表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/65

第9話「魔女と銀の篭手」その1

街道は分かれ道だったという設定、ミーナの家から見て右は学院に続く森の街道、左は森を迂回し学院の方へ続く草原の中の街道なのです。ミーナは左の方へ抜けて行ったのです。

 第9話「魔女と銀の篭手」その1




「久し振りに力を貸してもらうよ、炎霆えんてい!!」


『畏まりました、我が主ミシェール』


血の様に紅い魔導杖に足をかけ、

眼下に見える街道に沿って高速飛行に入る。


学長室の窓から、身を躍らせてからの高速移動だ。

なんか、正門付近に人だかりが出来ていたが……多分、気づかれてないよね!


魔法専攻なら、空ぐらい普通に……飛べるよね?


『我が主、一つ宜しいですか?』


「なんだい?久しぶりの起動で、不調でもあったかな?」


『いえ、些細な事なのですが……』


「歯切れが悪いなぁ、遠慮なく言い給えよ、長い付き合いだろ?」


『今の流行りなのやもしれませんが、下着は着けたほうが宜しいかと……』


私はこてりと首を傾げ、片手をローブの中に……あれぇ?おかぴいなぁ?


「しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!そうだったぁぁぁぁ!!!」


私の絶叫はドップラー効果を残していった……。


一応、言い訳をさせてもらおうか、私は慌てていたんだ。

そう、凄く慌てていたんだよ!我がでしが用意し忘れたのか、

パンツが無い上に、ご飯が美味しくて、寂しさからしんみりしてる時にだ。

我がでしに、とんでもない事が起きていると知ればパンツぐらい……。


『大丈夫ですか?主』


「まぁ、誰かに見られてるわけじゃないし……。

”白”がいたらやばかったけどね、きっと…むぅ…ちょっと寒気が」


ふと、昔の仲間の事を思い出した。

……もう、10年位会っていないがね。

私に一番懐いていた、食いしん坊な魔女……元気かな?


「ふふ、”スタンピード”を思い出したからかな?

この私が感傷にふけるなんてね……」


『”スタンピード”とは穏やかではないですね?』


「ああ、まだ推測でしかないんだが、

街道のあるような場所に、ポイズンバジリスクが出たんだ」


『確かに、バジリスク系でも特に臆病な個体ですからね、

やはり誰かが、スタンピードを意図的に?』


「意図的にしては何か妙だ……『災厄の渦』が封印された今、

スタンピードを起こして、何のメリットがある?」


『スタンピードは人間の拠点を潰すのを、主としていましたからね』


「此処にはそんな軍事施設もないはず、

むしろスタンピードを知ってる人間なんてどれほど残っているか……」


『自然発生なスタンピード……しかしそれこそ不可思議ですな』


「ああ、何かが、引っかかるんだ、何かを……昔ここで……」


<私は……ですから……何があっても……です、これから……>


な、なんだ?誰の声だ?頭の中で、ノイズの様に誰かの声がする。


<だから……お願いします……必ず……その時が来たら……>


『主!どうしました?』


「はっ?今の声は?、いや大丈夫だ」


『声ですか?声などは特に……』


一瞬、脳裏に銀色の鎧を纏う麗人が映った……。

その側に立ってるのは私?いつの記憶だ……それに私の横には……。


「”黒”?……なんて悲しい顔をしてるんだい……」


私は何故か涙を流していた……。


「何が何だか分からないが、とりあえずこの事件を解決しようか!」


先ずは目の前の事を、ちゃちゃっと片付けて後で考えればいい。

私は涙を拭い、気持ちを切り替える。


『主、森林の街道を抜けます』


我がでしは、草原に近い街道にいるはず……。

クラッシュ3号に仕込んだ水晶で、逆探知をしようとしたが、

”オーバーブースト”を使ったんだろう、機能がダウンして反応が見えない。

クラッシュ3号の魔力炉を限界まで高め、推進力に上乗せする機能だ。

万が一の時は、それを使って逃げる様には言っておいたが……まさか当日に使うとは。


オーバーブーストを使用した後は、魔力炉の冷却のため全ての機能がダウンし、

只の棒でしかなくなるため、仕込んだ水晶も反応を返さない。

まぁ、オーバーブーストを使用したという事は、

現場から無事離脱したという事だろう……。


「この近くであればいいが……」


私は学院から続く森の街道を抜け、見渡す限り大草原になっている場所へ出た。

街道自体は、更に左右に続いている。


『主よ、右方向に複数の人間の反応があります!』


「我がでしの事を、知っているかもしれないな……接触しよう」


杖を縦にして、足場と取っ手を展開し低速飛行モードで街道に沿って移動を始める。


「ん?これは……」


暫く進むと、豪華だが小型の馬車が横倒しになっている。

繋がれた馬は、腹を食い破られたのか既に絶命している……。


「これは、ポイズンバジリスクの仕業か……。

我がでしの側に映ってたやつかな?」


クラッシュ3号の映像では、ポイズンバジリスクの死骸があった、

我がでしが、何とかして倒したものと思われるが……。


「魔女の森の中では、追い払うしかできなかったのに……。

魔女の森の外で小型とはいえ、倒すとは、流石我がでし!」


ただ、上半身裸の我がでしが、学院の女生徒をすっ裸にしていたのか?

しかも”乱暴にする”とまで……一体何が?


「ま、まさか!我がでしは……平静に見えて実は、性欲を持て余していたのでは?」


確かに、彼がちっちゃい頃は、独りで生活している習慣が抜けずに、

すっ裸でうろうろしていたこともあったけどさぁ……。


我がでしが、裸エプロンで朝食を作っている姿を見た時は流石に焦った。

屈託のない笑顔で、美少年が裸エプロン……ちょっとときめいたのは内緒だ!

シルがいたら、鼻血を流しながらお持ち帰りされていただろう……。


流石にこのままでは不味いと、大き目のシャツを着るようにしてはいたのだが。

彼は今でも、私のパンツも洗濯するし、お風呂で背中を流してくれるし、

ちょっと……ちょっとだよ?寝酒がついつい進んで、なんだ……その、

全裸でベッドにダイビングした後も、翌朝には服を着ているし……。

朝目覚めると着替えも奇麗に畳んで用意してるし……。


「あれぇ?ひょっとしなくても私の所為かそうなのか?」


私の貞操が無事という事は……常に自分を抑え込んでいたとしか?

やっばい!始めて外の世界に出て、同年代の女の子に抑えが効かなくなって、

獣欲のまま襲い掛かっても……不思議じゃない?


「いや、我がでしは、まだ11歳だぞ?」


いやまて、そっちの趣向の変態貴族もいるぐらいだ……。

魔女から見たら人間の性癖なんて理解でき……

一寸脳裏に、白の魔女がおいでおいでしている姿がよぎった。


「あーーーー!!もぉぉぉ!!!!!」


色々恥ずかしくなって、絶叫してしまった……。

仕方がない、我がでしに襲われた娘が妊娠してしまったら、

認知とか養育費とか後の生活は何とかしてあげよう。


『主よ……』


色々考え込んでたら現実に戻された。


「あ……あちゃぁ……」


「そこの怪しい奴、止まれ!!」


前方に5人ほど……若い?学院の生徒か?

外套で分からなかったが、みんな揃ってマジレース学院で見た制服を着ており、

男女2人ずつ帯剣してる者、杖を持った者とばらばらだ……。


考え事をしていて、気配を消すのを失念していただけでなく絶叫までしたら、

流石に気がつくよね?うん、滅茶苦茶警戒心を持たれた視線が痛い。


「こんなところに民間人?じゃないな、え?浮いてる?」

「馬も馬車も見当たらない、どうやってここまで?な、浮いてる!?」

「まさか野盗?にしては武装してないし……浮いてる!?」

「ちょっと、あれ”浮遊”?何であんなに安定してるの?馬鹿なの?死ぬの?」


あれ、驚くとこ、そこ?

私は、浮かぶ杖に掴まり立っている……浮かんでいるのがそんなに珍しいのだろうか?

私を取り囲むように4人がそれぞれ自分の武器を構えていた。


「いやぁ、私は怪しいものでは」


因みに私の今の格好はと申しますと……。

地味に赤いローブとマント地味に赤いとんがり帽子とサンダル……。


一応言っておくが、真っ赤なのは私の趣味じゃない!

昔、人間が私に贈与してくれたものがね?

”赤の魔女”だけに、”贈り物は赤が基本”と思われていたんだ。

……全部取ってあるけどさ。

服なんか買わないから自然とこんなものしかないんだよ……信じて?


「嘘つけ!そんな真っ赤っかで、

浮いていて、サンダルの奴が怪しくないわけないだろう!」

「こいつ”悪行魔術師”じゃないのか?赤いし」

「そうよ、そんな赤いローブ目立ちすぎるわ!」

「杖も赤いし髪迄赤い、下着も赤のスケスケに違いない、きっと悪者よ!」


「えー、酷くない?ある意味、スケスケは間違ってはいないけど……」


ぐっ学生のくせに生意気な!

赤の何が悪いんだい!君たちの体にも流れている色だし、

人間の女性なら、毎月嫌って程見てるだろう?

せめてブーツにしておくべきだったか、サンダルは流石に。


「まぁまぁ、落ち着き給え、私は……」


「悪者?敵なんだな?……」


一人だけしゃがみ込んで何かを調べていた生徒が立ち上がり、こちらを振り向く。


「お前が……ミーナを殺したのか?」


振り向いたのは、凛々しい顔立ちでポニーテールの似合う少女だった。

その眼には、やり場のない怒りが渦巻いている様だった。

その手には、ぐにゃぐにゃに曲げられたナイフのようなものが見える。


「リーダー、落ち着いてください!」

「何者かは我々が……」

「駄目、誰かリーダーを止めて!」

「あの状態のリーダーを止めるなんて……神に出来ても私には出来ない!」 


をいをい、なんかきな臭くなってきたぞ?

我がでしの事は聞き出せてないが、ここは逃げるか?


「お前強いな?なら手加減はいらないな、する気もないが!!」


”シュビ!!!”


「え?、それは……をっとぉ!?」


紙一重で彼女の正拳突きを交わす……。

その手には、銀色の篭手が装着されていた。


「あれ?その篭手って……さっきの……」


「避けるなよ、色々聞きだす前に殺しちゃうだろ!」


不味い……かなーり八つ当たり気味で襲い掛かられている……。




眠気がーがーとりあえず週末は、他の連載合わせて色々調整しないと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ