先生が好きなの
私には好きな人がいる。
「高瀬、おはよう。」
「おはようございます!!」
ぺこりと頭を下げれば彼はクスクスと声を立てて笑う。
「高瀬は相変わらず元気でよろしい!」
「へへ、どうも…」
でも、決して実らない。
「じゃぁ今日も1日頑張れよ。」
「…はい、佐田先生も。」
なぜなら彼は教師だから。
そして私は生徒だから…。
佐田先生を好きになったのは1年前の春からだった。
特に何があった訳でもない。
でも少しずつ、少しずつ惹かれていった。
でもそれだけ。私にはどうすることも出来ない。
だから私は笑う。明るく振る舞う。
少しでも先生にとって良く映るように、
私という存在が記憶に残るように…。
「高瀬!」
後ろから愛しい人の声が聞こえた。
「わるいんだけど、放課後倉庫の整理付き合ってくれないか?人手不足なんだよ。」
「いいですよ。」
「…いやぁ、ホントに申し訳ない。」
「大丈夫です!」
「でもほら、高瀬も青春したい時期だろうし。」
「ふふ、先生おじさんくさいっ!」
「えぇ。気づつくなぁー。」
「だから未だに結婚の1つや2つ、出来ないんです!!」
「…痛いこと言うなぁ〜。」
苦々しく先生は笑う。
「ていうか、結婚の1つや2つってそんな出来るわけないだろ!高瀬は相変わらず幼稚な発想するなぁ。」
また、子供扱いした。
いつだってそう。
「……私だったら、せんせいの」
「え?」
「私だったら先生のお嫁さんになりますよ。」
「また、なにいってるんだ。大人をからかうのは…」
「私、先生が好きなの。」
「言うつもりなんて、これっぽっちもなかったのに…
。」
私は倉庫から思わず逃げ出した。
頬を伝う涙は暖かくて、余計になんだか悲しくなった。
先生が好き。
生徒思いで優しい人
大きな背中
骨張った手
おじさんくさいところも
たまに見せる子供っぽい笑みも
全部全部好きなのに、
なんで届かないんだろう。
埋められない年の差がどうしようもなく憎らしい、
つらい
苦しい
やめたい
でも
、
先生が好きなのは変わらなくて
まるで磁石みたい、そう思う。
先生はS極私はN極、くっつきたい、踏み込みたいと思えば思うほど弾き返されてしまうこの関係が、