六十三話
「全滅させた、でいいのか?」
ジブがリザードマンを倒したのを見て、武刀は呟く。
勿論、警戒は解いてない。
「いいと思うぞ。周りには魔物がいないようだ」
アルフィーの報告により武刀は安堵の息を漏らし、警戒を解く。
「そうか……」
内心、武刀は少し安心していた。
攻撃が全く効かない魔物を相手にしたくない。
もし体力が少なくて経験値の多い銀色の魔物だったら、喜々として探す。
しかし、リザードマンはそんな魔物じゃない。
頑丈な上に強かった。
そんな相手なら、もうプロレス技しかないと考えていた。
まあ、それをしなくていいのは良い事だ。
そもそも、肉弾戦はぶっちゃけると苦手だ。
遠い所から一方的に戦うのが好きだ。
「これどうする?」
斧を担いだジブが、リザードマンの死体を左手で指差す。
「回収しよう。素材になるから」
「了解」
ジブは空いた左手でリザードマンを掴み、地面を引きずりながら馬車へと向かう。
「これは?」
凍らされて氷の残骸となったリザードマンを、武刀は軽く蹴る。
「それは……使えないから放っておけ」
「了~解」
武刀もジブ同様にリザードマンを回収する。
回収できたのは三体だけ。
残りの五体は使い物にならないとアルフィーは判断し、置いていた。
もしこれが伝説級の魔物だったなら回収するのだが、生憎とリザードマン。
ただの雑魚だ。
そこが残念だ、とアルフィーは心の底から思っていた。
リザードマンを倒した武刀達は、その死体を馬車に回収して馬車の中で休憩することにした。
あの戦闘の後である。
少しの休憩が必要だ。
襲撃で周りの魔物がいなくなったみたいで、警戒はていない。
それでも念のため、アルフィーが精霊を使って警戒している。
武刀の向かいにアルフィーとジブがいる。
隣には、今まで鎧代わりとなっていたストリアがいる。
ストリアは膝枕をしてもらい、武刀は休んでいる。
武刀にとって、あのリザードマンは魔族であるスピア以上の相手であった。
どちらか強いのか云えばスピアだが、あの時は魔導書があった。
しかし、攻撃が効かない相手は武刀にとって久しぶりだ。
大抵なら戦うほど相手は疲労し、障壁が弱くなるからだ。
今ではそんなことが出来るのは、アルフレッドぐらいしかいない。
アルフレッドはただの変態だが、魔術師では五本の指に入る。
それと同等の硬さ持つ相手はいない。
もう戦いたくはない、という願望はある。
しかし、戦う前のアルフィーのあの変わりよう。
気になる。
そして、また戦いそうな予感がする。
今回はジブとアルフィーのお蔭で倒すことができた。
俺はただのお荷物にしかならなかった。
何かしらで力を付けなければ。
あとは、アルフィーから情報を得たい。
たしか、暴走魔法≪バーサーク≫と言っていたはずだ。
「アルフィーはあのリザードマンだっけか? あれは何が起きたんだ?」
「暴走魔法≪バーサーク≫で魔物が変わったんだ」
「変わった? 具体的にはどんな風に?」
「まずは性格が変わる。魔物は臆病だったり、冷静だったりする。しかし、暴走魔法≪バーサーク≫に掛かった魔物は全て好戦的になり、それ以外は考えられなくなる」
洗脳、か。
それは本当に怖いな。
北米大戦の影響か、洗脳に嫌な印象しかない。
「他には肉体がそのものが変わる。前よりも強靭に、頑丈に」
「だから槍が効かなかったのか。普通だったらどうなの?」
「あんなに強くはないな。ジブはどうだった? 魔物側の意見として」
「ん~……力加減が難しかったぐらいかな」
ジブは少し考えて言う。
「そういえば、ジブはドラゴンだったな」
アルフィーの独り言にジブは意味が分からず、首を傾げた。
ジブはドラゴン。
人とは違うからこそ、考える内容が違う。
圧倒的な強者であり、相手のことを考える必要がないのかもしれない。
「ムトウ」
アルフィーが真剣な顔をし、真剣な物言いをする。
「どうした?」
「私は、次の町に辿り着いたら一緒にいることはできなくなる」
「ハッ!? どうして!?」
武刀は身体を急いで起こし、驚く。
突然の言葉に、武刀は頭の中が真っ白になる。
ドッキリなのではないか。と思ってしまう。
「やることができた」
「それって、まさか……」
今までの会話の流れで、察しが付いてしまう。
「ああ、暴走魔法≪バーサーク≫を発動した者を見つける。それが私の新しいやることだ」
明日は祝日!!!!
ということで投稿します。
理由は、そういう気分なんです!!




