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異世界ロック  作者: 林 広正
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マーク7、

 やっぱりお前は楽しいな。

 マークはそう言いながら、僕が食べていた和え物に手を伸ばした。

 こっちの世界でも、この貝を食べる奴は少ないんだよ。僕は当然大好きだけれどね。こいつはさ、こうやって切ってしまえば分からないんだけど、その見た目がグロいんだ。まるでサイの睾丸なんだよ。

 マークはそう言いながら、その貝を口に入れて笑っていた。そして次にはキノコを摘んだ。

 これは普通のキノコだな。どこにでもあるあれにそっくりな傘の開かないキノコだよ。匂いはそれほど臭くないのがこの世界のキノコだよ。チョッピリ酸っぱいけれど、それがまた美味いんだよ。こいつを嫌いな奴は、この世界にはいないよ。けれどな、貴重なキノコでな、食べるには特別な許可が必要なんだ。君はまだ取ってないよな?

 マークは真剣な顔を見せた。

 僕はそのキノコを口に運びながら、コクっと頷いた。

 だったら少しマズイことになるかも知れないな。

 そう言いながらマークは、笑った。

 まぁ、それは後ほどのお楽しみってことだな。

 なにがだよ! なんてツッコミは入れなかった。

 和え物に手を出すと、マークがその手を止めた。

 それがなにかは知っているんだろ? 本の中で見ただろ? それでも食べるのか?

 真剣な表情に切り替わったマークは、とても美しかった。その眼差しに、僕はクラクラした。これは誰にも話したくないオフレコだけれど、一瞬恋心を抱いてしまった。

 僕は確かにそれを見たけれど、正直それがなんなのかが分からなかった。生き物にも植物にも見えたし、見方によっては無機質な家電製品にも感じられた。

 それは確かに美味いらしんだが、この世界でも特別な存在なんだ。それの姿を見てもまだ食べたいというなら、食べるといいよ。

 マークにそんなことを言われると、食べる気がしなくなってしまった。その見た目を思い出したからというのもある。確かにそれは、食欲をそそる姿ではない。

 食べ残しは失礼だよ。そう言いながら、僕はそれを口に入れた。目を瞑りながらではあるけれど。

 味は悪くない。と言って、驚くほどの美味しさでもなかった。無理して食べる必要はなかったかも知れないと感じた。

 あいつらが好んで食べるんだよ。だから僕は、食べたくないんだ。あの海を超えると、あいつらが一杯いて、それもウジャウジャ転がっているよ。

 マークはそう言いながら背後に指を向けた。

 するとなぜか、僕には背後に広がる海が見えた。そしてその先の大地に転がるそれを蹴飛ばす二人の姿を目にした。雄太と昭夫。早く会いたなと思った。

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