表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/126

八十二話

「はあ、どうしてああいうのはめんどくさいんだ」


 アルフィーはさきほど交わした約束、それまでの話し合いを思い出して嘆息する。

 ジブも参加はしていたが、難しい話ばかりだったせいか意味が完全に理解できず、逆に開き直っていた。

 

「何の話をしてたの?」


「聞いてなかったのか?」


「ん?」


 ジブは言わない代わりに、首を傾げて態度で示した。

 それだけでアルフィーは分かった。

 

「そうかそうか。はあ」


 彼女は下を向いてさっきよりも深く、ため息を吐いた。

 

「あ、武刀がいた」


 ジブが武刀を見つけたようだ。

 アルフィーは顔を上げて武刀を探した。

 名前を呼ばれ、椅子に座ってこちらに手を振っている武刀がいた。

 

 その反対の手には、飲み物が入った杯を持っていた。

 それを見たアルフィーは、先日の事を思い出してまた、先程よりも深いため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 三人は冒険者ギルドから出た。

 武刀が飲んでいた飲み物は一杯、且つ一番安い物であったためそんなに金は掛からなかった。

 

 夕食は宿で取り、ついでに宿泊代を追加として一週間分を払った。

 そして、今日の夕食。

 柔らかそうなパンが一つ。肉団子スープ、サラダ、あと焼いた魚。

 

「米を食べたい。どちらかというとカレーがいい」


 パンを食べながら、武刀は呟く。

 

「どうしたんだ。突然?」


 いきなり独り言を言いだした事に、アルフィーは質問する。

 

「元の国に帰りたい、と思ってな」


 まあ、すぐに帰れるかもしれないからな。

 何事もなければ、と武刀は心の中で補足する。

 

「やっぱり帰りたいか。まあ、当然だな」



 そう言うアルフィーは寂しそうな顔をしていた。

 それを見て、武刀はニヤついた笑みを浮かべる。

 

「え、何? 俺がいなくなるの寂しいの?」


「そう、だな。本音を言い合える者はあまりいないからな」


 アルフィーが本音を漏らすと、予想していたものとは違うものが返って来たことに武刀は驚いて慌てふためいた。

 

「へ!? あ、うん。あ、ありがとう」


「帰る? 元の国?」


 二人の話し合いが理解できない二人、その内の一人であるジブは尋ねた。

 

「そういえば話してなかったな。詳しい話は飯食ったあと、ということで良い?」


「分かった。食べればいいんだな?」


 そう言ったジブは急いで食べ始めた。

 それはもう、大食い選手のように。

 

 

 

 

 

「それで、武刀は別の世界の住人だと? まあ、魔術というものも使っていたし、言われてみればそうかもしれんな」


 四人は飯を食べ終えて部屋に戻った。

 そのあと、武刀とアルフィーはジブとストリアに説明した。

 

 ジブは納得した。

 そしてストリアは疑問に思った。


 なら、私達はどうなるの? と。

 それを武刀に聞いた。

 

「それは俺が決めていいことじゃない。自分で決める事だ。自分で決めて、自分で行動すればいい。俺はそう思う」


「そう……」


 ストリアは顔を伏せて答えた。

 彼女はベッドで座っているアルフィーとジブの向かい側の壁に背を預け、体育座りをしていた。

 顔を伏せたことで膝の間に隠れ、見えることはない。

 

 だが、その雰囲気でなんとなくだが理解はした。

 

 武刀は立って扉側の壁に背を預けていたが、ストリアの雰囲気を察して右に胡坐で座って左手をストリアの頭に乗せて、ポンポンと触れる。

 

「気にするな。ゆっくりと考えればいい。まだ時間はたっぷりあるから」


「うん」


 表情は顔が隠れて分からない。

 しかし、声から察するに嬉しそうに言っているのが分かった。

 

「こっちの事情を説明したことだし、俺もアルフィーに聞きたいことがあるんだ。冒険者ギルドでどんな話し合いがあった?」


「話し合い、といっても説明したあとに約束だな」


「約束、ね。それで依頼が達成したことだし、これを、ね」


 右手の親指と人差し指で丸を作り、お金のポーズをとる。

 

「ただ働きだろ?」


「え!?」


 あれだけ働いてただ働き。

 それを知って武刀は驚いて声を荒げる。

 

「冗談だ」


 武刀の顔を見たアルフィーが、面白そうに答えた。

 

「くそう」


 あっさりと騙されて武刀は悔しがる。


「ほら、これが今回の報酬だ」


 金の入った麻袋を渡された。


「ああ、ありがとう」


 武刀はそれを受け取り懐に仕舞った。

 

「ほれ、ジブの分だ」


「ありがとう」


 その間にアルフィーが横にいるジブに武刀が渡した麻袋を渡した。

 

「今回の報酬だが、宿泊代を払って四人分に分けている」


「四人? ストリアの分か?」


 アルフィーの言葉に武刀は疑問を感じた。

 今渡したのは二人。ストリアには渡してはいない。

 

「ああ、そうだ。だが、ストリアは人前で買えないからムトウの分に含んである」


「ああ、なるほど。了解です」


 スライムのストリアでは流石に人前には出られないか。

 

「ジブはゴブリンを倒したことで割り増ししてるし、武刀に至っては赤いゴブリンを倒したことでその分が含まれてる」


 アルフィーが今回の報酬の説明をした。

 

「そうなるとアルフィーの報酬が少なくなるよね?」


「構わんさ。私は何もしてないからな」


 ジブの質問にアルフィーが答えた。

 

「それで赤いゴブリンの話だが、倒したのはムトウだが建前では私になっている。いいな?」


「分かった。まあ、初心者があれを倒したというのは信じてくれんしな。それに……」


 妬まれる。

 冒険者になったばかりの者が、倒した、と言えば信じないし妬む者が必ずいる。

 しかし、アルフィーがいえば違う。

 

 彼女は熟練者で言っても納得できる。

 

「それは良かった。その赤いゴブリンの件でな。私は明後日から虱潰しにこの辺りで近くに隠れている他の魔物がいないか、探す羽目になった。だから、明日は休み。明後日は三人で行動してほしい。いいか?」


「了解」


「分かった」


「うん」


 三者三様に頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ