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異世界ロック  作者: 林 広正
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ジョーイ1、

 お前はどうしたい? 突然動き出した口から出てきた言葉は、意外にも甲高いその声に驚いたため、僕の脳みそまでは届かなかった。

 ジョーイが、喋っている。僕にはそれが驚きだった。勝手なイメージだけど、ジョーイは無口だと感じていた。インタヴューの記事は読んだことがあったけれど、僕が見た映像では無口を貫き通していた。他のメンバーに耳打ちをして思いを伝えるその姿が、強烈にカッコよく映っていた。

 カナブンはどこ?

 他にも言いたいことは沢山あったのに、そんな言葉しか出てこなかった。

 カナブンにしては中途半端な色をしているな。今度メタリックブルーにしておくか。

 それはやめて欲しいんだけど。今の色が僕たちらしくていいんだよ。

 そんなことよりお前はどうするつもりなんだ? ずっとこの部屋に居座るのか? 元の世界には当分戻れないわけだしな。

 そうか・・・・ 向こう側のドアを開ければいつでも帰れるってことか。僕が独り言ちた。

 そんな訳ないだろ? お前は他の二人と一緒に来たんだろ? だったら、一緒じゃないと帰れないな。

 けれど向こうにあるドアを開ければきっと、僕たちの世界へと、ライヴハウスの屋上へと繋がっているはずだった。僕は入り口に立ち塞がるジョーイの傍から向こうを覗き込む。

 お前はなにも知らないのか? エンケンさんから聞いてないのか? まぁ、あの人らしいか。説明するより体験する方が早いからな。説明は後でしてやるよ。帰れるもんなら帰ってみな。

 ジョーイはそう言いながら後方に半身を逸らし、中への道を開けてくれた。背中越しにジョーイが僕を見つめているのを感じた。

 せっかく出会えたのに、もうお別れなんて寂しいね。獣の剥製の左手を掴みながら、振り返ってそう言った。

 残念ながら、もう少し一緒にいないといけないんだよ。お前はまだなんにも分かっていないようだからな。

 ジョーイのそんな言葉に、僕は笑いながらこう答えた。

 残念ながら、これでサヨナラだよ。あの二人にも、早く帰って来いと言っておいてね。

 ジョーイが苦笑いを浮かべていたのを感じたけれど、なんとも思わなかった。獣の左手がカッチっと音を立てながら下がったことに喜びと安堵を覚えていた。

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