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六十七話

 門に向かった。

 森が抜ければ、街道に行くとすぐに町に辿り着くことが出来る。

 イリス達もそのルートを使った。

 

 門に辿り着くと、既に列が出来上がっていた。

 列は長く、ゆっくりと町の中に入って行く。

 

 消化が遅く、前に並んでいる者達を観察する。

 

 門には二種類の人間がいる。

 一つは武装した人間。

 その中には若い奴ら、子供もいる。

 男女どちらが多いと言えば男の方が多いが、女性が少ないという訳ではない。

 

 女性も少なからずいる。

 

 二つ目は商人。

 彼らの仕事を一つ言えば物を売ること。

 しかし、売るだけでは品物がなくなってしまう。

 

 そのため、彼らは別の町で品物を安く買い、違う町で買った品物を高く売る。

 

 そのため、商人は賊に狙われる。

 商人は金を払い、戦える人を雇って身の安全を買う。

 

 イリスはその二つだと考えていた。

 しかし、非力な女性がなるのはイリスは理由を考えられなかった。

 

 イリスは待っている間に、暇だから観察していた。

 しかし、それは列に並んでいる者達もそうであり、奇妙な服を着た者達を用心深く観察していた。

 

 武装はしておらず冒険者とは思えない。

 服が見た事ない代物だが、貴族だと考えても馬車はない。

 異様な集団に、冒険者達は用心深く見る者や、好奇心の眼差しを向けていた。

 

 それにイリス達は気づいていたが、気づかないふりをしていた。

 列が減り、自分達の番になった。

 近づくと門にいる兵士の会話が聞こえ、イリスは事前にある程度の事を周宇に伝え、周宇は無言で頷いた。

 

「次の者達、前へ」


 作戦会議が終わってすぐ、門にいる兵士が前に進むように言った。

 イリス達よりも前にいた者は、開かれた門の中に入って行く。

 門の中には建物があり、人が行き交っているのが見えた。

 

 前が空き、イリス達は前に移動する。

 一番前にイリスがおり、その後ろから少し間が空き、周宇やアリシア、アルフレッドと武刀の配下がいる。

 

「ここに来た用件は?」


 兵士が聞いてくるが、黙る。

 イリスは今、言葉が完全に認識できることに少しホッとしていた。

 

 普通、知らない国の言葉で喋られれば分からずに戸惑うが、言語が翻訳されて聞こえた。

 それは、ここに来る前に神から言語が翻訳される術式が組み込まれる、と聞いていたからだ。

 

 そのことは他の者に伝えてはいない。

 何故なら、必要がないからだ。

 

「おい、聞いてるか!」


 無言を貫くイリスに、兵士が声のトーンを下げる。

 それを聞けば臆病な者は怖がるが、イリスは特に何も感じなかった。

 

「ええ、聞こえてるわ」


 イリスはぶっきらぼうに返事し、両手を後ろで組んで合図を送った。

 合図を見た周宇は、小声で呟く。

 

「お願いします」


 主から願いに幻術使いの少女は願いを叶えるため、魔術を発動した。

 その範囲は前にいる兵士だけでなく、列全体を含んだ。

 

 彼らは一様に目がトロンと焦点があわっておらず、その間にイリス達は進んだ。

 イリス達は、町に入ることに成功した。

 入って直後、幻術は消えた。

 

「あれ? 俺は……」


 兵士がさっきまでの状況を思い出そうとする。


 さっき、目の前に人がいたように感じた。

 しかし、いない。

 いることが偽りで、いなかったのが本当のように感じる。

 そして考えること自体も馬鹿らしく感じてくる。

 

「次の者、前へ!」


 考えるのをやめて、兵士はいつも通りの仕事に戻った。

 そしていつしか、考えていたことすら忘れた。

 

 

 

 

 

「成功しましたね。これからどうします?」


 町に入って少し歩き、周宇が尋ねる。

 

「決まってるわ。一番偉い所に突っ込む」


「情報を得る、ということでいいんですか?」


「ええ。何事においても情報は大事だから」


 イリス達の目的は武刀の救出。

 救出対象の居場所が分からなければ、どうしようもない。

 そのため、情報が一番ありそうな場所へと向かう。

 

 ただし、それだけで情報が集まるとは思えない。

 だから、

 

「アリシア。裏から探って」


「言葉は通じるのかな~」


「さっき翻訳されてたから大丈夫」


 イリスはぶっきらぼうに伝えると、アリシアは気づいた。

 

「もしかして~翻訳されてたの知ってたの~。どうして教えてくれなかったの~?」


「なら、アリシアが話し合いをする?」


「「「……」」」


 尋ねると、返って来るのは沈黙だけだった。

 

「ほら、行って来い」


 沈黙が来るのを予測できていたイリスは、追い払うように右手を振る。


「行ってきま~す~」


 アリシアが両手を横に大きく広げ、全速力で裏路地に入って行くのが見えた。

 

「さて、こちらもやるとしましょう」


 アリシアが仕事をしているのだから、こちらもサボることは出来ない。

 それに、これから行うことを考えると、イリスは楽しくてたまらない。

 

 イリスもさっきのアリシアと同じ目をし、唇の隙間を舌で舐める。

感想を返信するのが遅れて、感想が消えていたのでここで返信させてもらいます。

読んでもらい、ありがとうございます。

このままひっそりと続けていきますので、よろしくお願いします。

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