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「ニーナへの虐めの謝罪がまだだ!」
「何故父上はこんな馬鹿な男を僕の婚約者にしたのだろう?謎だ。付き合わされるこちらの身にもなって欲しいな。」
「クリス様、お可哀想に」
ご令嬢方が哀れんだ瞳でこちらを見てくる。
まだこの茶番劇が続くのだろうか?と思っていると透き通るような凛とした声が響き渡った。
「あらあら、これは何の茶番劇かしら?」
今入って来たのであろう開かれた扉の前に声の主が佇んでいた。
手入れの行き届いたウェーブのかかったブロンドの髪にサファイアのように綺麗な瞳を持つ彼女は我が国の第2王女である。
「レオーナ、どうしてこちらに?」
可愛らしい彼女はクリスティーナの親友でもある。クリスティーナと同い年の彼女がここに来るはずが無い為、来た理由を聞いた。
「卒業パーティーで茶番劇が始まったと報告を受けたの。まさかと思って来てみたら本当だったみたいで驚いたわ。」
誰もが想像していなかっただろう。まさか先輩方の卒業パーティーで関係の無い後輩が婚約破棄をしでかすとは。
「先輩方にご迷惑をかけてしまっているんだ。申し訳ないよ。」
と眉を下げて先輩方に謝るとご令嬢方は勿論、ご令息方も「気にするな」と口にする。
「もう!何故ティナが謝るのよ!謝らなきゃいけないのはあそこにいる馬鹿集団でしょ!」
腰に手を当てて怒る姿も可愛くて微笑ましいのだが、それを言葉や態度に移すとレオーナはすぐに拗ねてしまうので心の中で思う事にしている。
「えーと、公爵家のトールス様でしたかしら?貴方、ティナが婚約破棄を了承しているのだからこの場を辞したらどう?それにそこにいる男爵家の...ニーナ様?の仰ってる事が本当に正しいとお思いで?」
いつになく冷たい視線を彼らに浴びせるレオーナに驚きながらも早くこの場から去りたいと思うクリスティーナだった。
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