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異世界ロック  作者: 林 広正
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エイミー7、

 僕たちの世界では、常に音楽が流れている。街を歩いていても、駅のホームでも、どこからともなく微かに聞こえてくる音楽がある。ショッピングモールではそれぞれの店から別々の音楽が聞こえてくる。

 それはとても自然なことで、風や虫の音色を感じるのと同じように聞こえてくる音だった。車や工場などからの騒音だって自然な音楽としてこの耳は捉えていた。僕たちにとっては、それが自然だった。

 エイミーの言葉を聞くまでは、そうだった。けれど、生まれて初めての音楽のない空間は、初めはとても耳に痛かったけれど、次第にそれが本来の自然な環境なのかも知れないと感じるようになった。

 人間だって、自然の一部なのよ。エイミーはそう言う。この騒音も、鳥の囀りみたいなものよ。

 だったら音楽だって、自然なんじゃないかって、僕は感じた。僕たちの世界は音楽に溢れていたけれど、それを止めることは可能だった。公園では静かな音楽がそれと知らずに流れていることもあるけれど、住宅街では知らずに漏れてくる音楽が溢れているけれど、人気の少ない夜道や個人の部屋では、音楽を消すことが出来るし、実際にもそんな環境は多く存在している。

 音楽って、物凄く自然なものなんだけど、物凄く不自然でもあるのよね。なんていうか、自然の模倣なんじゃないかな? 情景や感情を表現しているんだから、そう考えると当然なんだけどね。いざこうやって音楽を無くした空間にいると、なんだかとても落ち着くのよ。

 少しずつだけど、僕は音楽がないことを受け入れ、周りの騒音が鳥の囀りの如く心地よく感じ始めていた。

 私たちはね、どんなに偉そうにしていても、所詮はこの世界の一部ってことよ。ここだって、異世界ではあるけれど、人間のための異世界ってわけじゃないのよね。

 エイミーの微笑みの理由は分からなかったけれど、僕は頷き、そうだよね、なんて言ったんだ。

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