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FaTuS;契約譚  作者: 元気ハツラツマン
一章 契約者誕生
8/91

第八話 災禍

✣ ✣ ✣


デウス達は体を動かすために冒険者ギルドに向かった。後コクド達とも会うため。

いつも通り冒険者ギルドは賑やかである。

うるさいくらいに。

「ここが冒険者ギルドかー。千年でかなり変わったなー。」

アルサーは千年後の冒険者ギルドを見るのは初めてらしく、とても興味を示している、ようにも見えない。

「アルサーは武器要らないのか?」

アルサーの格好に気づきデウスが言った。

「そうだな〜。武器か。フローレ達と別れた後は持ったことないな〜。」

「仮でこれでも使ってろ。」

フローレが何かを作り始める。

手から溢れる大量の業火は形を変化させる。

最終的にデウスの持っている武器ぐらいの片手剣が出来た。

「お前が″終焉叛逆フィルガルン″を作るなんて珍しいな。」

「珍しいなって千年前まで使ってただろ。」

紅く燃えるような輝きを放つ刃爪はぎと逆だった鱗のような模様。いかにも悪役が使いそうな武器だ。

「取り敢えずコクド?って子達を待とうか。」

アルサーはそう言って武器を肩にかけた。

刃のついていない所を肩につける。

「やっと起きたのか。」

急に声が聞こえて驚くデウス。

声のした方向にいたのはコクドだった。

「悪かった。」

「まぁいい。それよりそちらの人は?」

コクドはアルサーのことを見て誰だと問いた。

「俺はアルサー・ペンドラゴン。デウスの先祖って言っておくよ。宜しく。」

左の手をポケットに入れ、右の手は武器を握り締めている。

「デウス。この人アルサー・ペンドラゴンって本当か?」

「酷いな〜。俺は紛れもなく本物だ。」

「なんで生きてるんですか?」

「え?俺って生きちゃダメなのか?」

少し寂しそうに言ったアルサー。

そりゃそうだ。千年前の人が目の前に居るなんて普通なら考えられない。

「まぁいいや。取り敢えずクエストにでも行こうか。」

「そうだな。」

コクド達は別にいいよという反応をした。

デウスがクエストを受注した。

クエスト内容はグレブラナルガの討伐。

強敵と言えば強敵だ。

それに対してアルサーは

「楽勝だな。」

そう言ってクエストに出発した。


✣ ✣ ✣


劔核けんかくの亜獣とも言われるグレブラナルガ。

並大抵の冒険者なら一撃で殺られてしまう。

主な移動場は刔鼠山えぐねすざん。比較的温度が高い山だが、夜になると急な氷点下を誇る。

その温度一番低くてマイナス五十七度。

昼間は大体三十度を上回る程だ。

今は昼前なので比較的暖かい。

「やっぱり標高高いな〜。」

紅く燃えるような輝きを放つ剣を右手に歩くアルサー。

刔鼠山に来るのはこれで百回以上らしい。

「?」

デウスが周りを見渡す。

「デウス?」

「……小型モンスターか?」

デウスは大剣に手を添える。

「シュルアァァァァ。」

人の三倍の巨体を持つメジャーな蛇モンスター。タクマスタだ。

「タクマスタか。」

アルサーは軽く武器を振る。

「身体を温めるために殺るか。」

アルサーはタクマスタに近づく。

「ブルシュゥゥゥ。」

何かを吐き出したタクマスタ。

並大抵の毒だ。人は特に異常を起こさないが服や装備が溶ける。

アルサーは難なく躱し、近づく。

「取り敢えず俺の肩慣らしになってくれ。」

アルサーはそう言って武器を強く握った。

突如、タクマスタの首がはね飛んだ。

「え?」

コクドが驚いた表情でアルサーのことを見た。

「やっぱり腕少し落ちたかな。」

「アルサー。お前何年間武器振るってねぇんだ?」

「フローレ達と別れた後からずっとだ。」

コクドやニルノ、デレーナは何が起こったか分からずにいた。

だが、フローレとイリビードとデウスとデアは分かった。

『マジかよ。あんな速度で武器振るえるやついんのかよ。』

デウスの目にはハッキリと映っていた。

アルサーの剣技が。

あの一瞬でアルサーはタクマスタの首を斬り裂いて跳ね飛ばしたのだ。

身体能力は多分人間界トップクラスだろう。

「凄い。」

デアが感心したような表情で軽く拍手する。

イリビードはいつも通りみたいな顔で見ていた。

「そりゃあ長い間武器を振ってなかったら腕も落ちる。」

大抵の人には見えない速度をフローレやアルサーは腕落ちと言っている。

ここまで来ると怪物並である。

「ま、いいか。まだまだ進むぞ。」

そう言ってアルサーは先頭を切る。

未だにグレブラナルガの姿は見えない。

まだまだのようだ。

「ァァァァァァ」

「なんの雄叫びだ?」

コクドが警戒する。

「お?そろそろかな?」

アルサーは警戒心零で突き進む。

アルサーの後ろを追うデウス達。

草木を掻き分けて突き進み、着いた場所は雪が少し積もった平地だ。

「いたぞ。あいつがグレブラナルガだ。」

アルサーは指をさした。

デウス達は指を指す先を確認した。

そこには白き鱗に身を纏い、赤黒いがんをこちらに向け、鋭い牙を向ける。

背を低く保ち、二対の足で歩くグレブラナルガ。

「あいつは俺が殺ってもつまらないから他のやつに任せるよ。君達の強さも知りたいしね。」

アルサーは地面に座り込んだ。

「えー?」

「えーとはなんだ。」

「戦ってくれねぇの?」

「弱すぎる。つまらん。」

デウスの言葉にアルサーは少しきつく当たる。

「まぁいいじゃない。行こ。」

「そうだな。」

デアに誘われるがままデウスは武器を手に取った。

「デウスは正面から突き砕いて。」

「了解。」

デウスは地面を勢い良く蹴飛ばし、走り出した。

デアは先回りし、グレブラナルガを攻撃した。

「グルアァァァアァァァ!」

暴れ、デアを噛み裂こうとする。

デアはそれを躱して多数の切り傷をつける。

「グギャアァァァァ!」

殺しにかかってきているように感じる。

デアは飛んで逃げた。

デアのどいた後ろには突進してくるデウスがいた。

グレブラナルガは噛み付こうとした。

デウスは跳び、眉間らしき所にやいばを突き刺した。

「グガガァァァァァ!」

グレブラナルガは呆気なく鎮火した。

デウスはグレブラナルガから大剣を引き抜き、背に収めた。

「へぇ。意外とやるんだね。」

「思ってたより弱かった。」

デウスは立ち尽くして言う。

「君達息ピッタリだね。良いペアになりそうだ。」

アルサーは立ち上がりながら言った。

デアは礼をし、デウスは頭を掻く。

「そろそろ帰ろうか。」

デウス達は冒険者ギルドに戻った。

今回コクドとニルノとデレーナは役に立たなかった。

ずっと見ていただけである。

報酬は銀貨三枚。そこまで強くないモンスターだ。報酬もちっぽけだ。

「取り敢えず帰るか。アルサーはどうするんだ?」

「俺は冒険者ギルドの宿を借りるよ。」

「そう。」

デウスは皆とその場で別れた。

アルサーはデアと一緒に冒険者ギルドに入った。

「君はレギトに似ているね。」

レギトはアルサーの少年時代に親友としていた人だ。訳あって五年程署事刑所にいたが釈放された。

冒険者になり、モンスターをバンバン倒していた。ジョブは魔人。ほとんどの魔法は取得していた。

だが、″あるもの″に殺されてしまった。

「レギト?」

「気にしないでいい。それより、良く眠るといい。」

そう言ってデアと別れたアルサー。

デアは部屋に戻りベッドに座り込んだ。

『デウスの過去。なんでだろう。私とほとんど同じくらいなのに何故か物凄く酷く感じたな。』

そんなことを思いながらベッドに体を預けた。

デウスの方はいつも通りだ。

ベッドにデウスとイリビードが飛び込んで眠り、フローレが窓辺にいる。

だが、フローレの顔は晴れ晴れとしていて、悩みが消し飛んだようだった。

デウスは起きていた。フローレのことを見て少し笑みを漏らした。

『いつもよりいい顔してるな。』

デウスは目を瞑り、眠りにつこうとした。

そこで悲劇が起きた。

大きな地響きのような音が聞こえ、デウスは飛び起きた。

「なんだ!?」

「!!!」

フローレは窓の外を見て絶望の色を顔に見せた。

「フローレ!どうなってる!」

デウスの問いかけにフローレは応答せずにずっと窓の外を見ている。

デウスは窓まで行き、外を見た。

そこでデウスは目を見開き、思考を止めた。

外には大きな影があった。

その影のしたには火が回っており、住民の悲鳴が聞こえる。

「なんで、あいつが、ここに居るんだよ。」

たどたどしい言葉で驚愕していたフローレ。

デウスは何かわからなかったが火が回っていることに驚いていた。

「フローレ。あれ何?」

「あいつは、闇を統べるもの。魔神の長。デスペランドーマだ。」

それは絶望を意味する。


✣ ✣ ✣


大きな影をもたらすデスペランドーマは悪魔の姿をしており、それでいて吸血鬼のような姿をしていた。

「我の声が聞こえるか!我は闇を統べるもの!デスペランドーマだ!今からこの街に絶望をくれてやる!」

そう言って火を吹き始めた。

街は火の海になり、あらゆる場所から悲鳴が飛び交った。

デウスは武器を取ろうとした。しかし、それはフローレによって止められた。

「行かせてくれ!」

「駄目だ!」

フローレは全力でデウスを止める。

「どうして!」

「今の主じゃ直ぐに殺される!やめろ!」

フローレの意見は最もだった。デスペランドーマはアルサーが全く歯の立たなかった相手だ。アルサーの身体能力すら得ていないデウスじゃ抵抗虚しく死ぬだけだ。

「じゃあどうすりゃいいんだよ!」

「奴があの言葉を口にしたら最後。絶望を知るまで終わらない。」

フローレは悲しげにそう告げた。

「くそ!どうしてだよ。俺は、誰も救えねぇってのかよ。」

膝をつき、床に手をついたデウスが哀しそうに言った。

「フローレ。行かしてあげて。」

イリビードがフローレに頼み込んだ。

「どうしてだ?」

「この子には可能性があるわ。救えるかどうかは分からない。でも、抵抗は出来るはずよ。」

「駄目だ。主が死ねば我々も死ぬんだぞ?」

「分かってるわ。でも、行かしてあげて。この子はやってくれるわ。」

イリビードはデウスの武器を取り、デウスに渡した。

「行ってきて。そして、街の人を救ってあげて!」

デウスは立ち上がり、武器を取る。

「どうなったっていい。何人か救えばそれでいい。俺は行く。」

「うん。」

デウスは窓から飛び降り、デスペランドーマへの抵抗を開始した。

「……良かったのか?」

「えぇ。あれでいいのよ。」

フローレとイリビードはただただ見守るのみだった。

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