表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/126

六話

 あれから、その日に色々と起こりすぎたせいもあり、ぐっすりと眠れた。

 

 さすがの俺も、別の世界に移動したのは始めてであり、こんなことが起きるとは予想だにしてなかった。

 翌日、俺らは城で働く人達が食べる食堂の隅に集まり、朝食を取った。

 

 みんなは既にグループができてあるらしく、仲の良いグループで集まって、食べ始めた。

 俺は勿論、転校してばっかり、こんな見た目もあり、一人で食べた。

 

 見れば、俺と同じように一人で食べている奴もいた。

 それは普通の奴だ。

 至って普通。特徴が全くない男。

 

 しいて言うなら、特徴がないのが特徴、とでもいうような。

 彼には覚えがある。

 能力を調べるとき、王様に出来損ない、みたいなことを言われた少年だ。

 

 能力はたしか、短距離移動ショート・ワープだ。

 物を瞬時に移動できる能力だが、軽い物しか移動できない、という情報があったらしい。

 

 それで俺は彼の時、同じ仲間がいたと思ってホッコリしたんだと思う。

 

 

 それが俺には、どうして一人で食べているのか分からなかった。

 

 印象が良ければ、普通は会話をしたりするはずだ。

 もしかしたら、それに失敗したのかも、と食べながら考えていた。

 

 食事を終えた俺たちに待ち受けていたのは、座学、お勉強だった。

 

 場所は城の中にある広場、というより、特訓場である。

 俺たちが来るのを見越して、作り出したのだと言う。

 

 そのため、日を遮る物が何もないため、影のある木陰で講義を受ける。

 ここも食堂の時と同様に、グループに纏まって地べたに座っていた。

 

 だが、食堂で俺と同じように一人で食べていた少年が前に座り、その少年の元に一人の少女が近寄ってきているのが見えた。

 

 彼女は黒髪でふんわりと丸みを帯びて、肩に届くぐらい。

 パッチリとした大きな黒目で、このクラスの中で一番可愛いらしい少女だった。

 

 彼女が一直線に、一人で座る少年に向かって歩いていると、後ろから彼女の右腕を掴んで引き留めた。

 それは、新堂だった。

 

「沙織。何をする気だ?」


 新堂が険しい顔をしていた。

 声が小さく、離れていれば聞き取れにかったが、近かったお蔭で聞き取れることができた。

 

「私は裕一君と……」


「その男には近づくなと言ったろ? もうやめとけって」


「けど……」


「行くぞ」

 

 新堂が沙織と呼ばれる少女を引き戻し、後ろに戻って行く。

 その様子を一部始終を見ながら、

 

 ふ~ん。あの少女は沙織。あれは裕一、か。

 どうして一人なのかも、なんとなく察しがつくな。

 

 去って行く沙織の姿を横目で見て、前にいる裕一の姿を見る。

 すると、視界の中にクラスの目の前に立つ青髪の少女がいた。

 

「ええ~私が講師であり、司書のアルフィー・シスタードです。よろしく」


 青髪の幼い少女が、皆の目の前に立ち、頭を下げる。

 

 講師のアルフィーは、髪が肩に掛かるぐらいあり、目は碧色。

 幼い見た目もあって、顔も幼い、幼女のようで可愛いらしい。

 だけど、幼女というには少し大人びている気がする。

 

 なんというか、幼女特有の天真爛漫、明るさといものがない。

 これでは、幼女失格だと思う。うん。

 

 アルフィーが現れてから、今まで喋っていた生徒達が黙る。

 その時、

 

「あなたが先生なの?」


 一番前にいた、健康的な小麦色の肌をしたスポーツ少女が質問した。

 

「疑問か? まあ、よく言われることだからな、この見た目だし。私の身体が幼いのには、一つの理由がある。それは」


 髪で隠れていた左耳を晒す。

 左耳は人の耳のように丸みが帯びておらず、妖精のように尖っていた。


「私が、エルフだからだ」


「「「うおおおおおおぉぉぉぉッッ!!!」」」


 男子たち、少数の女子が、歓声を上げる。

 それは俺も同様で、歓声まではあげないものの、驚かされた。

 

 エルフ、この世界にもいるんだ。

 すげー。だからロリッ子なのか。

 見たことはあるし、手持ちに二人いるから欲しくは、ないな。

 けど、人外。

 

 やっぱりいいな。人外。


 色々な人間がエルフについても思いながら、

 

「あの、私達を何を教わるんですか?」


 一番前に座っている結城先生が手を上げる。

 歓声は突如おさまり、最後まで聞いてアルフィーが頷き、

 

「私が教えるのは、君たちの世界にはなかったかもしれないけど、魔法だ」


 その言葉に、生徒達が興奮し、思わず声を上げる。

 魔法は子供の時には誰だって、魔法を使う自分、を想像したりするはずだ。

 まあ、昔の俺だったら興奮してたと思う。

 

 けど、今は魔術師。その業界の人間のため、平常を保つことが出来た。

 それに、俺たちの世界にも昔は魔法と呼ばれるのは存在してたから、この世界の魔法は興味があった。

 

「魔法というのには、必要な物がある。それはマナだ。魔法や君たちが扱う神の力の一端だって、マナを必要とする。マナは心の中にあり、こういう風にすると、勝手にでたりする」


 両手を身体の前に出し、手の平を平行にして一定の距離を保って離す。

 すると、手の平の間からぽわぽわした緑色の球体が生まれる。

 

「これがマナ。みんな、やってみるといい」


 アルフィーに促され、みんながアルフィーと同じように手の平を向かい合わせにする。

 

 まあ、成功するでしょ。

 俺も軽い気持ちでやってみるが、一向にマナと呼ばれる物は生まれなかった。

 

 周りを見ていると、他のクラスメイト達は上手くいっていた。

 

「ふむ。君、あとで、全てが終わってから私の元に来てくれ。待っておくから」

 

 皆の様子を、マナが生まれたかを見て、アルフィーは失敗した俺に指を指す。

 

「はい……」

 

 クラスメイトの視線が一点に、俺の元にアツ松。

 俺だけ失敗して、悔しかった。

 魔術師であるのに、他は一般人なのに。

 成功すると思ってた。だけど、失敗して悔しかった。

 

「じゃあ、次のステージだ。この魔法は身体強化と呼ばれる、肉体を強化する魔法だ。やり方としては、マナを身体全てに行き渡るようにイメージすればいい」

 

 アルフィーは目を瞑った。

 すると、足元に魔法陣が生まれて魔法が発動する。

 落ち込んでいた俺はその魔法、正確には魔法陣を見て、固まった。

 

 なぜなら、

 

 どうして? あれは似すぎてる。強化魔法に。どうして?

 多少は違っているが、強化魔法にそっくりだ。

 

 そもそも、強化魔術は、身体だけじゃなくて、物の自体の性能をワンランク上にするもの。

 

 身体だけとは教わらないはずだ。

 いや、それは魔術になってから分かったこと、か。

 どういうことだ?

 

 この世界の三回も見た魔法が、俺のいた世界にそっくり過ぎて、もう何が何だか分からなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ