二十七話
下に降りる扉に向かっていると、突然橋が揺れ始めた。
揺れに耐えきれず、武刀とアルフィーは両手両膝を橋に着けた。
ジブラリアは仁王立ちのまま維持し、上を見ている。
「崩れている? アイツ、この空間ごと消す気なのか?」
「ちょ! それって!」
「どういうこと?」
「橋が崩れる、いや、空間が崩れることだから、ここそのものが消える、ということだ」
「それって、かなり大事じゃない!」
事態の重大さをやっと理解することができたアルフィーは、慌て始めた。
「どうしよう? どうしよう?」
「落ち着け! 慌てたら解決するものも解決しないぞ!」
「なら、ここから抜け出す方法があるのか?」
「……」
首を真横に向けて、アルフィーから目線を逸らす。
「ないんじゃん!」
「しょうがないでしょうが。魔術も使えないんだし! あの野郎、絶対殺す。具体的には女にして奴隷にしてそれから、それから、……愛するしかないのか?」
「人じゃないなら、誰でもいいのか!?」
「二人とも。馬鹿なことをする暇はないと思うよ」
揺れが更に酷くなり始める。
橋だけではなく空すらも揺れはじめ、パズルのピースのように一部が欠ける。
欠けた部分は黒く、さらに広がる。
「この空間が壊れ始めた。これなら」
ジブラリアは未だに仁王立ちのまま、呟く。
「どうした?」
「この空間が壊れてる今なら、使うことが出来なかった転移魔法が使えるのかも」
「マジで!?」
「本当!?」
ジブラリアからの朗報に、二人は思わず立ちがある。
「よし、それなら私が転移する。集まって」
二人は、アルフィーの周りに集まる。
「じゃあ、転移する。場所はアザカの首都、ということで」
「ちょっと待とうか」
アルフィーが転移しようとする直前で、止めた。
もしこのまま転移すれば、最悪な出来事が起きてしまうのだ。
「もしあの国に転移してみろ! ジブラリアを見れば魔物だと間違われて襲われる!」
「ならどうする? 早くしないと橋が崩れるぞ」
「そんなの決まってる。ジブラリアの名前を新しく決めって、そんな暇はない!」
名前を付けようとジブラリアの方を向いたが、誰もいない右側に右腕でツッコむ。
「何をしてる! 早く転移するぞ!」
「けど場所が!」
「人がいない辺境の土地ならいいんだろう? そこに跳ぶ」
「人がいない……うん、何をしても大丈夫そうだな、いこう!」
「僕、不吉な言葉が聞こえたような……」
武刀は即座にアルフィーの元に動いたが、ジブラリアだけは遠慮したそうな表情を浮かべている。
「早くして! 置いてくわよ!」
「そうだぞ! 早くしないと俺の欲ぼ……死んでしまうじゃないか」
「僕の未来、不安しかないよぅ。スピアの所にいたって、いい事ないしなあ……」
ジブラリアは涙目を浮かべ、ゆっくりとアルフィーの元に移動し、二人がアルフィーの肩を掴む。
「じゃ、行くよ! 転移」
アルフィーの足元に魔法陣が小さい魔法陣が現れ、それは次第に大きくなり、三人は消えた。
三人が消えたあと、すぐに橋は崩壊して底に落ちていく。
それは門番も同じで、身動き一つせず、落ちていった。
次は別サイドのお話になります




