る樹になりたい……
”ここで終わりたい”そう思った。
だけど
あの日あの時あの場所で、私は彼と出会った。
”終わり”を求める私に、樹々が私を促す様に道を作った。
私はただ、導かれるように足を進めていた。
辿り着いたその場所には魔獣がいた……。
「そう、最後まで戦って死ねって事か……」
ボロボロになった魔法の杖を構える。
魔獣は中級の竜種でこちらに背を向けたままだ、
魔獣は動かない、おかしい?奴等の鼻ならとっくに……。
「うー、あぶー」
「え?今のは?」
私は杖に足をかけ、低空飛行で魔獣の前方に回り込んだ。
「一体、これって?」
魔獣はすでに絶命していた、
一本の樹が心臓の位置に突き刺さっている。
「あー、まぅー」
私は再び聞こえた声の元、魔獣の真正面へと移動する。
樹の枝が重なり何かを護っているようだ……。
慎重に枝をどけるとそこには……
「人間の赤ちゃん?初めて見た」
銀色の髪、宝石の様に清んだ蒼い瞳、ちっちゃな手……。
「まさか樹が、この子を護って戦ったの?」
「あうー、えぅー」
私は樹の中から、赤ん坊を取り出し抱き上げる。
「え?まって、この子を?私が?冗談でしょ?」
”パキン!パキキ!パキン!”
樹が意思を伝え、役目を終えたとばかりに、粉々になっていく。
「ちょ、どぉすればいいのよぉぉぉ!!!!」
私は叫んだ、ただ……
”終わり”を求める暇はなくなったなとそう思った。
………
……
…
ざぁざぁと雨が降る……。
私は雨が嫌いだった、何故かって?
それはとても辛い事を思い出すから……。
でも、最近はそうでもないと思える。
辛い事を思い出す暇がないくらい、忙しくなったから。
辛い事を思い出す暇がないくらい、楽しくなったから。
ほら、やってきたよ?私の愛しい……。
「師匠、ただ今帰りましたー!
直ぐに夕飯の準備に取り掛かりますねーー!!」
今、一番気になるのは昔の事じゃぁない、
今日の夕飯は何かな?って事だった。
「我がでしー!お腹すいたー!」
魔女の子育て奮戦記も書いてみたい気がしますが……どうだろう?