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三話

登場してほし人外、もしくは人外娘がいれば、感想で教えてください

「今日は、転校生を紹介します」


 教室から、女性の声が聞こえてくる。

 続いて、中から生徒の喋り声が聞こえてくる。

 

 ついさっき、職員室で顔合わせをした。

 結城ゆうき陽菜ひなと言う、女性の教師だ。

 

 去年入ったばかりの新人さんで、歳も若い。

 見た目で、二十代前半に見えた。

 おっとりとした女性で、喋り方もゆっくり、ぽわぽわした人だった。

 

 それ以上に、胸が大きかったの印象的だ。

 まあ、それを見たって欲情しないんだが。

 

「入ってくださ~い」


 目の前の扉を開け、中に入って行く。

 今回のために、眼鏡を着け、髪をボサボサ、暗そうに見えるよう、イメチェンしてる。

 お蔭で、皆は話すのをやめた。

 これで、誰からも話しかけられないはずだ。

 気にも止めない、はずだ。

 

「えっと、阿崎武刀、と言います。よろしくお願いします」


 喋り方もハキハキと、元気にするのではなく、ちょっと暗め、やるきなさそうに挨拶をする。

 

 そのせいで、クラスメイトは話すのを完全にやめた。

 

「あ、阿崎君の席は窓側の一番奥ですよ~」


 静まり返った教室に、焦った結城先生が少し声を大きくして空いている席を指差す。

 音のない教室に、結城先生の声だけがはっきりと聞こえる。

 

 空いた席に座り、横に鞄を置く。

 自己紹介が終わって、結城先生は皆に今日の行事だったり注意事項を説明する。

 

 それを右耳から左耳に受け流しながら、考え込む。

 このクラスは、三十人いる。

 英雄候補は、この三十人の中にいる。

 

 それを思うと、吐きたくなる。

 めんどくさい。

 まあ、やるしかないのだが。寝言を言う暇なんかない。

 

 まずやるべきことは、このクラス、全員の名前を覚えること。

 どうしてそんなことをしなくちゃないのか。

 

 憶えることは苦手なのに……。

 次にやるべきことは、全員の行動パターンを把握。

 これで分かるか、というと分からない。

 一番手っ取り早いのは、危険を味わせて目覚めさせればいい。

 

 だが、そうなるとこっちに牙を剥く。

 それじゃあ駄目なんだ。

 目覚める前じゃないと。

 

 この任務、時間がいるな。

 

 遠い目をして、空を眺める。

 

「起立!」


 女生徒の声が聞こえ、遅れて椅子の動く音が聞こえて、生徒達がゾロゾロと立ち上がる。

 それに気づいて、気だるげにに立ち上がる。

 ああ、早く学校終わらないかな。

 

「礼」


 やる気なく、頭を下げる。

 朝礼が終わって、一時間目の授業が始まるまでにクラスメイト達は友達と話し始める。

 

 会話を耳に入れながら、頬杖を着いて外を見ながら、考える。

 任務するには、放課後が一番やりやすいよな~。

 

 学校が終わったという解放感から、色々とやりそうだし。

 それをいうなら、昼休みでも本性を現す奴もいるし、動き出すのは昼から、かな。

 

 それまで、名前だったり、特徴だったり覚えるとしようかな。

 

「あ、あの」


 近くで女性の声が聞こえた。

 目だけを動かし、本当に俺に話しかけているのかを、確認する。

 だって、勘違いしたら恥ずかしいし。

 

 その結果、こっちに顔を向けているのが分かった。

 顔を向けると、そこには文学少女のような女性がいた。

 

 黒髪で三つ編み、眼鏡をかけている。

 暗そうな印象がある。

 

「お昼休み、この学校を案内をしようと思うんですけど」


 可愛い。

 暗そうな印象があるせいか、見た目がマイナスになっている。

 もう少し明るくなれば、可愛いと思う。

 残念だな~。

 

「いいよ」


 彼女の顔を見ながら、否定する。

 頭を空っぽに、右から左に受け流しながら聞き、本音を言う。

 

「で、でも」


「そっちも、何か用事とか、したい事あるでしょ? 俺は大丈夫だからいいよ」


 もう話したくない、と思わせるようにそっぽを向き、窓を見る。

 

「うん、分かった」


 彼女はそう言って、離れていく。

 極力、人とは関わりたくない。覚えるのがめんどくさいから。

 なのに、こんな仕事を受ける。

 それは矛盾してるけど、やる人がいないからやるしかない。

 

 四時間目まで授業が終わった。

 一言いえば、詰まらなかった。

 暇だったからケータイを弄ったり、お昼寝をしたりして過ごした。

 

 お昼休みになり、お昼ご飯の時間になった。

 学校での、一番楽しみな時間だ。

 友達もいないので、一人で食う。

 

 傍から見れば、一人食べているのを見て、何とも思わない。

 だって、興味そのものがないから考えないし。

 

 で、俺はもう一人が慣れすぎてなんとも思わない。

 そもそも、我慢して一緒に食べたりするのは、逆に苦痛だし。

 

 鞄の中に手を突っ込み、弁当箱を取り出す。

 蓋を開けて中身を見ると、見事に茶色、高カロリーの食い物ばかりだ。

 

 歳を取れば身体に悪いかもしれないけど、成長期の高校生からしたら逆に物足りないぐらい。

 

 この弁当は、あの子たちが一生懸命に作ってくれたものだ。

 当分会えないのことを伝えると、弁当を豪華にしてくれた。

 

 いつも愛妻弁当だったけど、当分食べられないことを実感しながら、噛み締めながら食べた。

 

 五時間目の授業は、担任の結城先生の授業だった。

 今までの授業よりも、面白かった。

 

 授業が面白い、というよりも結城先生がドジだから、次はどんな失敗をするか楽しみにしながら、見守っていた。

 

 見るだけで、心が浄化されるような感じだ。

 そのせいか、ちょっと油断していた。

 

 魔術に似た何かが発動した気配を感じた。

 それは、魔術とちょっと違う。

 その違いが何かは分からないが。

 

 足元に魔法陣が現れ、ゆっくりと回っている。

 それはこのクラス、全員の足元に一個ずつ、現れている。

 

 それに気づいたクラスメイトが慌てて、動揺している。

 中には、笑顔の奴が数人いるが、それは無視する。

 

 魔法陣の出現からの発動のタイムラグがあり、その僅かな時間で目視で調べる。

 なんだこの魔術は?

 見たことない?

 

 いや、似てる、のか?

 どこかで見た、そうか、式が昔のやつと似てる。これは、のろ……。

 

 魔法が発動し、クラスにいる全員は忽然とその世界から消えた。

人外娘の登場は、少し遅いのであしからず

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