四話
昨日投稿出来なかったので、今日は二回投稿します。
その一回目
魔法が発動し、目の前が白く塗りつぶされた。
そのせいで何も見えず、見えるまでに時間がかなり掛かったように感じる。
その長い時間味わい、徐々に白い景色が薄れ、見えるようになってきた。
気づいた時に横になっていて、そこは建物の中だった。
だけど、教室だったり、体育館のような、鉄や木で出来られた物ではない。
どちらかというと、レンガや石のような部類の空間の中にいた。
ここはどこだ?
起き上がり、辺りを見渡す。
周りには同じようにクラスメイトが寝ている。
目を覚ました奴も、何人かいる。
そして、俺たちを中心にして外側、囲うように武装した兵士がいる。
それに気づいて、ポケットに手を伸ばし、気づいた。
そういえば、枷をしてたんだ。
ポケットからナイフの感触で、そのことに気づいた。
ゆっくりとポケットから手を離し、状況を確認する。
儀式か?
そうなると厄介だな。
こっちはナイフ。それも傷つけることができない。
抵抗することができないな。
その間に起きたクラスメイトが、横になっているクラスメイトが起こしていて、全員起き上がった。
彼らは目の前の状況、武装した兵士に取り囲まれていることに、怯えている。
今まで平和な世界で暮らしてたんだ。
怯える、怖がるのは当たり前だ。
俺はまあ、怯えたりとかしないな。
そもそも、それよりも怖い事、死にかけることなんてザラだったし。
クラスメイトに恐怖が伝播する中、取り囲まんでいた兵士の一部が二つに分かれ、隙間ができる。
そこから、ドレスを着た少女が現れた。
装飾の施された綺麗な白いドレス、宝石のような青い目、金髪でウェーブが掛かっており、化粧で偽った可愛さではなく純粋な可愛さ、お人形がそのまま人になった可愛らしくも、可憐な少女。
そんな少女がここにいた。
彼女を一目見た、クラスメイト達、男女問わずに見惚れていた。
そして俺もまた、可愛いな~、とは思ったがそれだけしか思わなかった。
「どうもみなさん。私はこの城の姫。ミリヤです。私があなたたがをここに呼び出しました」
「呼び出した? それはどういうことだ?」
クラスメイトの中から男、透き通るような美男子、イケメンが前にでて、答えた。
イケメンを見るだけで、憎悪が湧きあがるのは何故だろう?
「私達は今、困難に立たされているんです。そのため私は、渋々あなた方を助けてもらうために、呼び出しました」
「その困難というのは?」
「この大陸の一番端、遠くに人を襲う魔族がいて、それを統べる魔王と呼ばれる者がいます。その魔王が今私達を襲い、戦争の状態になっています」
魔王、サタンかな?
あれを呼び出した馬鹿がいたな~。
呼び出した瞬間殺されて魂喰われたけど、あれを撃退するの、かなり苦労したな~。
そしてクラスメイト達は、戦争という言葉に怯えていた。
今の会話を聞けば、誰だって何をしていいか、察しがついてしまう。
「その戦争に、生徒達にやらせるつもりですか!」
結城先生がイケメンの横に立つ。
「はい。ですが、魔王を倒さなければ元の世界に帰れないのです」
ミリヤが涙を流しながら、悲しそうに言う。
それが俺には、演技のようにしか見えなかった。
俺の心が穢れている証拠だ。
「そんな……」
結城先生が驚きのあまり呆然とし、他のクラスメイトも言葉を失っている。
「皆さんの気持ちは重々承知です。だけど、私達も後悔する暇がないのです。国で禁忌とされる勇者召喚を行うほどに」
「勇者、召喚?」
立ち尽くしていたクラスメイト達が、その言葉により耳を傾ける。
ゲームのおかげか、勇者とは何か、誰だって分かってしまう。
だからこそ、それが事実だということを願っていた。
「はい。勇者召喚とは、神から力の一端を授けられた者たちを呼び出す儀式のことです」
「力の一端、とはどうやって調べるのですか?」
イケメンが凄く笑顔だった。
クラスメイト達も、さっきまでの不安な表情ではなく、活気に溢れた表情だった。
なんせ、戦争するときに無力ではなく、才能があるのだから。
それも、神の力の一端、というお墨付き。
「ついてきてください。調べる場所までお連れします」
ミリヤが頭を下げ、背中を向けて離れていく。
その後を追うように、クラスメイト、兵士もついていく。
そして俺も、最後尾を歩く。
勇者召喚、ね~。おもしろ~い。
なんだよ、戦争に行くって。
こいつら馬鹿かよ。姫様が言いたいことって、私達の兵士が失うの嫌だから、適当にかっぱらって力与えて、兵器にしよう、ということじゃねえか。
誘拐じゃないか。
はあ~、めんどくさいことに巻き込まれたな~。
心の中でため息を吐いていると、辿り着いた。
そこは王宮だった。
目の前、遠くに玉座に座ったデブ、王様がいる。
ミリヤが王様の元に近付き、頭を下げる。
同時に、兵士たちが跪き、遅れてクラスメイト達も、俺もそれに見習って跪く。
「よくぞ参った、勇者たちよ。私達は君を歓迎しよう」
王様の野太い大きな声が、辺りに響く。
「ミリヤ、後は任せる」
「はい」
王様がミリヤに全てを放り投げた。
ミリヤが頭を上げ、こちらを向く。
「例の物をお願いします」
兵士達が、クッションに乗せられた水晶が置いてある台を、ミリヤの前に持ってくる。
「これは、あなた方に授けられた神の力を調べるための物です。この水晶に手をかざせば、その力が分かります。一人ずつやってみてください」
クラスメイトの中にいる一番先頭にいたイケメンが、初めに手をかざした。
すると、水晶に見た事ない文字が表示された。
だけど、知らない文字であるはずなのに、その意味が分かってしまう。
新堂悠馬
あのイケメンの名前か。
能力? 無敵の剣戟? これが神の力の一端、か。
なんか凄いな。
そうなると、俺も貰っているわけか。
一人一人、ゆっくりと調査し続け、俺の出番になった。
水晶に手をかざし、表示されたのを見る。
阿崎武刀
能力、なし。
あれれ?
「これは!」
俺と同じく、ミリヤも驚いている。
だって、俺も能力欲しいじゃん。
男の子だもん。欲しいよ。
なのに、俺だけ仲間はずれ、酷くない?
「どうした?」
今までにないミリヤの様子に、王様が不審に思って声をかける。
「その、彼の能力がなし、と表示されたものですから」
「隠れている、ということではないのか?」
「いえ、この水晶にはその隠された能力も表示されます」
「そうなると、この子は……」
王様は無能、という言葉を呑み込む。
そして、俺は、どうして能力がなし、なのか、心当たりがあった。
そういや俺、耐性をガン上げしてたな~。
まさか、それで俺に能力なし、ということなのかな?
けど、バフは無効化しないし。
となると、何か裏があるのか。
それとも、俺にその容量がなかったか。
どっちだろう?
その裏で、
「この子はどうする?」
「ないといっても、勇者であることは変わりありません」
「そうか。お主に任せよう」
「はい」
考えている間に、武刀の身柄が決まった。