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九話

サブタイトルが間違っていたので、編集しました

「ふう」


 座禅をして深呼吸をする。

 そして、手を向かい合わせにする。

 すると、小さくだがマナが生まれた。

 

「おお!」


 マナの生み出したことが成功し、アルフィーが手を、パチパチと叩く。

 

「ムトウ、成功したな」


「ええ、なんとか」


 あれから、俺はマナの事について理解したお蔭か、何度もやってようやく成功した。

 具体的な理由は分からない。

 それについては、考えないことにした。

 けど、ようやくスタートラインに立てた。

 皆はもう、既に遥か先に進んでいる。

 だけど、俺は魔術師。

 秘策がある。

 

「な、アルフィー。いらない本とかない?」


「そんなの、あるわけがない」


「だよね」


 その秘策には本が必要だ。正確には、紙の束だ。

 それが欲しくてアルフィーに聞いたが、キッパリと断られた。

 

「なら、何も書いてない紙の束は?」


「それなら」

 

 アルフィーが奥の方に消え、少しして現れた。

 手には、紐で束ねられている紙の束があった。

 

「はい」


「ありがとう」


 受け取り、紙を捲って汚れがないか確認する。

 ペラペラと早く捲って、大きな汚れがないことが分かった。

 

「それ、何に使うの?」


「ん? 秘密だよ。出来てからのお楽しみ。もしできたら、俺の秘密を教えるよ」


「そう。なら、楽しみにしておくわ」


 アルフィーが保護者のような、見守るように優しく、温かい微笑みを見せる。

 その笑みを一切見ずに、

 

「ペンか小さい容器はある?」


「ある。持ってくるから待ってて」


 そう言って、アルフィーはまた奥に消えていく。

 彼女の後ろ姿を見ながら、

 

 何か、雑用させてるみたいで罪悪感があるな。

 そして、


「はい」


 羽ペンと小さな容器を持ってくる。

 

「これでいい?」


「うん、大丈夫。ありがとう。ちょっと作業をするから、顔を見せることは出来なくなると思う」

 

 羽ペンを見ながら答える。


「気にしなくていい。あとで見せてくれるんでしょ」


「ああ。楽しみにしててね」


 紙の束と羽ペン、小さな容器を持って、ここから離れる。

 さてと、魔術回路を作るとしようかな。

 

 

 

 

 部屋に戻り、椅子に座る。

 机に道具を置いて紙の束の紐を解き、紙を一枚取り出して、目の前に置く。

 

「さてと、始めるとしようか。の前に、眼鏡が邪魔だ」


 着けていた眼鏡を離し、ベッドに放り投げる。


 今からする作業は、魔術回路の作成。

 本来、魔術回路は自身の肉体に刻まれている。

 それも、見えないように工夫され、ビッシリと。

 

 それで不要かと思うかもしれないが、魔術を使う際、魔術回路が徐々に綻びが始り、最後には焼き切れて壊れる。

 

 防ぐためにも、ある程度の休憩時間が必要だ。

 そうすれば、自動的に修繕される。

 その時にもし敵に襲われたら、魔術を使う羽目になる。

 

 敵が休む暇がないほど襲ってきたら、それが魔術師の弱点。

 ある程度、休まなければ、身体に刻まれた魔術回路が壊れる。

 その弱点を克服するためにあるのが、別媒体に魔術回路を刻むこと。

 

 これを考えたのは、私です。

 ハイ!

 

 その英知の結晶が、手元にあるナイフ。

 これがあれば、俺は十年は戦えると思う。

 いや、それ以上だ。

 

 で、別媒体に魔術回路を刻む際、本来は魔術が使える状態でなければならない。

 けど、この世界では魔法が。

 

 魔術回路は魔術の燃料。マナは魔法の燃料。

 魔術回路=マナ、という方式が成り立つ。

 

 そもそも、魔術とは誰にでも魔法が出来るように、という理由で魔法の見直しと魔術回路が作成された。

 行けるはずだ。

 

 失敗は、できない。

 一度失敗すれば、終わりだ。

 

 羽ペンを持ち、紙にスラスラと、魔法陣とは違った毛細血管のような線を描く。

 だが、羽ペンにはインクがなく、綺麗なままだ。

 

 だけど、書いていく。

 僅かなミスで、術式の内容が変わってしまう。

 そんなプレッシャーに圧されながら、描いて行き、終わった。

 

 窓の外を見れば、既に真っ暗だ。

 俺、何時間ぶっとうしでやってたんだ?

 始めたときは夕暮れだったような。

 まあ、いいや。

 

 左手を握りしめ、爪が皮膚を貫き、血が出る。

 それを容器の中に入れる。

 中にはあまり溜まらないが、それでいい。

 

 羽ペンの先で容器に入っている血に触れ、紙の、紙に触れる。

 すると、それは毛細血管のように、紙全体に、さっき羽ペンで書いた通りの道をなぞっていく。

 

「さて、強化魔術は終わった。次」


 裏返しにし、また作業を始めた。

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