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九十三話

先週、土曜に投稿すると嘘をつきました。申し訳ありません。

木曜日に一度投稿しているので、もし見ていない方がいればそちらの方を先にお読みください。


「しまったぁー! オーガの回収をするの忘れた!」


 武刀はジブと別れ、薬草を探していると武刀は唐突に思い出し、両手で頭を抱えた。

 しかし、

 

「ま、いっか。アルフィーもいるし、彼女のことならきっとやってくれるはずだよね。それよりも、今は」


 ジト目でジブのいる場所を見る。

 そこでは今、激闘が行われていた。

 

「ふふふ。まさか、薬草が採れる木の魔物がいるなんて」


 薬草採取が苦手なジブは、人があまり行かない所は一杯採れるはず、という考えの元、奥地に向かった。

 その結果がこれです。

 

 時折ジブの方を見ながら生えている薬草を採取し、襲って来る邪魔な魔物を槍で突き刺している時だった。

 ジブの方を向くと、そこには思いも寄らない生き物がいた。

 

 二人分の人が入りそうな大きな花に、大事な部分を隠した半裸の全身深緑色の女性が花のの中にいた。

 大きな花で膝下まで隠れ、女性は妖艶で男なイチコロな体付きをしており、緑色の髪は腰のラインまで届いていた。

 

「あれは、まさか」


 この世界で、あの生き物を見るなんて思っていなかった。

 どう、して。

 

「どうして、アルラウネがいるんだ」


 アルラウネ、それは男を食料にする花の姿をした魔物だ。

 男をおびき寄せるため、誘惑する必要があり女性の姿をしているらしい。

 そのため、女性には誘惑は効かないが女性特化のアルラウネの変異種がいるという事を噂で聞いたことがある。

 

 しかし、目の前のアルラウネは男性特化のようだ。

 現に、ジブには効いていない。

 アルラウネは花の根元から蔓を幾つも伸ばし、必死に抵抗する。

 

 蔓がジブの手足に絡みつこうとするが、その前に斧で斬り払って徐々に近付く。

 

「ちょっと待て! ジブ」


 武刀はジブに、アルラウネを倒すことをやめさせようと叫ぶが遅かった。

 

「ん? なんだ?」


 ジブの斧がアルラウネの首を右上から振り下ろされ、左下まで斬り裂く所だったが武刀に呼びかけられ、途中で止まったことで胸が斧で切り裂かれていた。

 斧によって真っ二つになりかけたアルラウネだが、既に事切れていた。

 

「ノウォォォォ~! そん、な。どうして惨い事を……」


 倒されたアルラウネを見た武刀は両手で目を押さえ、両膝が地面に着く。

 その姿を見たジブは、暴走する武刀を見て半眼になり呆れて無視することにした。

 

 ジブは倒したアルラウネを、どうするか考える。

 倒したなら回収すればいい。

 だが、どこが討伐の証になるのか分からない。

 参考のため武刀に聞きたくて顔を向けると、

 

「くそう、くそう。どうして……」


 四つん這いにになって右手で地面を叩いている。

 

 あれは参考にならないな、とジブは判断して自分で決めることにした。

 アルフィーから貰った、容量を増やす魔法を付与した麻袋を取り出す。

 

 武刀も貰っていたが、ジブも貰っていた。

 一人だけ渡すのは、明らかに依怙贔屓だ。

 ジブは麻袋にアルラウネを入れようとするが、口を広げてもアルラウネが大きくて入りきれない。

 

「ふむ」


 悩んだ末、実施することにした。

 無理矢理押し込んだ。

 ぐしゃりぐしゅり、とアルラウネが傷ついて緑色の液体が流れて手が汚れるが、ジブは気にしない。

 

「よし。完了」


 麻袋を懐に仕舞う。

 そして、落ち込んでいるであろう武刀を見ると既に立ち直っていた。

 

「ふふふ、どうしてこの世界は、いや何事においても残酷すぎる」


 武刀は立ち上がり、ゆらりと身体を揺らしていた。

 

 ああ、駄目だ。目が死んでる。

 

 立ち直っていると思っていたが、今の様子では立ち直っているようには見えない。

 ジブは、身体を揺らして不安定な武刀に近付く。

 

 彼女の接近に気づいた武刀は、急に直立不動になる。

 

「終わった?」


「うん。そっちの薬草は?」


「終わった、終わったよ。だけど」


 何か不服そうな顔を武刀はしていた。

 

「どうした?」


「倒すのは、もったいない、と思いました」


 絞り出すように、武刀は言う。

 

「なら、どうしたかったの?」


「それは」


 仲間にしたい、と言おうとした時に武刀は現実を思い出す。

 

「ハーレムを作りたいけど、やめよう……」


 武刀は遠い目をした。

 

「何か、あったの?」


「あったさ。俺は人外が好きだ! 愛してる!」


「なんか似た事を聞いたことがあるな」


 

 突然の愛の告白に、ジブは既視感を覚えた。

 

「だから俺は人外娘でハーレムを作った!」

「おお!」

 

 武刀の頑張りを知り、ジブは凄いと拍手をした。

 

「作った、作るまでは良かったんだ。人外娘は普通の人間と違って少し身体が頑丈でな。あと、性欲も」


「あっ……」


 ここまで言えば、ジブでも話の先が分かった。

 

「ちょっと、ハーレムの規模が大きすぎてな。自由がなくなってしまったんだ。あれじゃ、駄目じゃん?」


 武刀はしょんぼりと落ち込み、しゃがんで右手で地面にのの字を書く。

 そんな武刀に対してジブは、右手で頭をポンポンと励ました。

 

「夜は順番で、俺は絶倫じゃないのに五人の相手は無理だって。彼女達は人よりも性欲強いから育ち盛りの俺でも無理だって、それも毎日だよ。辛いってもんじゃないよ……」


「それなら僕達はどう? そんな関係になりたい?」


 ジブは武刀の本音を聞いて思う。

 僕達はなんのために人に変化させられたのか。

 

「俺は今の関係、友達同士がいい。凄く安心するんだ。というか、今はあいつら来てるみたいだし、死ぬ」


 武刀は目線を下に向け、悲しそうな顔をしていた。

 そして、一瞬で元に戻る。


「逆に聞くけど、ジブはどうなの? エッチしたい?」


「いや、したくない。だって、僕は元男だし」


 それを聞いた武刀は、心を覆っていた闇が晴れたような気がした。

 

「でしょ。ならこのままでいいよ。このまま、ずっと」


 武刀は遠い目をし、立ち上がった。

 その姿を目で追い、ジブは武刀を見上げた。

 

「聞いてくれてありがとう、帰ろうか。空はもう……」


 武刀は顔を上げて空を見ると、明るかった青空はオレンジ色に変わっていた。

 

「やばいな。そろそろ帰らないと門が閉まっちまう」


 門が閉まればまる一日、門の外で野宿をする羽目になる。

 夜は魔物が活発に活動する時間帯。

 外にいるのだけは避けたい所。

 

「ジブ、早く帰るぞ。全速力だ」


 強化魔法バージョンⅤを発動。

 槍、盾に描かれた魔術回路が起動する。


「分かった。けど、僕は魔術が使えないよ?」


 ジブの言葉で、彼女が強化魔術を使えない事を武刀は思い出した。

 

「そうだったな。なら俺がおんぶしようか?」


 武刀はしゃがんでジブに背を向けて言う。

 彼の頭の中には邪な事しかなかった。


「うん、お願い」


 ジブは頷き、武刀に近付いて背に乗っかろうとするがそれを武刀が止める。

 

「ちょっと待って。出来れば、鎧とかを脱いでほしい。ほら、今は時間が優先だから重い物は脱がないと」


 武刀の思いはただ一つ。

 背中で胸の感触を楽しむ、という煩悩。

 そのためには胸を遮る鎧が邪魔だ。

 

「う~ん、そうなのか? まあ言われた通りにするが、こちらを向くな」


 ジブは納得はできなかったが助けてもらうため、ここは頷いて鎧を脱ぐことにした。

 身に着けていた鎧を脱ぎ、斧や鎧を地面に置いた。

 

 すると、それは忽然と消えた。

 元はドラゴンであったジブの鱗や爪、牙が武器や防具となって変わった物。

 身体の一部のため、脱げば消える。

 

 鎧を脱いだジブは、武刀の背に乗っかる。

 背に重みを感じ、武刀は背中から僅かにある柔らかみが伝わった。

 その感触を武刀は楽しんだ。

 

「あの、行かないの?」


「あ、うん、そうだったね。行こうか」

 

 ジブの言葉で武刀は我に返り、右手で持っていた槍をジブに渡す。

 受け取ったジブは両手で持ち、尋ねた。

 

「どうするの?」


「ほら、魔物が襲ってくるかもしれないじゃん。だから、それで」


「ああ、なるほど。やってやろう!」

 

 武刀の言葉を理解し、勇ましい顔をして槍を突きだして構えた。

アルラウネ 本体はお花。女性の姿は一つの器官で、餌の男をおびき寄せる役割がある。



現在は週に一度投稿していますが、それが二日、三日おきの投稿になります。

これは私がどれだけやれるか挑戦してみたい、という試みからあるもので、辛くなったらまた週一に戻ると思います。

私の我が儘で皆さんを振り回す形になりますが、ご了承ください。

そして次の投稿は月曜の22時になります。

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