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九十七話

今日で三回目の投稿です。

ストックが・・・

 武刀とアルフィーは階段を登り、二階の泊まっている部屋に着いた。

 二人は向かい合うように、武刀は木の床に胡坐をして座り、アルフィーはベッドの縁に座った。

 

「それで、人前じゃ話せない話は何?」


 宿屋の横に併設している食堂で夕食を食べていた三人だが、人前では話せない、ということで二人は泊まっている部屋に訪れた。

 残りの一人、ジブはまだお腹が減っているらしく、未だに夕食の続きをしている。

 

「これが知れれば、騒動が起きることになる。だから人前では話したくないんだ。しかし、それも時間の問題なんだがな」


「おーい。自分だけが知ってるからって、そういうのはいけないと思うぞ。早く教えてくれ」


「分かっている。では話すぞ、心して聞け。この町に今、千に近い魔物が近付いてきている」


 武刀の頭が機能を停止した。

 瞬きもせず表情も変えず、ただじっとアルフィーを見つめる。

 そして五秒後、頭が再起動を始めた。

 さらに五秒経ち、武刀は完全に動き始めた。


「すまん。俺の聞き間違いかもしれないが、どれだけいるって?」


「千だ」


 さっきと同じ数が聞こえ、武刀の頭は切り替えた。

 

「こちらの冒険者、というよりも戦える数は?」


「冒険者がよくて百。兵士の方は分からんが、冒険者よりも多いのはたしかだ。といっても、二百はいかないと思うが」


「五倍の数、か」


 武刀は五倍の相手に対し、どうやって勝つかを考えていた。

 なにせ、今持っている情報が少なすぎるからだ。

 

「まず、情報の整理から始めよう。最初に、今回の件を知ったのは今日の夕方、この町の周りに潜んでいる魔物の殲滅の依頼を終えて、冒険者ギルドに帰ってきた時だった」






「これが今回の報酬になります」


 依頼を終えたアルフィーは、受付に行って報酬を受け取っていた。

 今回、一緒に依頼を受けた騎士姿のエンテは、今回の依頼、もう一つの参加していたパーティーリーダーのバンデットの行いを報告していた。

 

 バンデットについては、今すぐに、とはいかないが厳しいものが言い渡されるはずだ。

 

 今日の依頼は少し特殊なもので、普通の依頼と比べると報酬が良く、財布である麻袋にはずっしりとした重みを感じた。

 

 ほくほく顔で受付から離れると、その際に知り合いが受付にいるのが見えた。

 一人で帰るのもなんだし待っておこう、と考えたアルフィーは適当に空いている椅子に座り、彼女が戻って来るのを待っていた。

 

 待つこと、一分ほど。

 ジブは受付から離れ、帰ろうとすると椅子に座ってこちらジッと見ているアルフィー気が付いた。

 

 アルフィーが右肘を曲げて手を振ると、ジブが近付いた。

 

「待ってたの?」


「ああ。そんなに待っていないがな」


 現に、待っていたのは一分ほど。

 考え事や周りを観察でもしていれば、過ぎ去るぐらい時間だ。

 

「今回は何をしたんだ?」


「薬草の採取と魔物の討伐」


「そうか。薬草の採取は難しかっただろう」


 二人ともこの世界の住人だったなら、薬草を探すのは簡単だったかもしれない。

 しかし、一人は異世界の住人。

 もう一人はドラゴンで人ですらなかった。

 

 この世界の薬草なんて、今まで見なかったから探すのも一苦労しただろう。

 

「うん、難しかったよ。けど、途中からは役割分担で武刀が薬草を探したんだ。その時にね、アルラウネ? とかいう魔物を倒したんだけど、そのまんま持って来たらお金を一杯貰っちゃった」


「そう……あれ?」


 アルラウネはたしか、ランクとしてはCではなかったか? 

 それに、この辺りでアルラウネが生息するのは、森の奥深くだったような……。

 

 考えるのはよそう。

 見た目は人だが、ドラゴンなのだから。

 しかし、今は人間であるなら人間のルールを守ってもらわなければ。

 

「ジブ。森の奥深くに行って怒られただろ?」


「うん。まだランクが低いのに危険な場所には行くな、て」


 そう言うジブだが、その顔には反省の色が全く見えなかった。


「当り前だ。それがここの、冒険者ギルドのルールだからだ。まだランクが低いうちは、危険なところにはいかないよう、注意しておけ」


「はい。ごめんなさい」


 アルフィーのお叱りを受けてジブは反省し、しょんぼりしていた。


「反省したならいい。早く帰って夕食にしよう」


「うん!」


 ジブはアルフィーの説教を聞いたこともあってか、食事と聞いて笑顔で返事をした。

 

 二人は冒険者ギルドから出ようと、アルフィーが椅子を立ち上がった時だった。

 冒険者ギルドの入口の扉が勢いよく開いた。


 扉を勢いよく開いたことで大きな音が鳴り、夕食時ということもあり今まで騒音に包まれていた冒険者ギルドだったが、一瞬にして静寂が訪れた。

 

 入口にいるのは、満身創痍の男だった。

 若く子供っぽい少年で濁った茶髪だったが、血で赤黒く汚れていた。

 身体は血だらけで、鎧や兜もズタズタに引き裂かれいた。

 右腕は動かないのかぶらん、と垂れており、左手で右肩を押さえていた。

 

「た、助けてくれ!」


 彼の叫びが静寂を訪れていた冒険者ギルドに響いた。

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