五十話
ストリアはスライムだ。
人状態でも人になることが出来ず、人化状態にしかならない。
また、スライムという特性上、形を自由に変えることができるため、自身の身体を変えて服ににしている。
そのため、彼女は服をいらない。
しかし、ストリアは人状態にならないといっても、人化状態。
人外を無理矢理人にした状態である。
それは人外としての特徴を持ちながらも、人としての必要な機能を持っている。
ということは、だ。
とある変態が喜ぶのである。
ストリアはスライムだが、服を着ていた。
その服は、アルフィーとジブが朝に買いに行った時に一緒に買ったものである。
彼女は元は普通の魔物。
そこら辺にいるような、酷く言えば雑魚である。
長く生きていないため、感情といえるものがなく、武刀により変えられてから感情を得たため、感情表現が乏しい。
彼女は服を選ぶ以前に、好き嫌いというものがない。
そのためストリアが着ている服は、アルフィーとジブが選んだ服だ。
彼女らなりに可愛げのある服を選んだが、ここは田舎。
そういうのがあまりなく、少し明るめの色の服を着ていた。
その服は襟が少し大きく、肩が少し見えていた。
少し大胆な服にも関わらず、ストリアは感情表現が乏しいせいで無表情のように見える。
それがまた恥ずかしい姿なのに平気と装っている、と妄想すると少しグッとくるものがある。
これが頬を赤くすると、さらにグット! だが望みはするまい。
「ハア、ハア、ハア」
ただ、それだけでも武刀は荒い息をしてエロイ手付きをする。
また、目付きがヤバいくらいに本気だ。
「さっきとは全然違うな」
「私が人化状態だった時だと想像すると……」
アルフィー、ジブが全く違う考えで答える。
アルフィーは少し呆れ、ジブは青ざめている。
「よし! ふう、触るぞ」
荒い息をおさえるために、深呼吸をしながら言う。
「うん」
ストリアは背後で何が起きている分からず、普通に答える。
ただ、正面で見ていてもストリアは平然としていることが予測できる。
武刀の右手が、ストリアの後ろ首に触れる。
スライム特有のグニュッとしためり込むような感触。
右手がストリアの肌に触れる。
それがまた涼しく、心地よい。
人とは全然違う。
「ああ、凄く良い」
ストリアの感触に感動した武刀は、呟く。
これが別のスライムだと、感触や肌触りが違う。
「うわぁ。変態だ……」
アルフィーの呟きに、武刀は正気に戻った。
「よ、よーし。やるぞー」
右手に意識を研ぎ澄ませる。
伝わって来る。ストリアの感触が。
それを振り払い、さらに奥深くにあるものを集中する。
「うっ。熱い」
魔術回路が起動し、ストリアは呟く。
それは今まで初めて、ストリアが人化になって初めてのことだ。
ストリアの身体にある魔術回路が赤くなる。
魔術は……ジブみたいに多くはないな。
あるのは水、ぐらいか?
えらく少ないな。
まあ、スライムの身体は斬撃や打撃は効かないしな。
防御系は必要ないか。
強化も単体で戦わせるわけじゃないし。
「ストリアの魔術は水系だ」
「水……」
初めての自分の魔術に、ストリアは少し嬉しそうに呟く。
「ストリア。一緒に練習をしに行こうよ」
「うん」
「ストップ!」
ストリアがアルフィーを誘って少し離れようとしている所を、武刀が止めた。
「どうしたの?」
「ジブ。悪いが武器を見せてくれ」
「武器? 構わないよ。はい」
持っていた斧を武刀に差し出す。
「何をするの?」
「斧の魔術回路を見るだけ」
「あるの? 斧にも」
「ああ。使って見せようか?」
「お願い!」
ジブはこくん、と頷いた。




