ジョーイ12、
お前も喉が渇いただろ? ほらよ!
そう言いながらジョーイが真っ赤な缶を投げてよこした。僕はとっさにボニーの背中から手を離し、真っ赤な缶を受け取ろうと手を伸ばし、成功した。
しかし僕は、かなりバランスを崩していた。電車内だったら確実に倒れている。
ボニーがバランスを取りながら移動しているので例え僕が出来もしない逆立ちをしたとしても、サーカス団のようになれるそうだ。
そんなことを知らなかった僕は、普通に自分が凄いと思い、興奮しながらその炭酸飲料を口にした。
腹が減ったらこいつらの脇腹を探ればいい。なんでも出てくるぞ! 俺の好みは、これだな。
ジョーイはそう言いながらクライドの脇腹に手を入れ、ゴソゴソとなにかを取り出そうとしていた。
脇腹には切れ目があった、そこが内ポケットのようになっていると、すぐ後に知った。僕はそこから、棒が付いている丸いキャンディを手に取った。
あんたも好きなの?
袋を取って口に含むと、ボニーの声が聞こえてきた。
好き・・・・ なのかな? 意識したことはないけれど、たまには口にする。
それを発明したのはダイソー人なのよ。スティック付きの飴は、ダイソー人の手にも口にも馴染むのよ。
そうなんだと思いながらも、僕は無関心にそのキャンディを舐めていた。
あなたって、地球人にしてはセクシーよね。なんとなくだけど、マークにも似ている。
マークって、やっぱりそうなんだよね! 僕の興奮は止まらなくなってしまった。これから会いに行くのが、あのマークなんだ。恐竜がよく似合う。早く会って話を聞きたい。僕の興奮は、ボニーにも伝わっていく。
あなたも彼にあこがれているの? やっぱりジョーイと同じなのね! ここに来る地球人はみんな同じなのよ。つまらないけれど、魅力的。
ボニーはそう言いながら、首を捻って僕を見つめる。
けれどあなたは、ちょっと違うのよね。雰囲気はジョーイに似てもなくはないんだけど、ジョーイほど頑固そうには見えないのよね。
俺が頑固なのか? それは違うな。周りが頑固だったんだよ。俺の意見に反発をする。他人の意見を受け入れないんだよ。
誰に向かっての言葉なのかは分からないけれど、ジョーイは頑固なんかじゃないと僕は思っている。やりたいことをやりたいようにするのは、頑固な奴には出来ないからね。
まぁ、あなたのような頑固さは好きよ。
僕も好きだよと、ジョーイに顔を向けた。
俺もお前たちが好きなんだよな。きっとだけど、マークもそう言うだろうな。お前はマークに愛される。そんな顔をしているよ。
おいおい、そんなことを言うと、彼に聞こえてしまうぞ。
クライドがそう言った。いつの間にか、クライドとボニーの歩みが止まっていた。
っていうか、聞こえているぞ!
ハスキーな声が近づいてくる。不思議だった。足音が、すでに音楽になっている。心地が良いリズムに、身体が騒ぐ。
久し振りだな、マーク! 会いたかったぜ!
ジョーイがそう言った。
そうか? 僕はそうでもなかったよ。
黒く染まったタンポポの綿毛のようなその髪型に、僕の興奮が高まる。マーク! 確かに僕も会いたかった! 心の中でそう叫んだ。