六十六話
投稿が遅れました。
できるだけ水曜日に上げる努力はしますが、もしかしたら今回みたく遅れるかもしれません。
紅茶を飲み終え、イリス達は町に向かった。
時間短縮を図り、肉体強化魔術を使って森を走破した。
体感時間としてはそんなに一分程度だと思う。
その間に、化け物どもが襲ってきた。
二足歩行の豚だったり、少し大きい狼だったり、他にもいろんなものが襲ってきた。
それらは全て、一瞬にして屠られた。
「何これ~? 私達の場所じゃいないよね~」
先頭を走っていたアリシアが立ち止まり、右腕に纏わりつく血を周りに払いながら尋ねた。
アリシアの足元には、屠られた魔物の死骸と肉片が散らばていた。
「いえ、いましたよ」
追いついたヴァルが教えた。
「嘘~! どこに~!?」
「人とは別の次元に」
それを聞いたアリシアが、ああと納得したような頷いた。
アリシアも武刀の性癖を知っているからこそ、頷くことが出来た。
頷いたからこそ、もう一つの疑問が思いついた。
「あれ~? ということは~武刀君は別の世界に行けるの~?」
「まあ、そうなります。ただ、行くにも次元に行く道を使っているので、ここよりかは楽に行けますよ」
ヴァルが補足して教えた。
人が住む世界に、人外は生きていくのは困難である。
そのため、人が来ない森に次元の入口を作り、その入口を潜ることで次元に入ることが出来る。
問題はその次元の入口を捜す事と、入口に介入することだ。
人が次元の中に入らないよう細工はしてあるが、間違えで入ることがある。
武刀はそれを強制的に引き起こして、侵入する。
「武刀君の性癖ならしょうがないか~。さて、行こう~!」
右腕を突き上げ、まるで散歩でも行くように声を上げて進んだ。
少し遅れて、後ろにいた皆が追いついて来た。
「アリシア! 全てのゴミ共を殲滅しろ!」
後ろから追って来たイリスが、苦情を言う。
その割には、服や髪に乱れが何一つない。
「了解~。次はそうするよ~」
悪びれた顔をせず、いつも通りの笑顔で答えて動き出した。
色々なことがあって一分程度、森を抜けることができた。
「あれが町ね」
町は周りが壁で囲われている。
年季が経っているせいか、汚れている。
その壁もそれほど高くはない。
町の中に入る入口は見えており、門がある。
「どうやって入ろうか?」
周宇が門を見ながら呟く。
それは独り言だったが、聞こえたアリシアが答えた。
「それは正面から~」
「無理だと思いますよ。きっと見張りもいると思いますから」
アリシアの案を周宇はキッパリと否定する。
否定したのには、理由が存在するからだ。
「ああいう町には、見張りというものが存在します。入るには条件が存在すると思います」
「アリシア。魔術を使って門を見ろ」
周宇の意見を聞き、イリスはアリシアに命令する。
アリシアの血統魔術、肉体変化は身体の形を変えるだけのものではない。
素の性能を上昇することも出来る。
目は電子顕微鏡や望遠鏡のように、変化することも出来る。
イリスの命令により、アリシアは魔術を発動させる。
お腹にある魔術回路が赤く発光し、魔術回路は両目にまで伸びる。
それにより目は遠くまで見ることができ、門の様子を一部始終見ることが出来た。
門には武装した男が二人、壁の上には見張りはいない。
門に入ろうした人は武装した男達に何かを渡し、入って行くのが見えた。
それと、服装もやはり違う。
素材そのものが違うようで、服自体が違うように見える。
「門の人に何か渡してるよ~。あと、服も違う感じだから注目もされると思う~」
見た事をそのまま報告した。
「服、か。それは偉い人と思われれば問題はない」
イリスは顎に右手を添え、考える。
「問題は渡す物。考えられる物はお金。そうなると私達はお金を持ってない」
町に入るにしても、通貨がなければ生きていけない。
問題に直面したイリスは、裏技をすることにした。
「周宇!」
「なんです?」
「お前の配下にいるだろ? 幻術を使うの」
そこまで言えば、周宇もイリスの意図が読みとれた。
「分かりました。彼女を使って入りましょう」
即座に周宇は幻術を使う少女を呼び出した。
現れたのは、黒髪でおかっぱの可愛い少女だった。
「では、行きましょう」
周宇を先頭に、町に向かって歩き出した。




