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七十九話

 雑魚の集団とその集まりのトップであるリーダーを倒す場合、倒し方としては二通り存在する。


 一つ、リーダーを先に倒す。

 

 メリットとしては一番強い相手を倒すことで、後は雑魚という楽な相手と変わる。

 デメリットとしては雑魚の攻撃が凄くめんどくさい。

 もしかしたら、それがミスを誘い大きな怪我を背負う可能性もある。

 

 二つ、雑魚を先に倒す。

 

 メリットとしては先に邪魔な雑魚を倒すことで、何にも邪魔されることなく強いリーダーを倒すことが出来る。

 デメリットとしてはリーダーを余所見するあまり思いも寄らない怪我をする可能性もある。

 

 結果として、どちらもめんどくさい、ということになる。

 ただしそれは、攻撃をされれば、という話である。

 

 

 

 

 

 目の前には緑色の普通ゴブリンが大勢、赤い変わったゴブリンが一匹いる。

 離れてはいるものの、この距離は近づけば一瞬として間合いに入る。

 

 それは武刀も同様であるが、わざわざ入る理由がない。

 

 既に強化魔術は発動してある。

 さらに、肉体強化魔法で身体を強くする。

 ならば、やることは一つ。

 投げるだけ。

 

 軸足となる右足を踏んばって右手で持った槍を垂直に上げて振り下し、投げた。

 

 ただ、投げるだけ。

 それならば前と変わらない。

 しかし今は違う。

 新しい魔術を二つ身に着けた。

 

「五月雨」


 槍に付与された魔術が発動した。

 投げ飛ばされた槍は一つ、二つ、三つ、四つ、と数を一瞬にして増していく。

 魔術と魔法により強化して投げられた槍は、まさに銃弾。

 それ以上の威力を誇る。

 

 障害物となる木を貫通し、粉砕し、ゴブリンの元に辿り着く。

 かなりの数の槍が地面に突き刺さり、それにより土煙が起こった。

 視界は土煙により奪われたが長い槍の石突きが見え、徐々に土煙が消えていく。

 

 槍はゴブリンを貫き、地面に突き刺さる。

 それは串刺しにされたようにも見える。

 その威力によりたった一撃でゴブリンは絶命する。

 五月雨の魔術でゴブリンのほとんどが死滅した。

 

 生き残っているのはたった一匹。

 赤いゴブリン。

 両手を顔の前で交差し、身を守っていた。

 太い腕、身体には槍が幾つも突き刺さっているがまだ生きていた。

 交差した腕を解き、そこから口が見えた。

 口からは肉をあっさり引き裂く牙が見え、冬でもないのに吐いた息が見えた。


 次に目が見えた。

 大きな目だ。

 そこからは憎悪を感じた。

 殺したい、殺したい、殺したい、と。

 全てを殺戮したい、全てを壊したいと思っているように感じた。

 

 その目が、こちらを見ている。

 殺してやる、と睨まれているように見えた。

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」


 赤いゴブリンが吠えた。

 絶叫に等しい。

 両足に力を込めた。

 赤く、太い足が筋肉によりさらに分厚く、太くなる。

 

 力を込めた足で、赤いゴブリンは飛んだ。

 今まで数だけが多く、弱かったゴブリンとは思えないほど高く飛んだ。

 両手を力強く握り、振り上げる。

 

 飛んだ赤いゴブリンは真上から落下してくる。

 重くなった体重により、早く落下する。

 だが、落下地点が分かっていれば躱す事はできる。

 

 武刀は身体を前に投げ飛ばして躱す。

 その直後、背後で地面を大砲が物を粉砕するような音が響いた。

 赤いゴブリンの今の音は無視し次の音に意識しつつ、投げ飛ばした身体を受け身を取って左手で地面をぶつけて軸にし、身体を半回転して赤いゴブリンに向き直り、顔を上げた。

 

 同時に、さっきよりかは小さい音が聞こえた。

 

 顔を上げて見えたものは、赤いゴブリンが落下した同時に振り下した手を地面に叩きつけて起きたクレーター。

 次に、こちらへと走って近づいて来る赤いゴブリン。

 

 相手は既に近づき、こちらはまだ身を投げて衝撃を殺して踏ん張っている状態。

 躱すことは不可能。

 ならば攻撃あるのみ。

 

 決まれば早かった。

 

「閃光ぉおお!!」


 左手、左足、右足で身体を支えて槍を持った右手で投げ飛ばした。

 

 投げた槍は白い光と化し、走って近づいていた赤いゴブリンの胸を貫いた。

 胸には大きな穴が開き、そこからは槍が突き刺さった木が見えた。

 

 赤いゴブリンは胸を貫かれても、身体は前に進む。

 ゆっくりと進み、右手が縋るように武刀に伸びて倒れた。

 

「はあ、はあ、はあ」

 

 死闘を終え、武刀は何度も深呼吸をする。

 張り巡らせた気を解き、投げたままの状態の身体から力が抜けて四つん這いとなる。

 

 武刀にとって、ギリギリの戦いだった。


 魔術回路にある枷がなければ、楽勝だった。

 しかし、ない。

 だからこそ分かる。

 今の自分に足りないものが。

魔術紹介のコーナー


 魔術:五月雨 効果:対象の数を増やす魔術。増える量は術者の裁量によって決まり、全て実体である。

 

 魔術:閃光 効果:放たれた瞬間光となり直進して穿つ。触れる直前で元に戻る。

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