プロローグ
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暖かい風が吹き花々を揺らす中、小さな男の子と女の子が楽しそうに話をしている。
「ねぇティナ」
「なぁに?レオ」
「僕たちがおとなになったら結婚しよう」
「うん!」
男の子からの申し出に女の子はとても嬉しそうに頬を染めて返事をした。
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「いい加減にしてくれ!」
学園の大広間で顔を真っ赤にして此方を睨む男性と傍らには彼の腕に自分の腕を絡ませて潤んだ瞳で此方を見ている女性がいた。
(確かあれは私の婚約者殿...だったよな?)
自分の婚約者だというのに顔はうろ覚えの彼女は公爵令嬢でありながら男装をしているという変わり者だ。
「聞いているのか!クリスティーナ」
自分の名前を呼ばれてやはりあれは自分の婚約者なのだと確信した。
「はいはい、聞いておりますよ。」
そんなクリスティーナは今、たくさんのご令嬢に囲まれながら返事をしている。その光景さえもクリスティーナの婚約者を怒らせる要因とも知らずに。
「お、女のくせに女を引き寄せて何が楽しいんだ!」
「まぁ楽しいですよ。それで要件は何でしょう?先輩方の卒業パーティーだというのに。もしかして、何かの余興ですか?」
そう今はこの学園の先輩方の卒業パーティーの真っ最中だ。そんな中のそれもど真ん中に佇み我が物顔でいるこの婚約者はクリスティーナと同じ学年なので卒業パーティーに全く関係無い。その隣にいるご令嬢も然りだ。
クリスティーナはご令嬢の先輩方に頼み込まれて無理やり参加させられているのだが...。
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