六十話
投稿するのが遅れました。
本当にすみません。
次からはこんなことがないよう、気を付けます
「四精霊を同時に呼び出すエルフか。かなり強いな。やはり、ドラゴンの鱗を預かっただけはある。そう簡単にはいかないか」
場所は森。
木の上に乗り、観察する者がいた。
それはフードを被り、注意して目を凝らさなければ気づかないほどに見えず、また、見ていてもすぐに見逃してしまいそうになってしまう。
「相手は四属性のエルフ、あれは強い。四体同時に呼び出したのに、まだ余力を残している」
馬車から、ここは約五百メートルほど離れている。
しかし、目視できていた。
全員が識別できるほどに。
「男の方は……強いのか? 槍は魔法が付与された武器だろう。魔法は、水の槍と雨のように降った槍か。こちらも余力はまだ残してるだろうが、あの雨は発動までに少し時間がかかるようだから、無視していい。強さ的にはそれほどだろう」
下にいる奴らを見る。
今はまだ弱い。
けどほんの少し手を加えれば、化け物に変わる。
「馬車に乗っている女の方は斧を持って火の魔術を使っていたから、魔法戦士か。両手持ちの斧で力は強いらしいが、魔法はそこまで。厄介のはエルフだけか」
相手の情報を確認できた。
「目標はドラゴンの鱗。出来るとは思ってないけど、まあ、今回やれればそれまで」
魔法を発動した。
眠っていたそれは起き出し、身体が隆起し大きくなる。
身に纏っていた防具が身体に合わず、防具が弾け飛ぶ。
目は血走り、爪は鋭く、鱗は硬く、肉体は強靭に変わる。
「「「GAAAAAAAAAA」」」
それは一斉に吠える。
新しく生まれ変わったそれは、産声を上げるように。
「行って来い、使い捨てたち。精々相手の情報を晒して死ね」
吠える魔物に、蔑んだ目をしながら呟く。
「そう、分かった」
「また何か来るのか?」
アルフィーが何もない空間に向かって頷いていた。
それは襲撃の時にも合ったことで、アルフィーは緊張を解いていなかった。
「ああ、また襲撃だ」
さっきは雑魚を一掃した。
雑魚を一掃する術を見せたのだから、雑魚をまた抱いて来るとは思えない。
「数は?」
「八だ。一直線にこちらに来るようだ」
とある方向を指差しながら、アルフィーは言う。
そこは馬車の後ろ側で、左。
森があるほうだ。
しかし、さっきの魔術、天槍雷雨により辺りの森は残念なことになってしまっている。
森は葉が落ち、枝が根こそぎなくなっている木もある。
枯れた森、とも見える。
お蔭で、隠れる部分は減った。
「あっちからなら俺が先制しよう」
「ストリアはどんな感じだ?」
「今は無理だな。ばててる」
「そうか……」
アルフィーは、ストリアの魔術に期待していた。
しかし、出来ないことにガッカリはする。
「ごめんなさい」
その時、ストリアが謝った。
「いや、気にしないでくれ。ストリアは魔物を全て倒してくれた。次は私達の番だ」
アルフィーがフォローを入れつつ謝る。
「そうだな。ストリアが活躍したから、俺らもなんとかしないとな」
そのフォローに武刀も頷く。
あれがなければ、今もまだ戦っているだろう。
その恩には答えないと。
カッコイイ所を見せないと。
「ジブ。出番だぞー」
馬車で体育座りしているジブを呼ぶ。
呼ばれたジブは、犬が呼ばれたように、目をキラつかせて、お尻から犬の尻尾が生えて振っているように見えた。
彼女は少し小走りで近づいて来る。
付き合ったばかりの彼女が来るような感じに。
大きな斧を片手で持って。
それがまたアンバランス。
「何?」
ジブはわくわくを滲ませながら、上目遣いで聞いて来る。
それは可愛い。
しかし、武刀は思う。
これが人化状態であれば。
頭の中で、ジブの姿を入れ替える。
ああ、これはいい。
ご飯三杯いける。
「これはどうすればいいんだ?」
「僕に聞かないでよ。それで、何をするの?」
変な顔をする武刀に、アルフィーは指差してジブに聞くが答えられず、ジブもそれで落ち着くことができた。
「戦いだ。相手はさっきよりも強力だと思う。場所はあっちから」
さっきと同じように、アルフィーは説明する。
「迎撃?」
「そうだ」
ジブが敵の来る方を見る。
「なら来てるぞ。敵が」
「本当か! 魔物が来るのに、ムトウ!」
アルフィーが武刀の目を覚ませながら聞く。
「お! やばい。戦場のど真ん中で妄想してた」
頭の中で行われていた如何わしい妄想をしていた武刀は、アルフィーに起こされた。
「姿は分かるか?」
「分かるよ。人型でトカゲ、リザードマン? にしては大きい。成長したのかな?」
「リザードマンか? なら、いけ……」
魔物が目視できる範囲に入り、アルフィーにもその姿は見えた。
「あれは……」
アルフィーの身体が震えた。
リザードマンはそれはもう、リザードマンと呼べるものではなかった。
武器を持たず、代わりに鋭く、切れ味のある爪。
防具は身に着けず、代わりに強靭な肉体より強固になった鱗。
目は血走り、こちらに向かって走って来る。
「暴走魔法≪バーサーク≫? まさか、敵は暴走魔法を使ったのか!?」
アルフィーが初めて激情したのに、全員が驚いた。
今までとは、全く持って雰囲気が違っていた。




