エイミー12、
エイミーは車で僕を送ってくれた。運転をしたのは僕でもなく、エイミーでもない。 着替えを済ませて外に出ると、そこにはカナブンが迎えに来ていた。後部座席にはエイミーがいて、運転席にはジョーイが座っていた。
本物のジョーイを見るのは初めてだったけれど、車の中にいても、その佇まいですぐにジョーイなんじゃないかって勘付いた。
しかし、二メール程の長身は、カナブンではキツ過ぎる。背中を丸めたジョーイは、かなり異様ではあったけれど、可愛らしくも思えたのが不思議で可笑しかった。
車中でのジョーイは、一切言葉を発しなかった。エイミーが話しかけても、頷くだけ。夜だと言うのにサングラスを外さないことは、突っ込めなかった。ジョーイはやっぱりジョーイなんだとの雰囲気だけは、ずっと醸し出していた。
僕の家は、校舎のような建物の一室にある。獣の毛皮に覆われた、この世界と僕の世界とが繋がっていると思われるあの部屋こそが、僕の家なんだ。エイミーがそう言った。
あなたたちはきっと、この世界を救うのね。楽しみにしているわよ。
そんな言葉を最後に、エイミーは消えて行った。道路脇に立ち、親指を立てた右手を真横に伸ばすとすぐにタクシーのような車がやって来ては、それに乗り込んだ。
ジョーイはカナブンに乗ったままで玄関口に入って行き、戻っては来なかった。スライドパズルのようにぐるぐると回転して、僕の部屋が現れた時に、カナブンが入って行った玄関口は一番上の左端に移動している。ジョーイはきっと困っている。僕は勝手にそう思っていたけれど、いくら待っても部屋は動いてくれなかった。
取り敢えず僕は、その部屋のドアの取っ手に手をかけた。すると、力を入れていないにも関わらず、取っ手が下がり、ドアが開いた。
まさか!
開いたドアの中には、ジョーイが仁王立ちしていた。その顔の全体は見えず、口元しか見えなかったけれど、間違いなくジョーイだと分かった。
けれどどうして? どうやってこの部屋に?
その疑問は口にしなかった。