36話
神とは、私達の世界では概念的な存在である。
この世界とは違う高位次元に存在し、いつもこちらを見ている。
そんな神は暇を持て余してしまうらしく、時々人に乗り移ったりすることがある。
それを悪用し、とある呪い(まじない)、魔法とよべるものを使い、人の身体に神を堕とし、力だけを奪い、その人は神に近い力を扱うことができ、それを兵器として利用した。
神から兵器に早変わりしたが、無理矢理堕ちて悪用される神は、人の身体から離れようとするがそれが出来ない。
それは、人の身体に見えない魔術の鎖が巻かれ、離れることが出来ない。
その鎖を破壊する魔術を、縛殺、と言い、その魔術は人によって異なったりする。
神と戦う上でこの魔術は必須であり、もし神と戦えば勝率はゼロに近い。
余談ではあるが、神話に出てくる化け物達もこの世界に存在しているが、人目に付かない場所にゲートを作り、その中で暮らしている。
人に住む場所を失われた彼らは、必然的に食べる物が変わり身体を維持するために必要なエネルギーを、人間から分けてもらい生活しいている。
そのときに怒ったことは、人間側は覚えていない。
アリシアは神に魔術、縛殺を使った。
が、効果はなかった。
もし成功すれば、老人の姿に戻っていた。
しかし、今回は成功しなかった。
ということは、その理由は一つしか考えられなかった。
だからアリシアは叫んだ。
解放するのではなく、倒す、と。
それは倒せる。
勝機があるということだ。
なにせ、今戦っている神は人の器に堕ちた神ではなく、人が神になったものだ。
人は神の次元に入ることは出来ず、立ち入ることすらできない。
だからこそ、神の次元に入ることが出来ない、偽りの神には勝てる。
それに、勝算はある。
一つ目はユーミルによる神殺しの魔術。
二つ目はアルフレッドによる魔術。
彼の魔術により、全ての相手が行う攻撃はアルフレッドに当たる。
三つ目はアリシアの魔術。
彼の魔術は幾つもの神殺しの魔術回路を扱えるため、神と戦闘をする上では心強い。
四つ目はフェンの存在。
彼女はフェンリル。別名、神喰狼。神を喰らう狼、とも呼ばれている。
爪や牙に触れただけでも神には絶大な痛みを引き起こす。
この編成は、神と戦う上ではとてつもない強さを発揮することが出来る。
アリシアの言葉により、アルフレッドは動き出した。
イリスの元に向かって。
「何?」
彼女は周宇が用意した椅子に腰かけ、紅茶を飲みながらきつく問いかける。
「あの、参加しないのかい?」
アルフレッドはアリシアの言葉でも、動こうとしないイリスを見てここに向かった。
イリスの魔術は、鞭で触れた魔術を自分の手足のように扱えることが出来る。
それは、神殺しの魔術を自分なりにアレンジすることが出来る、ということだ。
なのに、彼女は動こうとしない。
だからアルフレッドは赴いた。
「私は手を下さないと言った。だから参加しない。一度言った言葉を変える気はしない」
彼女はいつもそうだ。
一度言った言葉を絶対にやり遂げる。
その性格のせいで、間違えてしまう。
だけど、その性格だからこそ部下からは信頼されているのだと思う。
イリスは続けて言う。
「それに、アリシアの言った言葉が本当ならあのデカブツは本物の神ではないんでしょ? それなら戦いの行方は目に見えている」
彼女はそういうと、もう一度紅茶を飲んで飲み終わった紅茶を机に置く。
「おかわり」
紅茶のポッドを持っていた周宇の部下である女性が、イリスが飲んでいたカップに紅茶を注ぐ。
イリスから目を離し、アルフレッドは次に周宇を見つめる。
彼もまたイリス同様、紅茶を飲んで楽しんでいる。
「周宇君も参加しないのかい? 君の配下ならば、神を制圧することができるだろう?」
「そうかもしれませんね。ですが、生憎私は彼女達に戦ってもらいたくはありません。傷つきますしね。まあ、彼女達は私が傷つくことを恐れて杏氏が勝手に連れてくるんですが。それに、北米大戦のときにアリシアは戦わずに永遠と犯し、犯されてたでしょう? 働いて貰わないと、あの戦いの割が合いません」
「そう……」
彼の言ったことは頷くことが出来る。
あの最終決戦は本当に骨が折れた。
そう言われてしまうと、言う言葉がなくなる。
次に目を向けるのは、学生服を来た金髪の外国人少女と緑色の髪をしたツインテールの幼い少女。
彼女達はお菓子を頬張りながら、談笑している。
よくみれば、近くに周宇の配下の幼い少女が話の輪に加わっている。
彼女達には何も話すことはできない。
ここにいるのは武刀君を救出するためであり、彼女達は力がある。
だが、何分相手との相性が悪すぎる。
場所が悪すぎる。
そのため、彼女達は戦うことができない。
さっきまでもういたもう一人女性は、少し離れた場所でうつ伏せになってごつい狙撃銃で狙っているのが見える。
「アルフレッドは参加しないのですか?」
唐突に周宇に聞かれた。
そんなの、答えは既に決まっている。
「もちろん! 参加するに決まっているじゃないか」
だって、
「神ではなかろうと、普通の人よりも強いからね。一杯攻撃を喰らって、絶頂してくるよ。じゃ!」
手を上げて、戦闘して場所に走って向かう。
その後ろ姿を眺めながら、
「あれはいつも平常運転ねー」
イリスが紅茶を啜りながら呟く。
「それを言うなら貴方もじゃないですか。女王様」
「私があの状態になるには、血統魔術を使っていると気付いたらなってるの。いつでも、というわけではないのよね」
そう言いながらも彼女は紅茶を啜りながら、アルフレッドと一緒にいるときを思い出す。
彼といるとき、いつも殴って蹴ってをし、いつしか楽しんでしまう。
毒されているのだろうか、とイリスは考えてしまった。
明日、明後日は朝昼と用事があるので、投稿は夕方と夜になる予定です。




