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異世界ロック  作者: 林 広正
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エイミー10、

 この世界にやって来るのは、なにもロックスターばかりじゃないそうだ。なり損ねの僕らは特に珍しい存在として、ちょっと癖のある人間は大抵がこの世界に紛れ込んだ経験があるという。

 僕らの世界に退屈を感じていると、時折目の前の世界にヒビが生じることがある。そのヒビは、普通の頭では認識すら出来ないという。僕にはそれが感じられなかった。

 そのヒビに気がついた者の中でも、そこをこじ開けることが出来た者だけが、この世界に辿り着ける。例外は当然いる。僕たちがそうだし、あのエンケンもそうだという。

 エイミーにはそれが感じられたそうだ。

 電気関係の発明も、この世界に来たことをきっかけにしている。機械もそうだし、絵画や陶芸も、政治だって同じこと。ただ、最近ではそういうことも珍しく、特に政治に限っていうと、革命を成功に導いた帽子の彼が最後らしい。

 エイミーはこの世界に来る前からその素質は評価されていた。けれどそれは、こじんまりとしたもので、その活動は僕たちと似たり寄ったりだった。もっとも、その人気もレベルも段違いではあったけれどね。

 私もこの世界で生まれたかったのよね。もしもそうだとしたら、きっとまだ生きていたはずだもの。向こうの世界は、私にはちょっと息苦しかったみたい。

 ふと感じた甘くて芳ばしい香りに、頭の中のメロディーが加速していく。なんだろう? 初めての感覚だった。僕って天才なんじゃないかと感じた。

 この煙はね、空気みたいなものよ。

 隣に顔を向けると、エイミーが口から煙を吐き出していた。緑色の煙。僕の顔を覆い、鼻から体内に入り込む。

 エイミーは左手に葉巻のような物を指に挟んでいた。その先端が赤く燃えている。

 これってね、この世界だと水みたいな物なのよ。お酒のようでもあるし、空気だっていう言い方も出来るわね。特に身体に悪影響もないし、あなたが感じたような高揚感も、単なる思い込みなのよね。

 エイミーがなにを言いたいのか、僕には分からなかった。ただ、意味の分からない高揚感から自然と溢れる笑みを浮かべていたようだ。

 これってね、向こうの世界では覚醒剤って呼ばれている物なのよ。

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