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異世界ロック  作者: 林 広正
42/44

マーク6、

 テーブルの上に置かれた料理は、食べなくともその味が分かる。僕はそれを、本の中で読み、味わっていた。お腹だって空いてはいないはずだった。

 けれど、その匂いを嗅いでいると、お腹が空いてくる。どうしてもその料理が食べたい。その味は分かっているのに、分かっているからこそ、この口に運びたい。

 僕はマークに顔を向けた。食べてもいいの? 目だけでそう訴えた。

 当然だよと、マークは顎を動かした。

 僕はスプーンを手に持ち、料理を掬った。予想通りの味なのに、涙が溢れた。どうしてだろう? 料理を食べて感動するのは初めてだった。しかも、頭の中では物語が進んでいく。

 僕が食べていたのは、お肉の入ったスープと、野菜ソースのかかった焼き魚。付け合わせには赤を基調にしたサラダと、炒めたキノコと貝類に、なにかの和え物だった。僕にはその全ての食材が、なんなのかが分からないけれど、名前は頭に入ってくるけれど異世界の言葉で全てが初耳だったけれど、その食材を絵に描くことが出来る。というか、物語を読んだ時から、頭にその食材が浮かんでいる。

 スープのお肉は豚と猿とが喧嘩をしたかのような姿の動物で、この世界では市場で普通に姿焼きが売られているし、牧場のような場所ではしゃいでいる姿を頻繁に見ることも出来る。全ての部位を美味しく頂けるけれど、一番はその大きな耳だ。耳には毛が生えていなくてツルツルしている。肉厚で、その中身は脂の塊だ。鶏皮のもっちり感と、チャーシューのジューシー感が混在していて、その食感も楽しめる。しかも脂の染み込んだスープは最高に美味い。頬の内側が脂と完全に同化する。

 海でも川でも池でも見かけるその魚は、海老のようでもカエルのようでもありながら、どう見ても魚でしょと言える姿形をしている。赤身に見えるけれど実際は白身だそうだ。シャケのようだけれど、見た目も味もまるで違う。どちらかというと、アワビとウナギを同時に口に入れているような味と食感に近い。その上にかかる野菜ソースがちょっと酸っぱくて苦味がある。野菜の形は案外普通に感じられた。というか、野菜なんて元々が千差万別の形をしていて、僕には想像も出来ない形も多い。ソースに使用していた野菜は、僕の中ではまともな形だったと思う。その味も含めてね。

 一番の不思議と一番の喜びは同時にやってくる。

 料理の主食は、真っ白に光るお米だった。

 この世界では、白米が主食になっている。しかも、加減の良い甘さがとても美味しく感じられる。目の前のマークもご飯をほうばって食べていた。

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