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二十九話

 阿崎武刀との連絡が取れなくなり、一ヶ月が経った。

 彼は英雄候補を捜しに、高校に潜入した。

 そして、連絡がつかなくなった。

 勿論、探索もした。

 だが、見つからず、彼のいたクラスそのものが、なかった存在になっていた。

 

 普通の人間なら、気づかなかったことだろう。

 だが、魔術師はこのことが異常に感じた。

 なんせ、テレビにも流れることはなかったのだ。

 

 それで日本に住む魔術師達は、探った。

 その結果、武刀が転入したクラスに魔法陣があった。

 魔法陣は魔術とは少し違う部分はあるが、転移魔法陣だということが分かった。

 

 そのことを魔術極東本部の本部長に報告した。

 阿崎武刀は魔術師として、五本の指に入るほどの実力だ。

 その彼が為す術、転移されたことを知って、自分達では手が余ると考え、とある者達を呼んだ。

 

 それは、武刀と同じ五本の指に並ぶ魔術師だ。

 その彼ら、彼女らは今、とある会議室に集まっていた。

 会議室には、四人の男女が椅子に座っていた。

 

「えーでは、武刀を救出しましょうの会議を始めます。拍手!」


 会議室にいた血のようなストレートの赤い髪をした、長髪の女性が周りにいるやる気のない者たちに命令する。

 

 赤髪の女性は男達が振り向くような綺麗な美貌で、微笑めば男達は頬を赤くなるような、聖女のようでもあった。

 

 命令され、男二人がやる気のない拍手をし、もう一人の女性、武刀の補佐であるヴァルが普通に拍手をする。

 三人は拍手をした。が、残りの一人が拍手をしなかった。

 

「お前も拍手をしろ! 豚がァッ!」


 聖女のような顔が一瞬で鬼に変わり、右手で握り拳を作り、振り下ろす。

 すると、

 

「ああ゛~。いい゛~」


 殴った所から、男の気持ち悪い嬌声が聞こえる。

 

「ああ、どうしてこんな所に集まってまで男の嬌声を聞かないといけないんでしょう」


 うんざりとした顔で、少し顔の細い男がため息を吐く。

 彼は黒髪で髪先は肩にぎりぎり触れないくらい。

 目が線のように見え、いつも笑っているのが特徴だ。

 

「しょうがないよ~。今回は重要だからね~」


 彼とは反対に、笑顔の者がいる。

 透き通るような銀色の髪で肩甲骨まで伸びて、中性的な顔立ち。

 少し高い声。

 美少女のようにも、美少年のようにも見える。

 だが、男だ。性別上は。

 

「さて、話し合いの続きをします」


 赤髪の美女は元に戻り、会議の続きを始めた。

 彼女の名はイリス・ミュラー。

 イギリスの魔術師だ。

 

「早く始めましょう。あんまり時間は残されていませんし」


 不敵な笑みを浮かべるのは彼の名は、王周宇。

 中国の魔術師だ。

 

「そうだね~。早く終わりたいし、本題に入ろうよ~」


 能天気に喋る彼の名は、アリシア・シトラット。

 アメリカの魔術師だ。

 

 さらにもう一人、魔術師がいる。

 イリスの下、椅子の代わりになり頬を赤くさせて、荒く息をしている男がいる。

 

 少し長く伸ばしている金髪。

 黙っていれば女性が赤くなるほどの男。

 けど今は、ただの変態。

 この男の名は、アルフレッド・テトラ。

 フランスの魔術師だ。

 

 最後にもう一人。

 日本の魔術師、阿崎武刀の代理としてヴァルが座っている。

 

 ヴァルは、この会議には参加することはあまりない。

 それでも彼らとは面識があるし、主の武刀から彼らのことを聞かされている。

 

 この人たちが、五本の指に入る魔術師。そして、主と同じ変態。

 

 日本に集まった四人の変態な魔術師と一人の従者が、作戦会議を始めました。

 

「まず、日本の魔術師達が集めた情報を伝えます」


 ヴァルが机に置いてあった書類を手に取って、見ながら喋る。

 

「魔法陣は今まで見た事ないものだった、という話でした」


「だった。過去形ということは、既に何か分かっているということですか?」


 周宇は不思議そうな顔をしていた。

 

「はい」


 ヴァルは頷いた。

 

「書物を見て確認した所、大昔の、所謂魔法だった頃の魔法陣でした」


「魔法といえば僕や周宇君じゃなくて、そちらの二人が詳しいよね~」


 アリシアが笑いながら、一ヶ所を見ながら呑気に言う。

 そこには、イリスとアルフレッドがいる。

 なぜなら、魔法の原点は欧州にあるのだから。

 

「そうだけど、私の国の魔術師がやったと言いたいの?」


「まっさか~」


 イリスがアリシアを睨み、アリシアを軽く受け流す。

 一触即発の状況である。

 途端に空気が重くなり、ヴァルは寒気がして緊張する。

 

 もしトップの魔術師同士が戦いを始めた場合、それは国絡みになり、魔術師同士の戦争に変わる。

 

 ヴァルが緊張していると、イリスは深いため息を吐いた。

 すると、重かった空気がなくなった。

 

「まあ、私がトップである以上そんな馬鹿なことをしたアホがどうなるか、分かっていると思うし」


 イリスがとても綺麗な笑みを浮かべる。

 但し、その笑みの意味が分かっているととても寒くなる。

 

「それに、私の方よりもこのクソ豚のほうが確立高いと思うの?」


 イリスがアルフレッドの身体を握り、抓る。

 

「アア゛ー。イイ゛~」


 気持ち悪い嬌声をアルフレッドが声に出す。

 

「うるさい!」


 イリスがっまた、アルフレッドを殴る。

 女性ならば、本気で殴っても男性にはほぼ効かない。

 だが、魔術師である。

 肉体を強化した一撃ならば、男性を昏倒させることができる。

 それを普通に、何の躊躇なく、手加減せずに殴る。

 

 アルフレッドは殴られてまた気持ち悪い声を上げて、イリスを支えきれず傾いた。

 

「傾くなゴミが!」


 椅子が傾くと、またもその椅子を殴り、声を上げる。

 そしてまた声を上げて殴り、椅子が傾いて殴る、とループしていく。

 

「あれはほっといて~、魔法陣の転移場所はどこに設定されたの~」


 イリスとアルフレッドの声をBGMに、アリシアは話をした。

 

「それが、分からないんです。この世界には設定されていないようで」


「う~ん。世界大戦がやっと終わったと思ったらまた戦いの匂い、いいね~。周宇君もそう思わない~?」


「ん?」


 アリシアが周宇に話を振ると、周宇は茶を飲みながら本を読んでいた。

 

「そうですね」


 本から目を離さず周宇は答える。

 

「なら」


 アリシアが両手を合わせ、パンッ、という音が響く。

 

「一度その魔法陣の場所に行ってみようか~。いいよね~?」


 アルフレッドとイリスに話を振る。

 

「いいわよ。フフフフフフフ」


 ずっと殴っていたせいか、イリスは頬を赤くさせ、妖艶に微笑んでいる。

 

「そういうことで、集合は今日の夜にしよう~。色々と準備があるし~、ヴァルちゃん達も五人ほど連れておいで~。枷のパスワードも忘れちゃ駄目だよ~」


「はい」


「それじゃ~」


 一拍置いて。

 

「解散!」


 会議は終了した。

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