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FaTuS;契約譚  作者: 元気ハツラツマン
一章 契約者誕生
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第五話 過去

✣ ✣ ✣


少女、デアは語る。自らの過去を。

「今まで私は親の言うことを聞いて生きてきた。言わば親の脛をかじっていたの。お母さんの言うことは私にとって絶対のことだった。でも、もう十数年も前になるわ。家を出ていきたくなったの。お母さんは私を最強の剣豪にしようとしていた。だから私にはとても厳しかったの。私以外にも子供がいたけど、その中で私が一番優れていたわ。何においても私が上。とてもつまらなかった。だからお母さんは私を選んだの。最強の剣豪に相応しい子はこの子だと。私はその時嬉しかった。とてもとても嬉しかった。私のことを相応しいと言ってくれたし、私を選んでくれて。でも、地獄はここからだった。そこから私は修行の日々だった。毎日毎日付きっきりでお母さんが見ててくれた。休憩時間は愚か、水分補給すらさせてくれなかった。少しでも違う点があれば木刀で叩かれていた。物凄く痛かったけど、痛いと音を上げるだけで叩かれた。私はそれでも頑張った。挫けずに頑張った。そんな私にお母さんはこう言ったわ。『貴方は優れていると思ったのに、残念だわ。』と。私はショックを受けて数日間部屋を出なかったわ。そこからよ。家族の態度が変わったのは。見違えるように変わってしまったわ。私の言葉に耳を貸す人は居らず、私のご飯を作ってくれる人もいなかった。どれだけ話しかけても、どれだけ頼んでも、何一つしてはくれなかった。だから私は心に決めたの。家出をして、家族を見返す旅に出ようって。そこから私はPvPというものに知り合ったの。そこで勝利を連続で手にすれば私の事を見直してくれると。これまで誰にも負けずに無敗という成績を記録したわ。相手はとても弱くて退屈だった。誰一人として私に傷を付けるものはいなかった。そこで貴方と出会ったのよ。デウス。あなたのオーラの量と魔法値は今まで見た中で最大だったわ。そのオーラからはとても恐ろしいものが潜んでいると私は気づいたの。なにか、人間ではないような。今まで私は最強者と自分を慢心していた。傲慢だったのよ。でも私はこの力を努力して手に入れた。周りは私のことを才能だとかルナティック家だからとか言っていた。私はそれが気に食わなかった。努力もしていない連中が人のことをまるで努力してないみたいに言って、才能の違いと決めつけた。そして私を知ろうとする人間は誰もいなかった。才能だけだと思われていたの。でも貴方は違った。私の過去を知ろうとしてくれた。それが嬉しかった。こんな人がいるんだと。改めて知らせてくれた気がして。」

デアの頬には一筋の雫が通った。

目はうるうるとし、鼻は少し詰まっていた。

「ほら、ティッシュだ。鼻かめ。」

デウスはデアにティッシュを渡した。

デアは鼻をかんだ。

「そうか。そんな過去があったのか。」

「あなたは信じてくれる?」

「何を?」

「私の辛さや努力を。」

「信じない訳ないだろ。女性が涙を流して言ったことだ。信じるよ。君の努力も辛さも。」

「ぅぅ。」

「お、おい。また涙出てんぞ。」

デウスはティッシュを取り、涙を拭き取る。

「ありがとう。」

「おう。」

デウスは笑顔で返した。

その笑顔につられるようにデアも笑顔を浮かべる。

「包帯が赤くなってるぞ。そろそろ取り替えないと。」

デウスはデアに包帯を渡した。

「ねぇ。お願いがあるの。」

「なんだ?」

突然頬を赤く染めるデア。

デウスは少し首を傾げる。

「あなたのギルドに入ってもいい?」

「え、どうして?」

「嫌だったら別にいいの。でも、知りたくなったの。素晴らしいあなたの周りにはどんな人がいるのか。」

デウスは頷いた。

「嫌じゃないさ。いいぜ。これから宜しくな。デア。」

「うん!宜しく!」

デウスとデアは握手を交わした。

そこに怒りをぶつけるかのようにドアを開いて入ってきたフローレ。

「主!我に任せないでもらおう!」

「静かにしろよ。でもお前何かしたか?」

「いや、何も。」

「ならいいじゃん。」

デウスはフローレを言い抑える。

「それよりフローレ。俺達のギルドに新しく加わるデア・ルナティックだ。」

「よろしくお願いします。デア・ルナティックです。」

「あ、あぁ。宜しく。我は憤怒の罪。フローレだ。」

フローレとデアは握手を交わした。

こう見るととても新鮮だ。

デウスは時計を見た。

「もう五時か。そう言えばデアは何処に住んでんの?」

「野宿。」

「なら家に、」

そこでデウスは言葉を止める。

『ちょっと待て。家には既にフローレやイリビードがいる。どうしようか。』

デウスは顎に手を当てて考えていた。

そこで思いついたと言わんばかりに手を叩いた。

「そうか!この手が!」

「ど、どうした?」

「フローレ!金はまだ余ってるな!」

「あ、あぁ。それがどうかしたか?」

「それを少しデアに分ければ解決だ!」

「いや、何がだよ!」

謎の急なデウスの判断にフローレはキツめのツッコミを叩き込む。

「冒険者ギルドには宿がある。そこは銅貨三枚で二日の泊まりという超激安宿だ。フローレの金貨と銀貨があれば暮らせるぞ。」

「いやまぁ別に使い道ないけど。」

「その金貨と銀貨をデアに分ければ解決じゃないか。」

その言葉にデアが両手を交差されるように手を振った。

「いやいいよ。悪いよ。」

「何言ってんだよ!お前は俺と同い歳くらいだ。それにお前の過去を知った以上ほっとく訳にはいかない。」

「我もこの金を使う気がないし取り敢えずこのくらいあればいいだろ。」

そう言ってフローレがデアに金を渡す。

デアの手に輝くのは銀貨十枚と金貨十枚。

銀貨は銅貨の二倍。金貨は銅貨の四倍ある。

だから冒険者ギルドで泊まるなら銀貨一枚で二日、金貨一枚で八日の宿泊ができる。

「こんなに貰っていいの?」

「あぁ。くだらないことに使うなよ。これはあくまで生活料だ。」

フローレが注意する

「ありがとうございます。」

一礼をして金を握り締めた。

「まだ病院からは退院出来ないと思うから明日も来る。退院出来たら冒険者ギルドの前にいてくれ。」

「分かった。また明日。」

笑顔で手を振ってくれるデアにデウスは手を挙げた。

ドアを開け、外に出た。

「フローレ。」

「なんだ?」

「俺さ、デアのこと幸せにしてやりたい。」

「そうか。」

そうして家に帰ったデウスとフローレ。

一方でデアはベッドに座り込んでいた。

『デウスか。優しいな。』

デアはホッコリした気持ちになっていた。

『私はまだまだ未熟だったのかな。彼は私の手が届かないところにいた。』

そんなことを思いながらデアは包帯を取り替えていた。

『なんだろう。この気持ち。心が暖かい。』

デアはデウスに出会って人生が変わったのだろうか。

それは誰にも分からない。


✣ ✣ ✣


デウスは朝早く目が覚めた。

デウスは部屋を出てフローレが取ってきたゴブリンを食して準備をした。

デウスは部屋に戻り、準備を始める。

そんなデウスにフローレは問う。

「今日は早いな。」

「デアが退院していたら皆に知らせないといけないしな。」

「そうか。」

デウスは背に大剣を背負う。

「行こうか。」

「そうだな。」

デウスとフローレはイリビードをおいて出かけた。

「あ!待って!私を忘れてない!?」

急いでデウスとフローレを追いかけるイリビード。

でも、その日は災厄の日になる。

デウスは冒険者ギルドの前に向かった。

デアの姿はない。

『まだ退院してないのか?』

デウスは行き先を変えて病院に向かった。

病院を目の前にした時、周りの人が上を向き、指をさし始めた。

そして、腰を抜かしたり、逃げ出したりし始めた。

デウスは何事かと思い上を見る。

デウスの視界に入ったのは一体の龍だ。

「嘘だろ。」

フローレが驚きを表に出した。

「どうしたんだ。」

「主、あいつはヤバい。逃げないと、ヤバい!」

フローレが焦り、見たことも無い顔をしていた。

フローレがここまで動揺を表すのはデウスも初めてだった。

「イリビード。あいつは?」

「ど、どうして、」

こちらも動揺を隠せないようだ。

「主。やつは七つの罪龍の一体。傲慢の罪。スペルビアだ。」

「傲慢の罪?」

「奴は、一体で世界を呑み込める程の怪物中の怪物だ。」

スペルビアは翼をはためかせて降り立った。

「久しぶりだなフローレ。調子はどうだ?」

「どうしてここに。」

「なに、お前の噂を小鳥達が話しててな。気になったから来ただけさ。」

話的には小鳥達に居場所を聞いたということになる。

「だが、お前の主はガキときた。ふざけんじゃねぇぞ?」

スペルビアは剣幕が悪くなっていた。

「くだらねぇ。実にくだらねぇなぁ。この街諸共お前の主をぶっ殺してやるよ。」

スペルビアは爆咆を放つ。

鼓膜が引きちぎれそうな大きさだ。

「なんだよ、今の。」

「軟弱だな。」

スペルビアは口から黒い炎を吐いた。

それを食らったものはドンドン黒く変色して死んでいく。

「ぶっ壊れろ!」

スペルビアは龍の姿から一変させ、悪魔に姿を変えた。大きさは先ほどよりも大きく、建物は踏み潰せば終わるレベルだ。

「おぉ?病院じゃないか。これは好都合だ。病人は一発だろうな。」

デウスは呆気にとられたような表情をする。

『病院だと?病院にはデアがいる。させない。壊せは、しない!』

デウスは右で大剣の柄を強く握り締め、体勢を低くする。

そのまま抜き出したと同時に敵に走り寄った。

「主!?やめろ!」

カン!

と大剣は鱗に弾かれる。

「死ね。」

スペルビアの右手はまっしぐらにデウス目掛けてメテオのように落ちた。

「主ー!」

フローレはデウスを呼んだ。

返事がない。

「呆気なかったな。」

そういうスペルビアは何かに殴られたように後ろに重心が傾き、倒れ込んだ。

「な!?」

「勝手に殺すな!」

大剣を右手に少し埃の着いた服を身につけている。

デウスだ。

「俺はお前を許さねぇ。後悔しな!俺を敵に回したことを!」

デウスの大剣は莫大化し、黄色の炎を纏う。

「オラァ!」

デウスの大剣は見事にスペルビアに命中した。

体には裂け目が入り、物凄い血の量を吹き出す。

「なん、だと!?」

「分かったか。失せろ。」

スペルビアの目の前に大剣を向けるデウス。

その距離わずか数ミリ。

「ちっ。」

舌打ちをして龍の姿に戻るスペルビア。

「次はぶっ殺してやる。」

そう言って血を出しながら消えていった。

デウスは腰を抜かす。

「主!」

「あぁ。フローレか。」

「無茶しすぎだ。」

「大丈夫だ。この大剣が、あれ?」

大剣は元の大きさに戻っていた。

「取り敢えず病院に入るか。」

デウスは立ち上がり、大剣を閉まって病院に入った。

このことによりデウスは小さな英雄となった。

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