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四十話

 空気が火で熱され、肌が焼けるように感じる。

 吸う空気も熱く干からび、内側から肺が燃えるように熱い。

 

 周りでは同業者の魔術師達が火達磨となり、もがき苦しんでいる。

 その理由は、上空から無数に降り注ぐ巨大な火球によるものだ。

 

 真っ直ぐと視線の先にはゴーレムが横一列に並び、両腕を上に掲げて火球を空に放っている。

 土のゴーレムの足と足の間には術者である、アメリカ人がいる。

 

 人形が……。

 

 彼らはとある短剣により、普通の人間から無理矢理魔術師に変えられた存在。

 洗脳の魔術により操られ人形と化した彼らは、ただ人を殺す魔術師に変わり果てていた。

 

 武刀は両手を空から降って来る火球に向ける。

 彼が握っている物、それは銃だった。

 二つのハンドガンを握り、交互に引き金を引く。

 

 銃口からは何も飛び出さない。

 だが、火球は次々と消えていく。

 武刀が握っている物は銃ではなく、銃の形をした魔術触媒。

 

 銃口はあるが弾丸は飛び出さない。

 だが、役割がある。

 それは目標を正確に魔術で狙い打つこと。

 

 火球を消したのは、氷の魔術によってだ。

 次に狙う物は、ゴーレム。

 二つの銃口はゴーレムを狙う。

 照準を定め、同時に引き金を引く。

 次に放たれたのは氷の魔術ではなく、火の魔術。

 

 銃口から僅か先から、紅蓮の赤い光がゴーレムに放たれる。

 紅蓮の光はゴーレムに直撃し、一瞬にして消えてなくなり、触れた部分は溶岩のようになっている。

 

 だが、足元の地面から土を補給しゴーレムは元通り、瞬時に修復されていく。

 

 元に戻ったゴーレムを見て、舌打ちをする。

 

 あのゴーレムはやはり修復するか。

 

 与えた損傷を修復するのを見て、魔術を切り替える。

 火の魔術から、氷の魔術に。

 

 引き金を引こうとして。

 

「起きろ!」


 その一声で、妄想の世界から現実に戻された。

 

 

 

 

 

 崩壊する迷宮から転移し、武刀、アルフィー、ジブラリア、ストリアの四人? は命からがら逃げ出した。

 そして現れたのは、空の上でした。

 重力に引かれて落下されるが分かった途端、武刀は現実というしがらみが開放されるため、妄想の世界に入った。

 

 しかし、アルフィーにより現実の世界に引き戻された。

 

「どうするの、これ!!」


 アルフィーは切羽詰まった顔をして叫ぶ。

 

 一度、真下を見る。

 徐々に迫る地面を見て、悟った顔をした武刀はもう一度、アルフィーに向いた。

 

「諦めよう」


「早すぎ! もうちょっと考えて!」


 優しい声で言う武刀に、アルフィーは遂に涙目になり始めた。

 

「いや、流石に無理だよ。もう一度考えてみてよ」


 現在の手持ちは槍ぐらいだ。

 前使ってた本があればまだなんとか……出来ないがなんとなるかもしれない。

 死ぬ可能性の方が高いが。

 そんな状況だからこそ、武刀は諦めていた。

 

 その二人の会話を傍観していたジブラリアが、口を開いた。

 

「僕が元の姿になればどうかな?」


「それだ!」


 アルフィーが勢いよく、ジブラリアの方を振り向く。

 

「お願い!」


「分かった」


 ジブラリアは頷いた。

 元の身体に戻ろうと一点に集中する。

 だが、ジブラリアは戻ろうとせずに武刀の方を見た。

 

「どうすれば戻れるのかな?」


 武刀がジブラリアの姿を変えたのだから、彼の方を見るのは当たり前だ。

 ジブラリアに遅れて、アルフィーが武刀の方を見る。

 

「なんの用件だ?」


「ジブラリアを元の姿にしたいの」


「そんなの簡単だ。前の姿に戻りたい、と思うながらその姿を思い浮かべればいい」


「やってみる」


 ジブラリアは頷き、目を瞑る。

 すると、ジブラリアから白い煙が噴き出して三人を包み込んだ。

 

 視界が煙に阻まれて何も見えないでいると、煙から見える太く黒い物が近付き、間近で開く。

 

 それが手の形をしていることに気づいたと時には、掴まれた。

 落下によりすぐに煙から抜け出し、その掴んだ正体が分かった。

 

 ジブラリアだった。

 大きくなったジブラリアだが、そのせいで今まで服代わりとなっていたストリアが弾けた。

 そのストリアはジブラリアの右手を掴んでいた。

 

 彼女はその大きな両手、左手でアルフィーを、右手で武刀とストリアを握った。

 身体近くに両手を引き寄せ、翼を上下に動かした。

 

 しかし、落下速度は全く落ちない。

 

「どうして!?」


 アルフィーが声を上げた。

 それは武刀も同じ気持ちだった。

 ドラゴンとは、空を飛ぶ生物、だというのが一般的だ。

 

 ジブラリアが自分から願い出たことから、彼女が飛べることは分かる。

 なのに、この絶対に飛ばなければいけない状況で飛ぶことができない。

 

 そういえば、白もそんなことがあったけ。

 彼女も元は龍で人になった当初は、空を飛べたのに飛べなかった。

 あのときは、まだ名前を決めてないせいで飛べなかった。

 

 …………そういえば、ジブラリアも名前はあるけど名付けという行為はしてなかったなー。

 もしかして、それが原因かな?

 

 武刀が思考している時、ジブラリアは行動していた。

 ジブラリアは身体を宙返りし、背を地面に向ける。

 

「ジブラリア!? まさか自分を犠牲に!?」

 

 アルフィーが自身を犠牲に守ろうとする、ジブラリアの行動に気づいた。

 武刀もそれに気づいたが、焦り始めた。

 地面との距離が近いのもある。

 が、このまま地面と衝突すれば、ドラゴンのジブラリアは無事かもしれないが、俺とアルフィーはぶつかった衝撃でただではすまない。

 

「アルフィー!」


 武刀がアルフィーに左手を伸ばす。

 ジブラリアが両手を身体に近付けたからこそ、手と手が取り合うほどに近かった。

 

 彼女は武刀の手に気づいて咄嗟に右手を伸ばし、アルフィーが武刀の手を握った。

 

「ストリア。頼む」


 武刀の声に反応し、ストリアは武刀を包み込み、それはアルフィーと手をつなぐ腕にまで伸びる。

 

「ちょっ!? なにこれ!」


 ストリアがアルフィーの右腕にまで伸び、彼女が戸惑っている間に包み込んだ。

 二人の外側にストリアという名の薄い膜が出来上がった。

 

 アルフィーは落下の衝撃に耐えるため、目を閉じた。

 そして、ジブラリアは地面にぶつかった。

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