四十一話
ちょっと長くなったので、二つに分けてます
地面と激突し、武刀は目を開けた。
身体に痛みはない。
ぶつかった衝撃は、ストリアが遮断したらしい。
周りは森の中。
人が近くにいないだけでも、被害がないのは嬉しい。
巨大な竜が墜落した衝撃で、大きなクレーターが出来ていた。
辺りには、黒い欠片のような物が転がっていた。
武刀は動こうとしても、ジブラリアに掴まれて身動きがとれない。
身体が動かないので仕方なく、首を左に動かしてアルフィーが無事か確認する。
アルフィーは目を瞑っていて、身動き一つしていない。
俺と同じように、ストリアの膜に包まれていたのだから無事なはずだ。多分、気を失っているんだろう。
「ストリア。無事か?」
アルフィーの無事か確認し、次にストリアの無事を確認する。
ストリアがいるおかげで、俺たちは生き残ることが出来た。
言い方を変えれば、二人分の衝撃がストリアが肩代わりしてくれたのだ。
無事かどうか、気になってしまう。
「無事です」
ストリアの声が耳元で聞こえる。
「そうか。分かった」
彼女の声が聞こえて、無事だということが分かり、安堵の息を吐く。
「ストリア。すまないが身体から離れてくれ」
言うと、身体の外側にある薄い膜が消えていく。
「ありがとう。助かった、ストリア」
横にいるストリアの方を向いて聞くと、彼女は頷いた。
ストリアの無事か分かり、次に。
「ジブラリア。無事か!?」
大きくなっているせいで、いつもより大きい声を出した。
すると、ジブラリアの首が動いて大きな目がこちらを覗く。
「すまないが、人化に戻ってくれ」
こくり、と首が動くとジブラリアの身体から白煙が周りに噴出した。
「うわっ!」
視界が白く塗りつぶされ、武刀は身体を握られていたが、それが消えると落下し、思わず声をあげてしまった。
身体が落下したが、すぐに着地した。
しかし、着地した際の痛みはなく、柔らかい弾力は伝わった。
「グヘッ」
下から、カエルが潰されたような声が聞こえた。
周りにあった白煙はすぐに消え、見えるようになった。
見えるようになったことで、下を向いた。
そこには、ジブラリア、ストリアの順で下敷きになっていた。
「えっと、大丈夫?」
恐る恐る尋ねると、
「大丈夫」
ストリアは無表情で答える。
そのせいで、本当に大丈夫なのか疑問に思ってしまう。
それに、ストリアの下にいるジブラリアは大丈夫じゃなさそうだ。
なんせ、武刀の横にはアルフィーがいる。
ジブラリアには三人分の体重も加わっているのだ。
苦しそうな顔を見て、武刀はすぐに離れた。
が、アルフィーは気絶しているのか目を瞑って身動き一つ取っていない。
アルフィーの服を掴んで持ち上げ、顔が同じ高さに持ち上げる。
その間にジブラリアは無理矢理身体を起きる。
しかし、ジブはストリアが剥がれたことで裸になっていた。
「ストリア。ジブの服になってくれ」
武刀の言葉にストリアは反応ないが、下にいるジブの方に沈んで身体を包み、服の形に変わる。
「起きろー」
棒読みのように言いながら、アルフィーの頬を軽く引っ叩く。
それでも起きないので、違う頬を引っ叩く。
「起きろー」
そしてまた、引っ叩く。
起きるまで引っ叩く。
それが功を奏し、アルフィーに反応があった。
「んん……」
瞼が少し動き、閉じた口から僅かに声が零れた。
「起きたか」
武刀はゆっくりとアルフィーを掴んだ腕を下し、地面に下してから離す。
「さて、と」
立ち上がり、ジブラリアの元に近付く。
「無事か?」
「無事といえば無事だけど、久しぶりに痛かったよ」
のほほんとした顔をし、ジブラリアは後頭部を右手で掻く。
そう言うわりには平気な顔をしているよね。
武刀は思いはするが口には出さず、グッと喉元で堪える。
「そう、なのか?」
「そうだぞ!」
疑問の声に、ジブラリアは少し怒った表情をする。
「強く殴られた感じだ」
地面に衝突するのが殴られる感じですか……。ドラゴンすげー。
ジブラリアの言葉に少し呆れてしまった。
「なら大丈夫そうだな。飛べない理由、分かる?」
頭の中に一つの答えは思い浮かぶが、それが武刀にはどうしてか分からなかった。
「飛ぶのには魔法を使うの。それが今回だけどうして出来なかったんだー」
魔法を使って飛行する。なら、白が飛べなかったのは以前は魔法を使ってたから? そういや、白は神社に奉納されたりするすご~く古い龍だったな。なら魔法を使うのも納得。
ジブラリアの話を半分聞き、武刀は考え始めた。
「聞いてる?」
「聞いてる聞いてる」
考え耽ているのがばれてしまい、ジブラリアが詰問するが軽く受け流し、また考え込む。
魔法が使えたとしても、魔術は使えない。のか? 分からん。ただ、今分かっていることは一つ。魔術と魔法を併用して同時に扱うことはできないこと。武器の魔術回路を使えば魔術は発動するが、肉体の魔術は発動しない、か。
「あーーーーーー!!!!」
一つの事実を知った武刀は両手で頭を掴んで、頭を振り回す。
「だ、大丈夫?」
突然狂った様子を見せる武刀にジブラリアは驚き、次になんとかしようと戸惑った様子を見せる。
それでも、武刀はジブラリアの様子に気づいていない。
魔術と魔法が同時に発動できない。ということは、だ。俺の目的が叶えれないじゃないかッア!
さらにまた、武刀は頭は激しく振る。
そのせいで、ジブラリアがまた驚いている。
魔術と魔法が同時に発動できれば、より強くなれたのに! 魔術と魔法の二重強化を夢見たのに!
ぐるんぐるん振った頭を、武刀は急停止させる。
まあいい。魔術と魔法、どちらかを選べと言われたら魔術を使おう。魔術が使えないそれまでは、魔法で代用するとしよう。




