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七十四話

投稿遅れました。すみません

 リザードマン三体を売った金は、武刀の酒代とこの町に入るために御者が払った三人分の金にほぼ消えた。

 

 その残った金はほんの僅か。

 それは全て宿代と食事代に消えた。

 たった二日だけしか、泊まれなかった。

 また、金が少ないためそんなに良い宿は泊まれなかった。

 

 宿屋はリザードマンを売った際に、安い宿屋を紹介してもらって、その宿屋を泊まることにした。

 そこは二階建ての宿屋で、武刀達が泊まる部屋は一階の入って三番目の部屋。

 

 宿の部屋は一部屋。二段ベッドが一つと机と椅子が一つずつのあまり大きくない部屋だった。

 宿屋を訪れた際には日が既に落ち、空はオレンジ色。

 今から金稼ぎのために魔物狩りに行ったとしても、夜になっているだろう。

 

 夜は魔物の時間。

 わざわざ夜に魔物を狩る人間は、物好きぐらいしかいない。

 その空いた時間は、お勉強タイムとなった。

 

 

 

 

 

「この国がシュトラドラッハ。私達がいたアザカ絶対王政で、貴族や王の力が強い。ここ、シュトラドラッハは立憲君主制となっているが、今のシュトラドラッハは新しくトップが変わったみたいだし、どうなるか分からんがな」


 そんなお話、聞きたくありません。

 なぜこんな辺鄙な場所で社会の勉強をしないといけないのか。

 泣きたい。

 

 二段ベッドの上にはジブがおり、死んだ目をしている。

 人化状態となり、ドラゴンが人になったような状態でベッドの柵に顔を乗せていた。

 その顔には生気とは呼べるものがなかった。

 

 椅子のほうにはアルフィーが座り、まるで家庭教師のように教えている。

 

 ベッドの向かいにはストリアがベッドとなり、その上には武刀が天井に顔を向けて口を開けていた。

 顔はジブのように生気がなく、口からは魂が抜けだそうとしていた。

 

 ストリアはベッドになっていても、聞き耳だけは立てていた。

 

「このシュトラドラッハはからアザカまで戻るには、二つの方法がある。一つは陸路。ただし、この方法は魔王のいる大陸を渡るため事実上不可能だ。もう一つは海路。私が使うのはこれだ」


 手を広げてひっくり返し、手の平を天井に向けて魔法は使う。

 手の平から火の線が蛇のようににょろにょろと動き、空中を登る。

 

 火の蛇は空中で図を描き、頭と尾が結びつく。

 それは凹の形となる。

 凹の左上の部分から右上の部分を一直線になぞる。

 

「この道を使う場合、お金が必要となる」


「お腹が……お腹が減ったよ……」


 久しぶりに頭をフル回転させた武刀は、急激に腹が空いて絞り出すように呟いた。

 

「お腹? そうだな」


 部屋にある窓から外を覗く。

 この宿に訪れた時には夕暮れ時であり、今は空が暗くなっていた。

 

「もう夜だし、ご飯にしようか」


「「よっしゃあ!」」


 アルフィーの提案に、武刀とジブは歓喜の声を上げた。

 彼らの行動は速かった。

 武刀はストリアを服の中に入れて立ち上がる。

 ジブは人に戻り、二段ベッドの上からそのまま床に飛び降りた。

 

 

 

 

 

 部屋から出て正面入り口に向かうと、こじんまりとした食堂となっている。

 料理のほうは宿代込みのため、料金が少ないこともあり食事の方はそれほど豪勢というわけではない。

 

 しかし、あまりお金がない者達にとっては食事というものを食べられるだけでもマシだった。

 時間も夕食の頃合いだということもあり、食堂には席が埋まりつつあった。

 

 また、ここの宿屋は料金が安いこともあり、いるのは若者、冒険者ギルドの紹介で来た新人が多かった。

 

「うーん。なんか違うな」


 スプーンを口に入れながら、何か物足りなさそうな感じに覚える。

 美味しいかというと城で食べたほうが美味しいし、前に訪れた村で食べた物よりここの方が美味しい。

 

 だが、それは順位をつけてるだけで本当に美味しい、という訳ではない。

 食べられる、という感じであった。

 

 パンを白いスープに浸し、柔らかくないパンを食べやすくする。

 

「そういえば」


 武刀がスープに浸したパンを口に入れた時、アルフィーが喋り出す。

 

「ストリアは食事とか食べないの?」


 それは素朴な疑問だった。

 ストリアは食事の時は、大抵武刀の中にいる。

 そのため、ご飯を食べているのはあまり見ていない。

 夕食を食べながら、ふと思ったのだ。

 

「私、お腹が減る、というの? 感じたことないな」


 周りに人がいるせいか大きな声では言わず、呟くようにストリアは言う。

 そのため、聞こえるのは武刀だけでありストリアの代わりに代弁した。

 

「お腹が減ることがないらしい」


 パンを口に飲み込みんで喋り、武刀も考える。

 この中で魔物や人外と呼べるものを人に変えた場合、知識があるのは武刀しかいない。

 

 スライム。

 ゲームでの役割は雑魚だったり、経験値が多かったり、倒すとお金を多く落としたり、物理に強かったり、色々の役割をこなしている。


 また、本には口がないことから触れて体内に飲み込み、溶かして栄養に変えたりする様子が描かれたりする。

 ただし、それは敵の場合であって味方であれば違う。

 

 スライムは触れた物を溶かして栄養にするが、今の武刀もそれに近い状態にある。

 隠すために服の内側に入れている。

 そのため、ストリアはは気づかない間に食事をしているのだ。

 

 ストリアが食べているものは、武刀が食べられても気にしないもの、汚れであったり古い角質であったり、まるでドクターフィッシュのような存在である。

 

 そのため、ストリアは武刀の中にいるときは常時食事している状態で、お腹が減ることがあまりないのだ。

 

「お腹が減ってないのならいいけど、減ったら教えてね」


「うん」


 ストリアが言い、武刀が代わりに頷く。

 二人が会話している間に、ジブはペロリと食べ終え、武刀に尋ねる。

 

「武刀は明日どうするの? 僕とアルフィーは一緒に魔物を倒してくるけど」


「そうだ、なあ」


 スープの器を持ち上げて飲み込みながら、考える。

 ジブと同じように、魔物を知りたいため倒したいという気持ちがある。

 しかし、今やるべきなのは自分でも分かっている。

 

 暴走魔法≪バーサーク≫に掛かったリザードマンと戦った時、あまり活躍することが出来なかった。

 ぶっちゃければ、役立たずだったのかもしれない。

 

 ならば、自分がやるべきことは一つ。

 

「槍に魔術回路を刻むよ」


「そう、分かったよ」


 ジブは武刀の気持ちを汲み、理由を聞かず頷いた。

 武刀が食事を食べ終えて少しして、アルフィーが食べ終わった。

 

 部屋に戻ると、また地獄の勉強が始った。

 

「お金を教えないと。ここはアザカじゃないから、シュトラドラッハのお金が必要。シュトラドラッハ金貨、シュトラドラッハ銀貨、シュトラドラッハ銅貨。他にも……」


「お願いだ。もう、やめてくれ」


 力尽きる寸前の武刀は、命乞いでもするように言う。

 その勉強は眠るまで続いた。

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