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異世界ロック  作者: 林 広正
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ジョーイ5、

 その二つを取り込んだカバンは、その肩掛けの部分を僕に握らせたまま、机の下から飛び出してきた。

 今はまだ必要がないんだけどな・・・・ まぁ、いいか。ジョーイは口籠もりながらそう言った。

 そんなのはどうでもいいんだよ。この二つはきっと役にたつ。それがいつかは分からない。ジョーイはそう言いたいんだろ?

 僕はそう言いながら机の外に身体を出し、その身を起こした。手に持ったカバンも付いてくる。

 不思議と違和感はなかった。カバンの重さは、こんなもんだ。しっかりした革の存在感を肌に感じながら肩にかけた。ほんのりとのしかかる重み。ちょっとだけ鼻に付く独特の香り。いいカバンだなと、気に入った。

 重たくはないようだな。ジョーイがそう言った。直ぐにはその意味に気づけなかった。カバンの重さなんてこんなもの。学生時代にはカバン自体は軽くとも、中はとてつもなく重かった記憶はあるけれど。

 まぁ、気に入られたってわけだな。どうやらお前はモノに好かれるようだな。そいつはきっと、役に立つんだろうな。

 さぁ、準備は出来たから、二人を探しに行こうか?

 僕がそう言うと、そんなに多くの荷物を抱えてると動き辛いだろ? とジョーイの声がする。確かにそうだった。楽器を担いで、カバンも持ってだと、動きが鈍る。知らない世界を歩くには邪魔かも知れない。けれどどうしようもない。楽器を置いていくなんて考えられない。それに、

 カナブンにしまえばいいじゃんか! 僕は声に出してそう言った。

 まぁ、それもありなんだけどな。せっかくのカバンだろ? どうしてそれにしまわないんだ? 

 ジョーイがそう言うと、カバンが動き出した。僕の肩からスルッと落ち、大口を開くように蓋を開け、手に持っていたベースとタンバリンの入ったケースを飲み込んだ。

 その光景を見た僕は、何故だか驚かなかった。さっきと同じだ。カバンが荷物を飲み込んだ。なんて便利なんだろう! 僕は当然のように、飲み込まれた荷物は自由に取り出せると思っていた。

 お前は案外と図太い神経をしているようだな。まぁ、それはいいことだと思う。そのカバンは生きている。その意味が分かるか? 確かにそのカバンはお前の荷物を預かってくれている。けれど不思議に思わないのか? そのカバンは驚くほど軽いだろ?

 そうか・・・・ 押しても動かないほどのヒョウタンと三角錐。とてもそれが入っているとは思ない。けれど、このカバンはこの世界で作られているんだろ? そう考えれば不思議なことは一つもない。僕は知っている。ドラえもんの四次元ポケットのようなものなんだ。

 まぁお前が気に入られているうちは安全だけどな。ジョーイはそう言うと、支度が済んだんなら出かけるぞ! と、先に外へと出て行った。

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