第1話〜死後の幼女
今回から並列で新作を書いていきます!
ペース的には早めで1話あたりの文字数は少なめでいきます!
肩まで伸びた金髪をなびかせメイクで強調されたつり上がったように見える目を光らせ両手で握られた金属バットを振り抜く。
耳をつんざくような轟音とともに弾き飛ばされるのは白球…ではなく
白目を剥いた男だった。
「これに懲りたらもう二度とうちの女子に絡むんじゃねぇぞ?」
そう言い放つと、くるりと踵を返し再び髪とセーラー服をなびかせる。
あまりの光景にあっけにとられていた、同じセーラー服の女子が少しの間をおいて我に返ったのか、私のあとをついて行くようにその場を後にした。
「アリアさん、流石にやばくないっすか?」
「そうっすよ、あそこの男子校かなりヤバイって噂が」
ヤバイ以外の情報が入ってこないが、これがいつもの会話なのでスルーしつつ、ポケットから取り出したピンクのハンカチでバットについた汚れを拭き取る。
「それなら…ヤバくなる前にその学校締めに行くか?」
立ち止まり、振り返る。
そしてできるだけ冷たい目つきでそう告げると、蛇に睨まれたカエルのようについてきた女子2人は今にも漏らしそうなほど震え、足を震わせた。
「なんて、冗談だよ。私からはそんなことしないからさ」
なんて張り詰めた糸を緩ませてやると、2人とも引きつったような愛想笑いだけを浮かべた。
「そ、そうだ。アリアさんは彼氏とか作らないんすか?」
その場の空気を変えようと、1人の女子が思いついたことをぽろっと口から出してしまった。その瞬間私自身が発しているのにも関わらず空気が凍ったことを感じた。
「私に見合う男がいればな、できれば死ぬ前に恋というものをしてみたいものだよ」
なんて冗談と本気を半々に混ぜた言葉を発しながら凍りついた表情をしている2人に少しだけ微笑んで見せる。
しかし、それでも2人の表情は変わらず何ごとかと思い振り向くとそこにはよくわからない巨大な口が迫っており、私はそれでもせめて2人だけは、という思いで力任せに2人の肩を押し飛ばした。
その直後、甲高い金属音とともに私の体に鋭い牙が数百本と突き刺さりわずかな抵抗さえも許されずに、死んでいった。
ーーーーーーーーーー
目を覚ますと変な山小屋みたいなところで寝かされていた。
死んだことはないが間違いなく死んだことが分かっていた私はこれが死に際に見た夢なのでないかと思った。
「私の夢にしては、一度も見たことない場所なきがするな…」
そう呟いて立ち上がる、夢なのだから当然といえば当然だがあれだけあった無数の傷は塞がれたとかではなく初めから何もなかったようになっていた。
カランっ
一歩歩き出すと足になれた感触のものが当たった。
「あー…流石にこれは」
と自分の夢ながらも呆気に取られてしまったのだが、そこにはずっと使い込んで幾千ものヤンキーの血を吸った金属バットが転がっていた。
足を使って空中に上げ、習慣化されたような動作で手で掴みバットを肩に担ぐ。
すると気配に敏感だと思っていた私だが、突然開かれた扉に体全体がビクリとした。
ちょうど扉を背にしていたことで、扉を開けたのが誰かわからなかったが、私の夢なのだから知らないやつではないだろう。
そんな思いで振り返ると
そこには誰もいなかった…
いや、正確には視界には映らなかった。
「あ、やっと目が覚めたんですね!よかった…魂の回収には間に合ったみたいで…
」
と声のする足元を見ると、10歳にも満たないような少女…?いや幼女と呼ぶべき女の子がいた。
私のような染めたものではなく天然物の金髪は若さの特権と言わんばかりにフワフワとさせ、少し細めだが不健康そうには一切見えず、身長の低さと丁度いいバランスを取った体型。目は大きく瞳の色は、純粋という言葉を体現するように曇りなきキラキラとしたものだった。
「か…」
「え?」
「かわいいい!!!」
夢じゃなきゃ速逮捕案件だが、これは夢なのだ、絶対夢なのだから抱きついても問題ないよね?っていうかこんな可愛いのに抱きつかない方が罪だよね?
などと後々考えればいいわけにもならないことを自分に対して言い続け、そのあと私が落ち着くまで10分くらいは抱きついたままだった。
読んでくれてありがとうございます!
ブクマと評価あと現在連載中の
神秘を求める男もよろしくお願いします!!