九十九話
今日で投稿が五回目です。
ラストは24時
朝、武刀は目が覚めた。
ただし、今日はいつもより早めに寝たせいか、起きるのが早かった。
空を見れば、早朝のためかまだ僅かながら白っぽさが残っている。
武刀が身体を起こすと、ベッド兼抱き枕となっているストリアは、武刀が目を覚ました事に気が付いた。
「今日は早いね」
「まあな。やることあるって言ったろ? それと、まだ朝早いから声のボリュームは小さくな」
右手の人差し指を縦に伸ばし、唇に触れるとストリアはこくこくと、黙って二回頷いた。
アルフィーとジブが起きているか、確認するため目を向けると彼女達は、ベッドで二人仲良く眠っていた。
身体を起こした武刀は、壁に背を預けた。
その左に抱き枕である幼女ストリアが、武刀と同じように壁に背を預け、体育座りをして武刀の方に身体を傾けた。
「なんだ? 甘えたいのか?」
武刀は昨日買った武具に魔術回路を作る作業をしながら、ストリアに尋ねた。
「私、必要ないのかなって……」
「いやいや、必要だぞ。だってこれから魔物との戦争だ。ストリアの力を頼りにするしかない」
魔術師、といっても所詮は人間。
銃で撃たれれば死ぬし、斬られても死ぬ。
そのため、ストリアは必要だ。
彼女の力が。
「本当?」
「ああ本当だとも。実際、ストリアがいれば安心できる。精神的にも」
ストリアを説得する中、武刀は、あれ? この言い方だと浮気する男みたい、と不覚にも思ってしまった。
魔術の付与が終わった。
その頃には白みのあった空が、すっかり青くなってしまった。
太陽の日が窓からこぼれ、部屋の中を照らす。
日の光に当てられ、アルフィーとジブは目を覚ました。
「もう、朝か……」
アルフィーは左手で両目を擦り、右手でベッドに突き立て身体を起こした。
「ん、んん~」
ジブはうつ伏せになり、両手を組んで両腕両足を伸ばす。
「おはよう」
起きた二人に武刀は挨拶をする。
「ん? ああ、おはよう」
アルフィーは寝惚け眼で武刀を探し、挨拶をした。
起きた彼女の頭、というよりも髪の毛が寝癖で変なことになっていた。
朝食を食べ終え、四人は部屋に戻って準備をしていた。
「俺は今から偵察してくるが、ジブはどうする?」
武刀は既に魔術回路を作る作業を終えた。
本来なら夜までかかるのだが、そこは変化の短剣によりカップラーメンを作るみたく早めに終わってしまった。
魔術回路を作ったなら、することは決まっている。
試運転のついでに、偵察をする。
明らかに情報が少なすぎる。
このままでは、勝てる戦いも勝てなくなる。
そのためにも情報が一つでも多く、必要になるため武刀は偵察する。
昨夜、アルフィーには偵察するとは聞いていたが、ジブはその時食事をしていたため聞いてはいなかった。
「僕は魔術が使える状況じゃないし、道具を買ったりするよ」
「そうか、分かった。必要な物はアルフィーに聞いてくれ。俺は全然知らないから」
これが元の世界なら、武刀は教えられるのだが、ここは別の世界。
常識だって、生物だって、違うものばかりだ。
武刀は準備が終えた。
昨日、新しく買った革の鎧、小手、ブーツ。
左側の腰にはバンデットから奪った剣、右側の腰には防具と一緒に買った短剣のような短い剣。
左腕には丸く小さな盾。
背中には槍を背負っている。
「完全武装、といった所か。やっぱり、魔術回路を新しくすると古いのを変えたくなるな」
ゲームと一緒だ。
武器と防具を買い揃え、また新しい町にいけばさらに強い物がありそれを買う必要がある。
魔術回路も似ている。
その状況にあった魔術回路を作り、さらに新しい魔術回路を増やしていくと、古いのでは物足りなくなってくる。
それに、一度魔術回路を刻めば、変える事なんて不可能だ。
新しくするには別の武器が必要となるが、今の所思いはするが変える必要性はない。
「先に行って来るよ」
武刀はまだ準備している二人にそう言い、ストリアを鎧の下に入れて部屋から出て行った。




