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四十四話

 村人に教えてもらった村長の家に向かった。

 家に近付くと、外からでも家の中から騒ぎ声が聞こえた。

 アルフィーが扉をノックし、開くのを待つ。

 

 ここに来る直前、アルフィーは言っていた。

 

「私が全てやるから、あなた達は黙っていて」

 

 目がいつも以上に本気だったため、従うことにした。

 なんせ、逆らったあとが怖い。

 

 ノックから少し待つと、中から近づいて来る音が聞こえ、扉が開いた。

 出てきたのは、老人だった。

 

 髪の毛が頭天辺に一本だけ生えている。

 風が吹くとその髪の毛が揺れる。

 腰が悪いようで前屈姿勢で、足だけでは立つことができずに右手で杖を持ち、使っていた。

 

「これは旅人の方。どうしました? 私達は重要な話し合いがありまして。話は後でよろしいでしょうか?」


 茶色の服を着ている村長は、断ろうとした。


「知っています。竜、ですよね?」


 だが、アルフィーの言葉で村長は押し留まった。

 

「お、おお。そうなのじゃ。これからどうしようか考えとった所なのじゃ」


 藁にも縋る思いだった村長は、竜のことを知っているアルフィー、他に二名を中に入れた。

 

 

 

 

 

 その日、村はいつも通り、いつもの日常だった。

 しかし、その日常はあっさりと崩れ落ちた。

 

 村の子供が、空に指刺した。

 子供は他の子供と遊んでいて、ふっとしたことでそれに気づいた。

 

 指差した先に皆の目線が言った。

 そこには、大きな白煙広がっていた。

 白煙を突き抜けて落下していくきたのは、黒い竜だった。

 

 大きな翼を広げた姿を見れば、遠目からでもドラゴンだということが分かる。

 ドラゴンはそのあと、ひっくり返って近くの森に落ちていくのが見えた。

 

 それからというもの、この村では村長の家に集まってこれからの事を話し合っていた。

 ここから逃げるか、見に行くか。

 

 逃げる案は、自身の身を護るためだ。

 見に行く案は、ドラゴンが落ちてからかなりの時間が経っている。

 そのため、現状がどうなっているのかを知るため、見に行こう、という案があった。

 

 この案は、ドラゴンがいなくなっているのではないか、という希望的観測に縋っているからこそ、この案がでた。

 

 二つの案で話し合いで怒号が飛び交っていた時、とある者達が訪れた。


「私達はドラゴンが落ち場所に訪れました」


 アルフィーは平然と嘘を付く。

 

 訪れた? 何言ってんの? 一緒にいたんでしょ。

 

 その後ろにいる武刀は目を瞑ったまま、心の中で呟く。

 目を瞑っているのは、表情が分かりやすいためそれを少しでも防ぐためである。

 

 彼の心の中では暗示のようにずっと、私は仏、と念じ続けていた。

 

 現在、この狭い村長の家の中では、四つの勢力に分かれている。

 中央には長方形の机があり、前後に一つずつ、左右に二つの椅子がある。

 中央奥にいるのは村長。

 村長の役割は司会た。

 

 中央奥、玄関側にいるのはアルフィー。

 その後ろの右に武刀、左にジブが立っている。

 

 机の右側にいるのは見に行く案の村人達がいる。

 彼らは堂々としている。

 見た感じでは、魔物が出てきても彼らが戦ってきたのだろう、と思うぐらいに傷の跡が目立つ。

 

 左側にいるのが逃げる案の村人達。

 彼らはどこか、臆病のように見えた。

 言い方を変えれば慎重派、と言えるが弱気とでも取れる。

 

「それで、ドラゴンが落ちた場所に行ったというのは本当か?」


 見に行く派の奥にいる一番厳つい男が質問した。

 

「ええ、本当です」


 アルフィーは平然と言う。

 

「嘘じゃないのか?」


 厳つい男は見た目のわりに、慎重のようだ。

 見た目だけで判断してはいけない、ということだ。

 

 彼が疑うのも無理はない。

 アルフィーは見た目は幼女。

 嘘ではないのかと疑ってしまう。

 

「私はこんな見た目でも冒険者です。カードを見ますか?」


 懐からカードを取り出し、アルフィーは村長にカードを見せる。

 カードを見た村長は次に、逃げる派に、次に見に行く派に渡し、アルフィーに返される。

 

「確かに冒険者であった。実力もある。疑って申し訳なかった」


 厳つい男が頭を下げた。

 この話し合いをスムーズにするためには、自身が冒険者だと、実力者であると知ってもらうためにアルフィーは冒険者カードを見せた。

 

「話を続けます。私達がドラゴンが落ちた場所に行った時には、既にドラゴンはいませんでした」


「それは本当か」


 机を大きく叩きつけ、その反動で厳つい男は声を荒げて立ち上がる。

 

「はい、本当です。もういませんでした」


 横にいまーす。横にいますよー。

 

 武刀は言いはしない。だが、心の中で呟く。

 

「その証拠にこれを」


 アルフィーは懐からジブの鱗を村長に渡した。

 

「これは?」


「ドラゴンの鱗です。これが落ちた場所に何個もありました。それをお譲りします。その引き換えに、準備が整うまでここに滞在させてください」


 村人の何人かが、目を見開いて驚いている。


「どうしてそういう話になる!」


 

 厳つい男が噛みついて来る。

 アルフィーの言ったことは、金は払わんが鱗をやる。だから滞在させろ、ということだ。

 滞在することは食事代が三人分、それからベッドのシーツを変えたり部屋を掃除したりと、維持にもお金が掛かる。

 

「ドラゴンの鱗を売ると、どれだけのお金になると知ってる?」


「いや、知らない」


「売れば今の生活が百年以上は続けられますよ」


 アルフィーは彼らにも分かりやすく、鱗の価値を伝えた。

 そのおかげで、村人の何人かが驚いて止まっている。

 それ以外の者は、知っているようで平然としていた。

 

「ただ、もし売り払う場合はそれだけのお金が手に入るということで盗賊に狙われる確率も高まる、ということは頭に入れてください」


 フラグかな?


 盗賊に狙われる、という言葉で大金が手に入ると考えていた村人は、落ち着いた。

 近場には大金のなる実がある。

 しかし、盗賊に襲われて全てを奪われれば意味がなくなってしまうのだ。

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