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FaTuS;契約譚  作者: 元気ハツラツマン
一章 契約者誕生
9/91

第九話 全力の抵抗も虚しく…

✣ ✣ ✣


燃え上がる大地。悲鳴が舞う街。死という恐怖の香りが漂う。

闇世界の長。絶望を与えるために生まれ、絶望を残して死ぬ運命を背負う。

デスペランドーマは死ぬまで絶望を人々やモンスターに与え続ける。

黒く、残酷さゆえの姿は今、デルドラの街に居た。

死の恐怖が人々を襲う。

デウスは行動に出ていた。

デウスは真っ直ぐデスペランドーマの元に走っていた。

『デカすぎだろ。』

デウスの武器はデウスにしっかり握りしめられていた。

周りは火の海だ。人の死体や死体の匂いが充満している。

『なんて匂いだ。臭すぎる。』

デウスは鼻を押さえる。

鼻が焼けるようなほど熱くなる。

「くそ、あの野郎。」

デウスの怒りは更に膨れ上がる。

デウスの走る速度は更に上がった。

「デウス!?」

途中で声をかけられ、デウスは足を止める。

「コクド!?」

「お前ここで何やってんだ!」

「奴をぶっ殺すんだよ!」

「やめとけ!あいつは最高神を殺した奴だ!」

最高神。世界最大級にして最強の神。唯一無二の最高神である。

「嘘だろ。」

デウスは驚愕する。あの最高神があんな奴に倒されたとはとても思えない。

しかし、デウスは信じた。今までコクドの言ってきたことは全て真実のみだったからだ。

「だからやめとけ!お前も死ぬぞ!」

「良いんだよ。死んだって!誰かの命を救って死ぬんだったら俺はそれで良い!」

デウスはまた走り出した。

「おい!デウス!」

もはやコクドの声はデウスには届かない。

「あー!くそ!」

コクドはデウスの後を付けるように走った。

デスペランドーマまであと六十メートルほどある。

かなりの巨体に物凄い迫力だ。

デウスとコクドは目で確認した。デスペランドーマに立ち向かう戦士達を。

「あれは!」

「冒険者ギルド!」

デウスが先に発言し、その後にコクドが気づいて発した。

自らの街を守るためならなんでもする冒険者ギルドが行動を起こしている。

「雑魚共が立ち向かおうが同じことよ!」

デスペランドーマは拳を振りかぶった。

地響きがなり、砂埃と共に風圧がデウス達を襲う。

「ど、どうなってる!」

何とか踏ん張って耐えたデウスが前方を確認した。

そこには地獄が広がっていた。

「嘘……だろ……」

一帯の家が消し飛び、更地になっている。

冒険者ギルドの連中は全滅。

ここまで来ればもう勝ち目など希望から消えている。

だが、デウスはちっとも絶望していなかった。

むしろ怒りが倍増している。

「ぶっ殺してやる!」

デウスの周りに気が舞う。

「デウス!?」

コクドがデウスの姿を見て驚いている。

デウスの周りには風が舞い、結界のように蠢いていた。

赤と白の気が風と混ざり合う。

「はあぁぁぁぁ!」

デウスはデスペランドーマの元に走り始めた。

地面を蹴飛ばし、勢い良くデスペランドーマに突撃した。

デウスは武器を振り翳し、デスペランドーマの足を切った。

「なに!?」

デスペランドーマが切られたことに気づき驚きを表に出す。

「我を傷つけるとは。最高神並の者でないと無理なはずだ。貴様を今ここで殺してくれる!」

デスペランドーマの拳はデウスに一直線だ。

「うるせぇんだよ!」

デウスの武器は蒼い邪鬼を放ち、デスペランドーマの拳を斬った。

デスペランドーマの拳からは血が溢れ出し、後ろに引かれた。

「てめぇの墓場はここだ!」

デウスの大剣はデスペランドーマの頭を斬り裂こうとした。しかし、その刃は止められた。

「な!」

デウスの攻撃を防いだのは人間じみた姿の男だった。

「デスペランドーマ様にこれ以上攻撃させん!」

男の武器とデウスの大剣が軋み合い、男に押された。

デウスは男の力に負け、床に叩き落とされた。

「ふっ。これ式で音を上げるとは。」

デウスは立ち上がる。

「はあぁぁぁぁ。」

大きく息を吐いた。

その瞬間、デウスに変化が起きた。

腕が見る見るうちに化け物に変り、脚も変わっていった。

龍尾と翼が生える。

彎曲して見える角が黒く邪気を放つ。

「殺ろす。」

デウスは地面から跳び、敵の元に跳んだ。


✣ ✣ ✣


デウスは男に武器を振るう。

「同じことだ。やめておけ。」

男は武器で防ごうとした。

しかし、敵の武器は砕け、男の体は裂かれた。

「ぐはっ!」

口から血を出す男。

追い討ちをかけるようにデウスが裂かれた部分の中央に大剣を刺しこみ、地面に勢い良く突進した。

砂埃が舞い、視界が悪くなった。

男は口から血を垂らし、体からは出血が激しく見られた。

「次はお前だ。」

デウスはデスペランドーマを睨みつけた。

「ちっ。」

デスペランドーマは舌打ちをし、後ずさった。

デスペランドーマはデウスを蹴飛ばす。

デウスは直で喰らい、飛ばされる。

「お前は大人しくしてろ!」

デスペランドーマは街に炎を撒き、荒らした。

「はっ!」

デウスがデスペランドーマに突撃し、右腕を切り落とした。

「くっ!」

膝を着いたデスペランドーマ。

デウスは刃を向ける。

「お前はここで死ね。」

直後、デウスの腹部に衝撃が走った。

後方に勢い良く飛ばされ、体勢を崩す。

「大丈夫ですか?絶望王。」

「あぁ。奴はお前に任せる。」

「了解致しました。」

新たな敵が出現した。

「次から次へと。」

デウスの剣幕が更に悪くなる。

「取り敢えず貴方を止めます。」

細い刀を右手に握る女性がこちらを見ている。

「なら俺はお前を斬り裂く。」

女性とデウスが激突した。

軋み合う剣は揺れ合う。

「なかなか強いですね。」

デウスの頭を蹴飛ばす女性。

デウスは少し飛ばされたが直ぐに体勢を立て直す。

「オラァ!」

デウスの攻撃は呆気なく止められる。

「力任せでは私には勝てませんよ。」

デウスの大剣は弾かれ、胴ががら空きになる。

そこを見逃さず、女性は刀を突き刺した。

デウスの体からは血が垂れる。

女性が刀を抜き出すと、デウスは落下した。

「そこまででしたね。」

女性が刀を鞘に戻した。

女性はあることに気づき、デウスの方向に振り向いた。

そこには腹から血を垂らしながら立ち上がるデウスの姿があった。

「どうして、人間の弱点である臍を突き刺したはず。なのに何故。」

「はぁ、はぁ、はぁ、」

口で呼吸するデウスは上を見上げる。

デウスの右手の大剣が蠢く。

デウスの持つ大剣には所有者の気持ちとリンクするようになっている。

今の大剣は敵を殺すという気持ちが込められている。

デウスは女性に刃を向ける。

「殺してやるよ。」

その刃を見て女性は恐怖を覚えた。

「恐怖を覚えるとは未熟。なら最大の一撃で決めます。」

デウスと女性の間で爆破が起きた。

それと同時にデウスは跳び、女性はデウスに突進した。


✣ ✣ ✣


「撃滅の壱弌鍪滋ひといちもじ!」

幻滅寳戮斬げんめつほうりゅうざん!」

技が激突し合い、白爆破が起きる。

爆破が止み、煙が舞う。

煙がはけ、姿が見えた。その場に姿を残すのはデウスだ。

「俺の、勝ち、だな。」

デウスは落下した。

腹部からの出血は止まらない。

デウスは十秒ほど休憩し、立ち上がる。

「あとはあいつだけだな。」

デウスはよろけながらも敵の元に向かった。

デスペランドーマは破壊行為をやめない。

「絶望王!お前をここでぶった斬る!」

デウスはデスペランドーマに宣言した。

「まさか、アルマを倒したというのか。」

デスペランドーマは驚きデウスを見やった。

もうそう信じるしかない。デウスはアルマを倒したのだ。

「残るは貴様だけだ。」

「くそ、ここは一旦引く。」

デスペランドーマは飛び立った。

「待て、!」

デウスは飛ぼうとした。直後、デウスの体に電撃が走った。

デウスはそのまま気絶してしまった。


✣ ✣ ✣


デウスは一人水の底にいるような感覚に襲われていた。

「ここは何処だ。」

体は動かない。息すら出来ない。しかし、苦しくない。

「?」

そこでデウスは異変に気づいた。

体がどんどん上がっていく。

水面が近づいていく。

「どうなってるんだ?」

そこで水面から声がするのが分かった。

小さくデウスと呼んでいるような気がする。

直後、デウスの視界は真っ暗になった。

「……ウス……デ…ス……デウス!」

デウスは目を見開く。

「フローレ、それに、イリビード。」

「生きてたんだね。主君。」

デウスは体を起こそうとするが立ち上がれない。体がちょっとした硬直状態になっている。

体は元の姿に戻っている。

「立ち上がれねぇ。」

「安静にしとけ。今は。」

フローレは立ち上がり、周囲を見渡した。

「地獄絵図だな。」

デウスは顔を横に向けた。

フローレの言葉に頷くことしか出来なかった。

デウスはイリビードに頼み、肩を借りた。

街を少し歩いてだいぶ回復した。

「肩を借りなくても歩けるようになってきた。」

デウスは少しふらつく体をどうにか足で保ち、歩く。

二メートルほど歩いてからあるものを見つけた。

死体だ。

残酷だ。物凄く胸が痛む。

デウスは家に戻ろうとした。その時、近くで死んだ者の発表がされていた。

デウスは何気なく耳を預けた。

「サクダ、モクモク……」

色々呼ばれていた。その中に入っていた名前にデウスは驚愕した。

「コクド、ニルノ、デレーナ……」

デウスはその名前を聞いた瞬間何も考えられなくなった。

デウスの時間は止まってしまった。

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