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FaTuS;契約譚  作者: 元気ハツラツマン
一章 契約者誕生
7/91

第七話 デウスの過去に現れた人物

✣ ✣ ✣


「ん?」

デウスは何かに反応した。

『重力が強くなった?いや、違う。誰かが上に乗っかってるのか?イリビードか?』

デウスはゆっくりと目を開いた。

「デウスー起きたー?」

「え!?デア!?」

なんとデウスの上に乗っていたのはデアだった。

『なんでデアがここに!?』

「ん〜。主くんどうしたの〜?」

寝ぼけたまま問いかけてくるイリビードにデウスはビクリとした。

「やべ。イリビードが起きちまう。」

「ん〜。なんもないなら寝るよ〜。」

そう言って寝返りをうつイリビード。

一安心したデウスはデアに問いかけた。

「どうしてこんな所にいるんだよ。」

「迎えに来たのよ。時間、見て見なさい。」

「え?」

デウスは時計を見た。

現在の時刻はA.M.8:13。

その時間を見て焦り始めたデウスにデアは少し混乱する。

「俺こんなに寝てたのか!」

「ちょ、ちょっと、イリビードさん起きちゃう。」

そう言ってデウスを止めに入るデア。

だが、デウスは止まることなく、あろう事かデアの目の前で支度をし始めた。

着替えさえもデアの目の前で。

それに対してデアは

『デウスの筋肉凄い。どうやったらあんな筋肉の付き方になるんだろう。』

と普通の筋肉を見て特別な付き方と解釈してマジマジと見ている。

多分デアは男の体付きを見たことがないのだろう。

「よし!終わった!急ごう!」

「あ!待って。コクドさん達は先にクエストに言ったよ。」

「え?」

また初めての情報だ。

「それ先に言ってくれよ。」

「言おうとしたら急に支度始めちゃうんだもん。言えるものも言えないでしょ。」

「それはごめん・・・・・・・え?」

「どうしたの?」

「今、デアなんて?」

デウスはデアの言葉を聞いて気になることがあった。

「言えるものも言えない。」

「違う。もうちょい前。」

「えーっと。言おうとしたら急に支度始めちゃうんだもん。」

デウスはそこで全ての機能を一時的に停止させる。

「…………」

「デ、デウス?」

「もしかして俺の体見たのか?」

「うん。」

「あああ。恥ずかしい。」

「別にいいじゃない。それにデウスは私の体見たでしょ?」

「そうだが。」

「自分はだめ?」

「あんまり見せなくないんだよ。あの筋肉。」

デウスは筋肉を見せるのがコンプレックスらしい。

「どうして?凄い筋肉じゃない。」

「俺はな。努力を人に見せたくない人なんだよ。それにあの筋肉付けたくてつけた訳じゃないんだ。」

「どういうこと?」

「あれはな、祖父や祖母に暴力を振るわれてたことに付けたものだ。」

祖父母からの暴行のせいで付いた筋肉。

親からの暴力などなら分かるが祖父母。

「祖父母に付けられた?」

「いや、実際言えば自分で付けた筋肉なんだが、俺の筋肉を見たんだったらわかるだろ。あの傷を。」

「あ!」

デアは思い出した。

『確かにデウスの体には無数の傷があった。その中に一つ明らかに切りつけられたような傷があった。』

「あの大きな切り傷は祖父に付けられた傷なんだ。ナイフで背中から切られて出血が止まらなかった。」

デウスの悲しい過去。デアは初めて聞く。

「その話詳しく聞いていい?」

「聞いて良いもんでもないぞ?」

「いいの。」

「そうか。なら話そう。」

デウスは息を吸い込んで話し始めた。


✣ ✣ ✣


「今から十年前くらいになる。父親と母親は大事な仕事で長い期間家を留守にすることになった。そこで俺は祖父母の家に置かれた。そこで俺は虐待を受けた。それも本気で殺しにかかってくるような。最初は小さな悪口くらいだった。それでも笑って誤魔化して話をしたりしてた。でもそれが段々悪化していくようになった。徐々に手が出始め、最終的には刃物を使うようになった。暴力に耐えるために俺は筋肉を付けた。それでも痛かった。顔からは血が出て、足も震えて立つのがやっとだった。なんでこんなに罵声や罵倒を受けなければならなかったのか、俺にも分からなかった。どうして俺がこんな目に会うんだろうって、こんなクズ共さっさと死ねばいいのにって、何度も何度も思った。だから一度だけ反論したことがあった。どうしてこんなことをするのかと。そこで帰ってきた返事は有り得なく前代未聞の言葉だった。″お前を殺したくてしょうがない。家の子だからなんだってしていいんだ。殴ったり、殺めたり。だからお前が死のうがどうでもいい。取り敢えず死ぬまでやり続けるさ″。俺はその時本気で殺してやりたいと思った。その夜、ナイフで背中を切り裂かれた。血が止まらなかった。でも、病院にも連れて行ってくれなかった。俺は死を覚悟した。もう死んだっていい。こんな人生なら俺は生きる意味なんてないのだと思った。体から溢れる赤く熱い液体を見ながら氷柱になって行く体を感じていた。そんな時だった。あの人が俺の事を助けてくれたのは。そっと俺に手を差し伸べ、心に炎を灯してくれた。その炎は物凄くに大きくなって、俺の体を動かした。俺を切ったナイフが目の前に落ちていて、咄嗟にそれを拾い上げた。そのナイフで祖父母を殺した。死体は形を失い、真っ赤な血をそこらにぶちまけた。当然俺の体は血まみれ。その後も必死に、懸命に病院に行って助かった。署事刑所しょしけいじょにも入りそうになったけど、正当防衛という形で片付いた。俺はあの人に助けられたんだよ。アルサー・ペンドラゴンに。」

デウスはアルサーと顔見知り。

今は生きているはずもないアルサー。なのに何故デウスはアルサーを見たことがあるのか。

アルサーの似顔絵は存在しない。写真はその時代には存在すらしていなかった。

だが、デウスはアルサーの顔が分かる。

「へ〜。まだ生きてたのね。」

「イリビード?起きてたのか?」

「ずっと起きてたわよ。寝ぼけたように見せかけてね。」

「待て、まだ生きてたってどういう意味だ?」

「そのままの意味よ。」

デアを放ったらかしでイリビードに話を聞こうとするデウス。

「デアちゃんもいる事だし言っておくわ。」

そう言って正座をするイリビード。

デウスとデアはイリビードの方向を見る。

「契約者ってのは普通の人間より寿命が長いのよ。それもかなり。普通の人間はたかが九十、百年。でも私達七つの罪龍と契約した人間はそれの約二十倍はあるわ。」

二十倍となると相当だ。人間が約百年の時を過ごすのに対して契約者は約二千年程の時を過ごすことになる。

「その話からすると俺は後千九百八十三年程生きるってことか?」

「正確に言えばそれは分からないわ。でも単純計算ならそうなるわね。」

そう考えると納得がいくというものだ。アルサーが契約者になったのは古書からすれば十八歳の頃。なら今も生きていておかしくはない。

「契約解除してもここまで生きているなんて珍しい方よ。本当なら契約解除すれば寿命は急激に短くなるの。だから本来ならとっくに死んでるわ。」

「てことは他の契約者は。」

「もうとっくに死んでるわ。私達の目の前で。」

イリビード達の目の前で死んだ契約者の中にはアルサーは含まれてない。ということは旅に出たのか。

「まだ覚えてたか。」

突如風が入り込む窓から声がした。

先程まで開いていなかった窓が開いている。そこには人影が映り、こちらを凝視している。

「あら、久しぶりね。アルサー・ペンドラゴン。」

窓に写り込む人影はデウスの人生を動かした男だった。

「久しぶりだね。イリビード。そしてデウス。」

にこりと笑う顔からは老いを一切として感じられなかった。


✣ ✣ ✣


「ア、アルサー。」

「まだその時のこと覚えててくれたんだね。嬉しいよ。」

「アルちゃん久しぶり。」

「おぅ。元気にしてたか?」

慣れ慣れと話し合うイリビードとアルサー。

「おーい。起きたかー?主。」

ドアを開いて部屋に入ってくるフローレにデウスは驚く。

「よ。」

「…………」

フローレはあまりの光景に言葉を失ってしまう。

「あ、あれ?もしかして俺忘れられてる?」

「大丈夫よアルちゃん。私達が寝ると毎回貴方のことを思い出してるわ。」

「あぁ!成程!理解した!俺殺されてるよねフローレの中で!」

少し怒ったように言うアルサー。何故かテンションが高い。

フローレと会えて高ぶっているのだろうか。

「どうして、アルサーが、ここに。」

「そりゃあここは元々俺の家だったし。」

「いや、そうか。きっと幻覚見てんだな。まだ昨日の疲れが癒えてないんだ。うん。きっとそうに違いない!」

「あれー?やっぱフローレの中で俺死んでるー。」

哀しそうに何処か嬉しそうに言う。

「本物か?」

フローレがアルサーに問いかける。

「聞かなくても分かるだろ。昔とほとんど変わってねぇんだから。」

アルサーは窓から降りて部屋に入る。

「いやー。それにしてもでかくなったなー。何センチだ?」

アルサーはフローレの隣に立つ。

身長は見ただけでわかる。アルサーの方が小さいかなりだ。

それこそデウスとほとんど同じくらいだ。

「デウス。その武器ビクトルに作ってもらったのか?」

「ビクトル?」

デウスは一瞬思考が止まった。

初めて聞く名前だ。

「あれ?名前聞いてないのか?鍛冶屋のおっちゃんの名前はビクトル・デク・トールって言うんだよ。相手の名前くらいは聞くんだぞ?」

何処か他人行事で、何処か家族行事だ。

物凄く馴れ馴れしく、物凄く気が気ではない。

「まぁ、そんなことはどうでもいい。なんで俺の顔をお前が分かったか教えてやるよ。」

あの時アルサーは自己紹介をした訳では無い。何故デウスはアルサーの顔を知って、それがアルサーだと確信したのか。

「お前は言わゆる記憶持ちって感じだ。前世の記憶を持って生まれてきた。その記憶は多分ゲルマニウム・シルヴァーの記憶だろう。知らないと思うが一応言っておこう。ゲルマニウム・シルヴァーはーーー」

「最年少最強の少年。僅か十歳でギルドマスターになった男。一対いっついの剣を腰にかけ、全くの無防備状態で七つの罪龍をたった一人で相手にした怪物中の怪物。それで付けられた二つ名は″非曝ひばく対将ついしょう。」

「その記憶も持ってるのか。」

前世の記憶を持っているデウス。さすがに分からなければおかしい。

だが分からない前世もあるらしい。

「ま、取り敢えず冒険者ギルドにでも行くか。体が訛ってしょうがねぇ。」

「そうだな。そろそろコクド達も戻ってくる時間帯だろ。」

こうしてまた新たな仲間が増えた。

デウスの周りはどんどん賑やかになっていく。

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