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六十二話

 アルフィーが呼び出したのは、氷の精霊だ。

 人型で、大人の女性と同じくらいの背丈。

 

 全てが真っ白で、周りには空気が一瞬で冷たくなって白い粒子が渦巻いている。

 髪は腰まで伸び、フロストと呼ばれた精霊は宙に浮いていた。

 

 目も白く、肌も白い。

 服も布切れのような物を纏い、大事な部分だけを隠している状態である。

 顔立ちは綺麗目だが、感情がないのか無表情だ。


「凍らせろ」


 リザードマンに向けた右手をひっくり返し、握って言う。

 

 フロストにより威力と範囲の上がった氷魔法により、真ん中にいたリザードマン、三体が氷の塊が一瞬で現れ、凍らされた。

 それはまるで、氷山の一角のように見える。

 

「おまけだ。ムトウは一体で十分だぞ」


「そりゃ、助かる!」


 クラウチングスタートのように構え、武刀は走り出す。

 それは助走をすることが意味であり、走ってから急停止しする。

 

 両足が滑り込み土煙が僅かに起こる。

 その事には一切目を暮れず、武刀は先頭にるリザードマンに槍を投げる。

 

 だが、効果はなかった。

 さっきと違って、助走をつけたのに。

 しかし違うことがもう一つ、存在する。

 それは、武刀の目的がさっきの倒すことではなく、注意を引くことだ。

 

 槍を掴んだリザードマンはさっきと同じように、放り捨てようとした。

 だが、それはできなかった。

 

 掴んだ槍が顔にぶつかったからだ。

 その正体は、武刀である。

 槍を投げてからリザードマンの方に進み、槍の石頭を蹴ったのだ。

 

 その武刀の視界に、他のリザードマンが動く姿を認識した。

 それは先頭から一つ後ろにいるリザードマンが、前にいるリザードマンが動かなくなり、左からでてきたのだ。

 

 そのリザードマンは武刀を認識し、殴りかかる。

 だが殴りかかろうとする前に武刀は既に動き、後ろに下がる。

 

 下がる方向はアルフィーの方ではなく、斜めに、だ。

 何故なら、アルフィーのほうに下がってしまっては彼女の視界にリザードマンが入らないからだ。

 

「時間稼ぎをありがとう」


 アルフィーは今まで魔法を発動するのに時間をかけ、それまで一生懸命前で戦っていた武刀にお礼を言った。

 

「どういたしまして」


 武刀は後ろに下がったことで僅かに態勢が崩れたが、それを戻して槍を転移で右手に戻す。

 

 顔を槍で突かれたリザードマンは妨害されたことに怒り、吠えた。

 

「GYAAAAッ!」


 だが、二体のリザードマンに待ち受けているのは地獄であった。

 

「跡形も残らず、いなくなれ!」


 アルフィーが氷魔法を発動した。

 リザードマンの周りの空気の温度が急に低下し、フロストと同じように空気が凍り付く。

 

 空気が凍り付き、リザードマンの身体も凍り付く。

 じわじわと身体の隅から凍り付き、リザードマンはそれに気づいて慌て、襲い掛かる。

 

 しかし、リザードマンが動くにつれて寒さは外側だけでなく中にまで伝わり、体温を奪っていく。

 更に動いたことでアルフィーが寒さを増すことで、一気に凍える。

 

 リザードマンはアルフィーに近付く前に身体全てが氷漬けになり、彫刻と変わる。

 その彫刻に、アルフィーは触れた。

 

 すると、触れた途端にリザードマンの彫刻は粉と変わり、風に運ばれた。

 それを見た武刀は、アルフィーが発動した魔法の恐ろしさに寒気がした。

 

 もしかしたら、寒気はアルフィーの魔法の影響かもしれないが。

 

 アルフィーが行った魔法は、周りの空気を凍らせて相手をジワジワと凍らて行く物だ。

 本来なら、相手の体力を奪い持久戦に持ち込んだりと、色々とやりようはある。

 

 しかし、アルフィーは行ったことは違う。

 途中までは同じく、ジワジワと凍らせた。

 リザードマンが動いた直後、一気に寒さが増してリザードマンは身体の仲間で冷たくなり、動けなくなった。

 

 その冷たさは今、アルフィーが見せてくれた。

 全てを氷と化し、それも、触れただけで崩れるくらいに脆く。

 

 恐ろしー……。

 

 アルフィーの強さを、改めて知った武刀であった。

 

「こっちは終わった。ジブは……」


 リザードマンとの戦いが終わり、アルフィーはジブを気にかけた。

 二体のリザードマンは消え、三体は氷漬け。

 残りの三体は、ジブが相手している。

 

 武刀も、ジブの方を向く。

 そこでは今、三体のリザードマン相手と戦っていた。

 

 

 

 

 

 ジブは現在、二つの強化魔術により肉体そのものを強化している。

 その状態で、ジブは斧を両手で持って横に振る。

 

 リザードマンが両手でその斧を受け止める。

 投げ槍では傷一つなかったリザードマンだが、ジブの斧により手の平に傷が付いた。

 

 ただし、その傷も大きなものではなく、小さい切り傷だ。

 あまり苦しまないリザードマンを見て、ジブは少し悩む。

 

 自分の人外状態から人状態になった場合、本来の力を出すことができない。

 何故なら、人だからだ。

 しかしそれを補うのが魔術。

 

 ジブは二つの強化魔術を発動しても、リザードマンに傷を少ししか付けれなかった。

 だが、それはジブの力加減によるものだ。

 

 まだ毛の生えた程度でしかない魔術師であるジブは、まだ力加減というものが分からなかった。

 本気でやれば強すぎて、弱ければあまり変化が見えない。

 

 だからこそ、ジブは最初は弱めに、徐々に強くしようと考えていた。

 

 次はもうちょっと強めに。

 

 強化魔術の出力を少し上げる。

 ジブは斧を掴んでいるリザードマンの両腕を蹴り上げる。

 両腕は蹴られた衝撃で真上に跳ね上がり、その衝撃で咄嗟に斧を離してしまう。

 

 手元に戻って来た斧をしっかりと持って左足を半歩前に出し、右足を軸にして斧を振り回して一周する。

 斧を掴まれたときに近付こうとしたリザードマンだが、即座に対応したジブの斧によって腹を叩かれ、そのまま無理矢理押し込む。

 

 その先には別のリザードマンがいて、それも巻き込んで回り、大きな氷塊に投げ飛ばす。

 二体のリザードマンが氷塊に叩き込まれ、リザードマンを中心に氷塊にヒビが入った。

 

 二体の近づいて来ていたリザードマンを撃退し、残り一体のリザードマンを見る。

 蹴られた腕は既に戻り、襲い掛かってきた。

 

 両腕を大きく上げ、鋭い爪を振り下そうとしていた。

 ジブは持っていた斧を地面に突き刺し、振り下ろされるリザードマンの両爪に触れる前に、リザードマンの手首を掴む。

 

 手首を掴まれ、リザードマンは振りほどこうと両腕を動かす。

 しかし、腕はジブによりビクとも動かなかった。

 

 本来のリザードマンなら、少女が出せるとは思えない力に驚いてしまう。

 だが、暴走魔法≪バーサーク≫により理性を失ったリザードマンは吠えることしかできなかった。

 

 目の前で咆哮をあげられ、ジブは掴んだリザードマンを振り回し、回りながら氷塊に叩きこまれてくぼみから這い出ようとした二体のリザードマンに狙いを定め、放り投げた。

 

 氷塊から出ようとした二体のリザードマンは、投げられて来るリザードマンに気づく事なく、ぶつかり、また氷塊に押し込まれる。

 

 一塊となった三体のリザードマンに、ジブは地面に突き刺した斧を拾い、肩に担いで走って近づく。

 リザードマン達は氷塊から離れようとするが、各々自分勝手に動くせいで離れることが出来なかった。

 

「イグニッション!」


 斧の魔術回路の一つを起動させる。

 ジブにとっては、まだ使ったことがない魔術。

 力の加減は分からないが、今までの戦いで既に学んだ。

 

 加減は必要ない。

 全力で倒す!

 

「ブレイクッ!」


 走るのをやめ、急停止する。

 地面を滑るように前に移動し、斧を横に薙ぐ。

 斧がリザードマンにぶつかり、魔術が発動する。

 

 一回目の衝撃がリザードマンの身体の奥にまで伝わる。

 その衝撃は氷塊の奥にまで伝わる。

 二回目の衝撃がリザードマンの身体全身に伝わる。

 氷塊に無数のヒビが走る。

 

 一回目に伝わった衝撃が戻り、三回目の衝撃となる。

 その衝撃によって氷塊は完全に崩れ、リザードマンもまた、身体の内部までも完全にぐちゃぐちゃとなった。

 

 氷塊は崩れ落ち、凍らされていた三体のリザードマンも残骸と化していた。

 ジブの魔術を喰らった三体リザードマンも、破損している部分はないものの、中がぐちゃぐちゃに掻き混ざられ、死んでいた。

忙しい期間がまだ過ぎてないのですが、ストックも少しはありますし週二更新しようかな、と考えてます。

曜日は水曜と土曜。また、投稿できない場合は翌日になると思います。これはストックがあるときだけなので、なくなり次第また週一になります。

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