半世界
私は、万物の頂点に君臨する者、ドラゴンである。
その日も、私は飛んで行く、あの高き空へ。
青く透き通る、サファイアの鱗を輝かせ、天空を切り裂く翼が轟音を鳴らせ風が歌う様に。
この半世界を照らす太陽を、私は下層の空から見上げると、この力量不明な大きな翼を羽ばたいた。
その青く美しい翼は、風を蹴り上げ、高く高く私を最上層の空に連れて行く。
しかし、半世界を照らす太陽は下層から見た姿と何も変わらなかった。
私は、これ以上風を蹴れない上層まで飛ぶと、その場で止まり考える。
私は、この世界の運命を変える力を持つ者。
私は、偉大なドラゴンなのだ。
人は私を恐れ、生き物達は泣き叫び逃げ惑うのだ。
きっと私は神よりも強く、きっとこの太陽よりも大きいはずだ。
私は、全ての頂点であるはずなのに…
この太陽は、私を他の弱き者と同じく照らすだけだ。
この翼を持ってしても、あの太陽に見下ろされるのは何故だろう。
私は、太陽に向かい怒声を吐き飛ばす。
その吐き出される声は、山の噴火の様に天を真っ赤に染めた。
しかし、太陽は私を哀れむことなく、恐れることなく変わらずに照らしている。
半世界を照らす太陽よ、お前はいったい何処まで高く何処まで遠いのだ。
私は、答えなき光を浴びながら、しばらく太陽を睨み付けた。五分、一時間、いや半日か、見上げていた太陽が目線の高さまで降りてきた時、ようやく理解したのだった。
私は、私であり、太陽では無いと。
私は、私であり、あの人間でもないと。
私は、ドラゴンとして生まれたのだ。
だから半世界を照らす太陽の様に意味成す存在になりたいと。
そして、私は考える、意味成す存在とは何かを…